カテゴリ:ちょっとショートストーリー
これまでのあらすじ・・・
社会人一年目の美咲は、彼と別れた次の日の月曜日に、オフィスのそばのcafeで偶然、昇という高校生に会う。突然会ったくせに「あなたのような困った人を助ける・・」そして「おばさん」呼ばわりの昇に怒り心頭の美咲は、同僚の真紀と仕事帰りにラーメン屋に。そこで別れた彼からのメールに、また怒りを吹き返した美咲だったが、帰りの地下鉄では、疲れてうつらうつらしていた。ふと目を開けると昼間出会った昇が。。 「雨の中の光(第4話)」 ふっと目が覚めて、見上げると、なんとそこに昼間の昇が立っていた。ん?悪夢か?と思ったが、どう考えても違う。それに昇は美咲の方を少し悲しい目で見つめながら、こう言った。「おばさん、あそこのおばあちゃんが辛そうだから席譲ってあげて。」 何を~!美咲はまたしてもおばさんと言われたことに腹が立ったが、そう言われたからには、譲らざるを得ない。しぶしぶ立ち上がって、「どうぞ。」と冷たくおばあちゃんに声をかけた。おばあちゃんは「あぁ、ありがとうねぇ。」と目を細めて顔をしわくちゃにしながら美咲の譲った席に座った。 「良かったね。」と言う昇を睨み付けながら、美咲は昇の言葉を無視した。「あーぁ、またそんなに怒って。そんなに怒ると早く老けちゃうよ。」おかまいなしの昇の言葉にまたしても堪忍袋の尾が切れた美咲は、「どうしてあんたは、人の気に触ることばっかり言うの!人の気持ち考えなさいよ!」とどなった。電車の中の人が一斉にこっちを向いたが、もう今となってはどうしようもない。 頭にきた美咲はすぐ次の駅で降りた。「ちょっと待ってよ。ごめんなさいって。」そう言いながら後から昇が追いかけてきた。「なんなのよ。あんたは!」すごいけんまくの美咲に昇は、少し首を傾けて言った。「でも、よかったじゃない、おばあちゃんが座れたから。」美咲はそうかも、と思ったが、なんとなく引けなくなって答えた。「良くない。私は電車の中で寝てるときが一番幸せなの!」なんだかよくわからない理屈に、昇はちょっと困った顔をしたが、ふーとため息をついて、「やっぱ少し悲しい人だ。」そう言った。 「うるさい!」美咲はもう我慢ならない。と思って、すたすたと歩き、ホームの端のベンチに座った。「そんなに怒らないでよ」昇は性懲りもなくついてきたが、美咲はずっと反対方向を向いたままだった。「ねぇ・・」と言って、ベンチに座りかけた昇がベンチをかすめて突然倒れた。「ふん!」なんの芝居よ!と思って反対を向いていた美咲だが、昇は動く様子がない。少し心配に思って、「ちょっと。」と体を揺すったが、ぴくりともしない。 心配になった美咲はかがみこんで起こそうと首に手をやると、その首が異様に熱い。よく見ると、顔は真っ青で、額に触れるとすごい熱だ。とても動けそうにない。美咲は慌てて、ホームを見渡したが、ちょうど電車が行ったばかりで誰もいない。 美咲は恥ずかしさも忘れて、ホームから改札まで走って行った。「大変なんです!トモダチが。。トモダチが倒れてて!」。。。 (明日へつづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Oct 18, 2006 11:44:08 PM
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