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北 の 狼

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May 25, 2005
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ムルデカ



2001年、日本、藤由紀夫監督。


“アジア、すでに敵に向かい、蜂起せり 己を捨てて全力を尽くす
連合国を粉砕せんと 玉散ることもいとわず
進め 進め 義勇軍 アジアとインドネシアの英雄 清き東洋に幸あれ
古きアジア 不幸に苦しむ 烈しき圧制に 幾世紀も忍ぶ
大日本 雄々しく立てり アジアを救い 我らを守る
進め 進め 義勇軍 アジアとインドネシアの英雄 清き東洋に幸あれ…”

上は、インドネシアで50年間歌い継がれてきた「祖国防衛義勇軍(PETA)マーチ」です。「大日本」という言葉がありますね。


”日本の占領は、後に大きな影響を及ぼすような利点を残した。第一に、オランダ語と英語が禁止されたので、インドネシア語が成長し、使用が広まった。日本軍政の3年半に培われたインドネシア語は驚異的発展をとげた。第二に、日本は青年達に軍事教練を課して、竹槍、木銃によるものだったとはいえ、きびしい規律を教え込み、勇敢に戦うことや耐え忍ぶことを訓練した。第三に、職場からオランダ人がすべていなくなり、日本はインドネシア人に高い地位を与えて、われわれに高い能力や大きい責任を要求する、重要な仕事をまかせた。…”

上は、インドネシアの中学校の歴史教科書からの抜粋です。


   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


インドネシアは、大東亜戦争で日本軍が侵攻し解放するまでの約350年間オランダの植民地だったのですが、大東亜戦争終了後、日本の敗北を受けてオランダ軍とイギリス軍が再び攻め込んできました。この時、約1000人の旧日本軍将兵がインドネシア独立軍に身を投じて戦いました。戦いは4年4カ月続き、1949年12月、オランダはついにインドネシアの独立を認めました。その間、半数の日本兵が戦いで命を落としています。


さて、映画『ムルデカ 17805』ですが、「ムルデカ」はインドネシア語で独立を意味します。
「17805」とは、皇紀2605年(西暦1945年)8月17日という意味です。皇紀元年とは、神武天皇が即位した年のことです。日本軍が降伏した1945年8月15日の2日後に、後に初代正副大統領となる独立運動指導者のスカルノとハッタが、この日付(皇紀)を書き込み独立宣言文を発したのでした。


*****************

1942年、第二次世界大戦時下のオランダ領ジャワ島。
軍司令部に単身で乗り込み、見事オランダ軍を降伏させた南方戦線実行部隊の島崎中尉は、その後、インドネシアの自治独立を目指し、現地の青年たちを軍事教練する機関「青年道場」を開設した。オランダに政治犯として捕えられていたスカルノ、ハッタ、シャフリル等の民族主義者も釈放された。
“サンパイマティ"(死ぬまでやれ!)の精神の下、集まった理想高き志の青年・ヌルハディ、アセップ、パルトらに厳しい指導をする島崎。初めは対立することもあったが、身をもって行動する島崎の態度に、やがてヌルハディらの心の中にも自分たちの手で独立を勝ち取るという気持ちが芽生えていく。

ところが、日本の敗戦により状況は一変。オランダとイギリスの連合軍が再びこの国を統治下に置くべく進行を始める。そんな中、インドネシアにムルデカの気運が高まるも、島崎は敗戦処理を担当する将校として手出しの出来ない立場に追い込まれていた。戦友の宮田中尉と共にオランダ軍に身柄を拘束されてしまった島崎は、日々続く拷問を受ける。そして、戦争犯罪に問われ、宮田が処刑された。
一方、ヌルハディらの手で奇跡的に救出された島崎は、彼らが率いる独立軍(祖国防衛義勇軍 PETA)に参加することを決意し、いつ終わるとも知れぬ戦闘に身を投じていくのだった。
インドネシアの運命を決する最後の戦いに勝った夜、島崎は敵の銃弾に倒れてしまう。

そして現代、今や平和な独立国となったインドネシアの英雄墓地に眠る島崎と宮田の墓に、宮田の忘れ形見である娘・文子が詣でる姿があった。

*****************


映画に登場する島崎中尉は架空の人物ですが、柳川宋成中尉がモデルとなっています。1942年西部ジャワに敵前上陸し、オランダ軍総司令部に単身で日本刀を持って乗り込み、司令官に降伏させたことは、柳川中尉の実話に基づいたものです。柳川中尉は青年道場と郷土防衛義勇軍(ペタ)の創設者でもありました。


インドネシアには、12世紀から伝わる「ジョヨボヨ王の予言」というものがあったそうです。

”わが王国はどこからか現れる「白い水牛」の人に乗っ取られるであろう、彼らは魔法の杖を持ち、離れた距離から人を殺すことができる。
白い人の支配は長く続くが、やがて北からの「黄色の猿」の人が白い人を追い出し、とうもろこしの寿命の間、この地を支配した後に「ラトゥ・アディル=正義の神」の支配する祝福される治世がくる。”

