悪夢の思い出「悪夢の思い出」私は、毎日のように夢を見ている。 30代くらいまでは、その夢を目が覚めても覚えていることが多かった。 いつの頃からか、目覚めても夢の内容を忘れるようになったのは、 年齢による記憶力低下のせいなのか、別の生理的変化なのか・・。 いずれにせよ、私はあまり楽しい夢を見ないほうなので、 忘れてしまってもちっとも淋しくはない。 さて、幼い頃、繰り返し見る悪夢が二つあった。 一つは、太くて長~い縄を背負って、暗闇の中を必死に歩いている夢。 肩に食い込むような縄の重さに耐えかねて、 それを投げ捨てようとしてもどうにもならない。 後ろを振り返ると、長い縄の先は暗闇の中に続いている。 私は仕方なく、またそれを背負って必死に一歩一歩歩こうとしているのだ。 この夢は、かなり幼い頃から小学生くらいまでの間、よく見ていたように思う。 目覚めた時は、「あー、疲れた!」という感じだったように思う。 しかし、あまりにも昔のことなので、正確ではないかもしれない。 それでも、夢の光景だけは、今でも思い出せる。 年齢を重ねるうちに次第に見なくなったのだが、 大人になっても忘れた頃に時々見て、 夢の中で「あ、これはあの夢だ」と思いながらも、 やっぱり縄を下ろすことはできなかった。 もう一つは、「焼け跡をさまよい死体処理をする夢」である。 こんな夢を、小学生の頃から20代までしょっちゅう見ていた。 いつも同じ夢であり、さらにとてもイヤな夢なので、 これもはっきりと覚えている。 「輪廻転生」という言葉を知ってから、 私の前世は戦争で死んだに違いないと思ったりもした。 この夢の内容は、 最初は、(多分戦争による)焼け跡の、 まだ煙がくすぶる中を歩いている光景から始まる。 時々、道端に転がっている死体を踏んでしまって、 その「グニャッ」とした感触に、 「腐ったトマトを踏んだ感じだな」と思う。 (我家は農家だったので、病気などで腐って落ちたトマトが捨てられていて、 それを踏み潰す感触と似ていたのだ) 焼け跡特有なのか、あるいは亡くなった人の腐臭なのか、 嫌な臭いまでも感じていた。 やがて私は、他の人たちと力をあわせて、死体を始末する作業をしていた。 しかし、「気持ち悪い」などとは全く感じず、 早くしないと死体がどんどん腐っていくと、とても焦っているのだ。 この日記ではちょっと書けないようなこともしたりする。 断っておくが、あくまでも「しなくてはならない」という思いでの行為なのだ。 気持ち悪いとは思ってはいないが、夢の中の気分は最悪である。 そんな気分の時に、夕焼けを見るのだ。 それは本当に美しい夕焼けで、 「こんな時にも、夕焼けがこんなに美しいなんて・・」と思っている。 たいてい、そのあたりで目が覚める。 この夢を見たときの目覚めは、いつも最悪であった。 寝汗をかき、寝起きとは思えない疲れにグッタリしているのが常だった。 体調が悪いから悪夢をみるという感じではなく、 悪夢をみるから体調も悪くなるという感じだった。 子どもの私が、なぜあんな夢をみていたのか、今でも不思議だ。 しかし、この夢も30代くらいまでに見なくなったような気がする。 先日の「東京大空襲」の日、テレビの映像を見ていて、この夢を思い出した。 しかし私の夢には、爆撃に逃げ回っているような夢はない。 そんな夢なら、もっともっと怖かっただろう。 ましてや、夢ではなくて現実にその体験をした人たちの思いは いかばかりであったか。 悪夢のような現実を生きている人達が、世界にはたくさんいる。 戦争体験者がいなくなってしまった日本の未来が、とても心配である。 (2005年03月12日) ジャンル別一覧
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