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会社の帰り道、ちょうど昇りかけた月に出会った。
少しずつ欠けていく月。 帰る道すがら月を見つめていた。 月を見つめていると、それは光というよりも光の粉に思えてくる。 それはまるで金色の蝶が夜の闇に放った鱗粉(りんぷん)のよう。 その粉は小さな粒の光となって身体の上に知らない間に降り注ぐ。 そして、僕の心の奥に潜んでいる”魂”に独特の誘惑の香りで誘いをかける。 さあ夜空に飛び出そう。あなたには金色に輝く翼がついている。 あなたを今この場所にくくりつけるものは何もない。何も。。 その甘美な香りに誘われて、おそるおそる、僕の魂はベランダから足を踏み出す。 自由に空を飛ぶというよりは、一歩ずつ空中を歩いていくように、 少しの緊張感と、得体の知れない安心感をつれて、僕は夜空を歩き出す。 はるか下に広がる町を見つめ、たくさんの人が空の上では微笑みかける。 こんばんは素敵な夜ですね。 こんばんはお元気ですか? こんばんは。素敵な笑顔ですね。 こんばんは。。。 本当によくある些細な挨拶なのに、自分の心がそれに飢えていたことに気づく。 それはまるで、暑さに吹き出す汗をハンカチを抑えながら、ふと太陽を見上げた時に、 湧き起こった、ほんのわずかな風のような挨拶。周囲の木々を揺らしながら 心の中にまで涼しい風を吹き込んでくれる。 ちょっとした天気の話や、ファッションの話。 僕らはいつも優しさを求めている。そのやさしさとは、決して特別なものではなくて 心の周りにびっしり張り巡らされた壁の間から差し込む光のようなものかもしれない。 誰かが僕に微笑んでくれる。。 誰かの微笑みを僕が作り出すことができる。。 そう感じるだけで幸せになれる。 月の鱗粉は、僕のそんな”魂”にどんどん降り積もり、そっと、やさしく包んでいく。 そして僕の魂は歩き始める。 歩きだした僕の魂の周りを、まるで蝶がひらひらと舞いながら道案内をしてくれるように、 その燐分は、僕を光へと導く。 まるで一本の道を歩く修道士のような敬虔さで、月の光を身体に浴びて、 僕はやがて蝶になる。いつしか自らの羽から鱗粉を振りまいて、 夜空からの光を舞い散らす。。 この夜空を見上げる誰かのために。。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 29, 2010 11:10:51 PM
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