日本軍が侵攻した時、インドネシアの各地で紅白旗(インドネシア国旗)と国歌「インドネシア・ラヤ」の大合唱で迎えられた、というのは有名な話です。そして、これまた予言どおり、日本の軍政支配は「トウモロコシの寿命の間」の3年半で終わり、インドネシアは独立したのでした。
予言には「天から白い布をまとって降りてくる」という落下傘部隊を示唆するものもあったらしく、日本兵は「空の神兵」とも称されました。


   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


独立軍の呼びかけにこたえて、戦闘に参加するために日本軍を離隊した宮山滋夫氏の置手紙には、以下のようにあります。

  敢えて大命に抗して独自の行動にい出んとす
  言うなかれ敗戦の弱卒天下に用なしと
  生を期して米英の走狗たらんよりは
  微哀に殉じて火による虫とならん
  天道は正義にあり 歴史の赴くところ正義にあらずして何ぞ
  敢えて不遜の行動に出ずるゆえん 
  乞うご容赦あらん事を 戦友諸君



カリバタ




ジャカルタの「カリバタ英雄墓地」は、独立戦争に命をささげた将兵ら数千柱が眠るインドネシアの「聖地」です。戦闘を生き延びた元兵士たちは、死後はここに「英雄」として埋葬される権利を保持していることを最高の栄誉とし誇りにしています。
根元に銀色の鉄かぶとが据えられた灰色の墓石の25柱に、日本人名がローマ字で刻み込まれています。現在もインドネシアで存命が確認されている11人の元日本軍人たちも、ここに埋葬されることになるのでしょう。

毎年、インドネシヤの独立記念日では、インドネシアの服装の男女2名に加え日本兵の服装をした者と3名で国旗を掲揚します。もちろん、独立を支援した日本軍に敬意と感謝の念を表しているわけです。

終戦後、戦後賠償の問題でも、交渉に当たった国会議長のアルジ=カルタウイナタ氏は、岸信介首相に対して「独立のお祝いというつもりで賠償金をください。日本が悪いことをしたから賠償をしろというのでありません」といっていますし、当時のインドネシアでは「むしろ日本に感謝使節団を送るべきだ」という声もあがっていたそうです。


   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


このように、日本人として誇りにすべき歴史を有するインドネシアですが、映画『ムルデカ』は、残念ながら、その誇りを十分に受け止め継承する出来映えの作品とはいえません(同様のことは、映画『プライド』にも言えますね)。
ストーリー展開、セリフの深み、演技、映像、音楽、どれをとってもお世辞にも一流とはいえません。
インドネシア人の神経を逆撫でするような場面もあります。例えば、インドネシアの老婆が進駐してきた日本兵にひざまずいて、ブーツに接吻する場面や、島崎中尉がオランダ軍の狙撃で戦死した場面で、インドネシア人女性が国歌「インドネシア・ラヤ」を歌う場面がそうです。

試写を鑑賞したインドネシア大使館側は、「インドネシア人の習慣や実態にそぐわない部分がある」として異例の削除や修正を求めています。同大使館のシャハリ・サキディン参事官は「ジャワ人には、どんなことがあっても他人の足の甲に口づけする習慣はなく、インドネシア人の威信を落とし、心を傷つける場面だ。また国歌が歌われるのは公の行事や儀式などの厳かな場合であり、鎮魂や闘争の歌ではなく、インドネシア人には非常に奇異に感じる。このままインドネシアで公開したら、観客がこの場面で全員起立してしまうかもしれない」と指摘しました。
対して、東京映像制作の代表取締役社長・浅野勝昭氏は「申し入れを検討した結果、日本、インドネシアの友好関係を維持するためにも足の甲への口づけのシーン二~三秒間を公開時にはカットすることにした」とし(私が観たDVDには、このシーンはありました)、インドネシアでの公開に際しては、「インドネシア側の意見をよく聞いて、編集を変えるなど柔軟に対応したい」と述べています。
実はこの年、インドネシアでは、イスラム教徒が忌避する豚の成分を使用したとして、「味の素」製品が回収される事態が起きていました。

インドネシアでの『ムルデカ』の評判は芳しくなかったようで、インドネシアでは対抗上『CA BAU KAN』という反日B級映画が製作されてもいます。『ムルデカ』への出演を後悔したとされる女優ローラ・アマリアが、意趣返しのような見事な演技を見せているとのことです。
『CA BAU KAN』とは福建語で「妓館」で、「慰安婦」「ロームシャ」が登場し、日本人を獣に、華人・オランダ人を美化しています。つまり、この映画は中国系インドネシア人による(『ムルデカ』への)対抗的プロパガンダ映画ですね(日本未公開)。


   ◇     ◇     ◇     ◇     ◇


日本は戦争で敗れはしましたが、精神的・文化的に破れたわけでは決してない。
インドネシアで独立のために戦った日本人たちの行為は、そのことをこそ思い起こさせ、日本人が日本人であることの自信や誇りを自覚させてくれるものです。そうであるが故に、『ムルデカ』のような映画には、文字通り”完璧”を求めたいものです。







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Last updated  May 26, 2005 12:20:56 AM
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