◆ あなたと相性のいい酒(日経ビジネスより引用)
野崎洋光が語るあなたと相性のいい酒酒をおいしく飲むための方程式がある。それはまず、カラダの血液の濃度に合わせて飲むこと…。目からウロコの、わかりやすい解説をしていただいたのは、和の名料理人である野崎洋光氏。とりわけ、酒が最近すすまないという方、体調や食事と相性ぴったりの飲み方を知りたい方に、必読のインタビューである。完壁な酒はありません一つ申し上げたいのは、完壁な酒はない、ということです。先日、最も気高くて最も高価なワインとされるロマネコンティを飲む機会がありました。知人は絶賛しました。なるほど、確かにおいしかったけれど、その千分の一の値段でいい日本酒が買えるじゃないかと、私はつい言いたくなりました。味覚や価値観は人それぞれですね。こうした個人の嗜好の違いだけではなく、その時の料理との相性によっても、酒のおいしさは変わります。飲んでいる間のカラダのコンディションの推移によっても、気分によっても変わるものです。どんなに探しでもお金をだしても、完壁な酒はないんです。完壁な酒などないんですから、身近にあるいい酒が、もっとおいしく愉しくなる方法を見つけませんか。いくつかヒントをお教えしましょう。血液に合わせて飲みましょうまず、カラダを知ることです。和食でもフレンチのコースでもそうですが、淡い味の料理から始まり、濃い味へと料理がだんだんに移っていきます。なぜでしょう。空腹時と満腹時では、血液の濃度が異なります。血液の濃度に比例させて味を強くした方が、おいしく感じられるんですね。おいしさの法則です。酒も同じです。食前酒であれば辛口の方が旨さを感じやすい。焼酎もあっさりした焼酎から、コクのある焼酎へと飲み進んでいく方が、カラダの摂理に合っています。濃厚な酒は、食後酒に回した方がおいしくいただけます。だから辛い酒、甘い酒、こってりした酒など、3種類くらいを家に用意しておくと、どんなシチュエージ≡ンにも対応できます。もちろん一つの酒で飲んでいく方法もあります。燗をして温度を変えたり、わさぴを加えたり、ワインを加えたり。シャルドネと日本酒を合わせてみましょうか…どうです、いけますよね。日本の酒の旨味と遊ぶ焼酎に梅干しを入れるのはポピュラーですが、つまみを口に入れたまま焼酎を含んでみてください。今までとは別の味わいになって、また焼酎がすすみます。いろいろ試して遊んでみましょう。日本酒ならご飯をパラパラと入れるだけでも、旨さは変化します。1日本酒には、でんぷん質に由来する旨味があります。その旨味が、料理や肴の旨味といい具合に出会うと、新しい旨さが生まれます。蒸留酒でも、日本の焼酎には昧がありますね。比べると、外国の蒸留酒はサラリとしすぎていて、アルコール分ばかりが際だつ印象で、極端な言い方をすれば、旨さを愉しむというより流し込む感じ。それはともかく、日本の酒は、遊び甲斐があると思います。銘柄選びや飲み方を人に委ねるのではなくて、ぜひ自分で選んで、自分から酒と遊んでみてください。おいしい酒の方程式カラダに酒を合わせる、酒と遊ぶ。そんな話をしました。でも、酒をおいしく飲むいちぱんの方程式は、いやな人と飲まないことです。飲むことは自分に付加価値を求めることです。怒りながら飲んでもソンします。飲むことがマイナスになる。一緒にいて喜べる人と飲めば、喜びが何倍にもなります。もう一つ。いいお店を探してみませんか。こんな風にして飲みたいと言えるお店を見つけましょう。旨いまずいは個人差だとちゃんと理解して、あなたの意向を聞いてくれる店に行くことです。今日は盃にしてくれ、おちょこにしてくれと気兼ねなく言えるような。自分のおちょこをお店に持ち込んだっていいじゃないですか。