『アイデン&ティティ』 キラキラとした理想の生きかたとは?
先週の土曜日。オールナイトで観てきました。どうも今年は邦画の当たり年のようだ。「僕が住んでいる四畳半のアパートには、鍵がない。ずっと前に壊れて、そのままになっている」この映画はロックバンドをやりながら、自らのアイデンティティを探し求めるひとりの若者の物語である。なんて書くとなんだか青春臭い映画だと思うでしょう。そうではないんです。そんな生ぬるい青さではなく「青いほどに青く、苦くせつなくも勇気が出る映画」なんです。「青春だ!」なんて言う森田健作(古すぎるたとえ)の言葉でさえも許してしまうほどの、スバラシキ青なのだ!みうらじゅん原作のコミックを「プロジェクトX」のナレーションでお馴染みの田口トモロヲが初監督。映画初出演の元「GOING STEADY」の峯田和伸。そして脚本はクドカンこと宮藤官九郎。なんなんだこいつらは!凄すぎる!スバラシすぎる!もうコラボレーションなんて言葉じゃ言い表せない、ガツッとしたがっぷり四つの集合体が、フワフワとしながら昇華してく・・・あーなんて言えばいいのだー!!主人公・中島を演じる峯田和伸を見て僕は思った。「似てる。Bに」Bとは僕の親友。2歳年上なのだが、お互いためぐちの間柄の飲み友達。彼は音楽に夢を見て東京に上京。CDデビュー、音楽ディレクターを経て、今熊本に住んでいるロックな奴。彼と飲むときはいつも熱い。とにかく熱い。そしてなにより不器用だ。峯田と似てるのは性格だけじゃなく、顔も似てるのだ。数年前の髪型もアフロだったし・・・。そんな僕の親友のことが、このスバラシキ映画により親しみという感情を生んだみたいだ。アイデンティティって何だ?その言葉の意味を求めているわけではなく、ロックを求めることで自己存在を確かなものにしたいと悩み、のたうちまわる主人公・中島。ロックとは何だ?自分の心に背くことなく、「大人」になることなく、やりたいことをやって、やりたくないことをやらない信念。「やらなきゃならないことをやるだけさ。だからうまくいくんだよ」たったひとりしか居ない世界にはアイデンティティは存在しない。不要である。人と人が共通の世界に住む「ここ」にはアイデンティティが必要となる。「愛しかない。それが世界を動かしている。それなしでは何も出来ない」アイデンにはティティが必要なのだ。そう、男には女が必要なのだ。この映画はアイデンとティティの恋物語でもある。ティティである彼女・麻生久美子。映画界に不可欠な存在である彼女。『二十歳の微熱』以来、僕の理想のお姉さんになった片岡礼子の香りが僕の鼻腔をよぎった。どうやら麻生久美子にも同じ香りがする。(2人とも年下なんだけどね)どうやら彼女は、僕にとっても不可欠な存在になってしまったようだ。エンディングに流れるボブ・ディランの「like a rolling stone」。僕らの世代にはオールディーズ・ナンバー。しかし、ロックの神様とやらはどうやら存在していたらしい。聞いてみようっと。キラキラと光っている理想の生きかた。それを簡単に手に入れてしまった奴は、この映画の良さはわからないだろう。「君の立場に立てば、君が正しい。僕の立場に立てば僕が正しい」(ueさんにすでに突っ込まれてますが)この映画は、今年の邦画ナンバーワンだ!