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カテゴリ:外交
ポリティカル・コレクトネスという言葉がある。「女性や民族、障害者などについて、差別・偏見を取り除くために政治的 (political) に見て正しい (correct) 用語を使う」という意味で使われるが、政治家は特に用語の使い方を注意しなければならない、という文脈でも用いられる。多くの政治家に見られるように、不用意な発言で、政治生命を絶たれることもあるからだ。
東京都の猪瀬直樹知事は、この穴に落ち込んだと言える。 2020年夏のオリンピック招致に関する米ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで東京都のライバルであるイスタンブール(トルコ)について、「イスラム教国が共有するのはアラー(神)だけで、互いにけんかしており、階級がある」と発言してしまった。 日本社会の高齢化に関連して「トルコの人々も長生きしたいなら、日本で我々が持つような文化をつくるべきだ。若者が多くても、若いうちに死んだらあまり意味がない」とまで言っている。 猪瀬知事はその後、「不適切な発言があり、おわびしないといけない。訂正したい」と謝罪したが、招致活動で他都市を批判してはいけないというのは基本ルール。招致競争が正念場を迎える中で、招致にマイナスになることは必至だ。 知事は「インタビューの98%は東京のアピールに充てたが、最後の雑談がクローズアップされたのが残念だった」と釈明しているが、新聞は緊張が途切れ、気を抜いた時間帯に発するホンネトークを好んで取り上げる。それが物議をかもしそな面白いネタだからだ。 トルコは親日国だから、なおまずい。 歴史的にロシアの圧迫下にあったトルコは日露戦争でロシアを破った日本に親近感を抱いており、明治時代以来、数少ない親日国として日本に協力的だ。 イラン・イラク戦争のおり、危険もかえりみずに二機の航空機を派遣し、テヘランに在留していた邦人215名を救出してくれた。なぜ、そこまでやってくれたのか。当時の駐日トルコ大使は次のように述べた。 「エルトゥールル号の借りを返しただけです」 明治23年(1890年)9月、トルコの軍艦エルトゥールル号が和歌山県沖で台風のため座礁した際、日本は生存者を救出、治療、看護し、イスタンブールまで送り届けた。トルコでは教科書にも載っている有名な歴史的事件だ。 トルコのクルチ青年スポーツ相は28日、ツイッターで「(猪瀬都知事の発言は)不公平で悲しい。五輪精神にも反している。イスタンブールは他の立候補都市に否定的な発言をしたことはなかったし、今後もしない。我々は日本人を愛しているし、日本人の信条や文化を尊重する」と述べている。 国際外交での大事な友好国を、不快な思いにさせてはなるまい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2013.04.30 21:45:03
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