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カテゴリ:東京堂モデルカンパニー
今回は,1990年代後半から2000年代にかけて,わが国のNゲージ界に特異な足跡を残した,東京堂モデルカンパニーについて簡単に振り返ってみたいと思います。 東京堂モデルカンパニーは,1995年に創業。当初は,中古鉄道模型の販売店でしたが,他社製品の塗り替えや他社キットを組み立てた特製品を販売するようになり,また,オリジナルキットも手掛けるようになります。 (RM MODELS 1998年2月号より。後年の広告に比べるとずいぶん地味な印象を受ける) まずは東急沿線という立地もあってか,当時完成品のなかった東急1000系を1998年にエッチングキットで発売。東急以外にも,旧性能荷物電車やキハ10系,モハ90形,小田急1800形などがエッチングキットで発売されました。 (RM MODELS 1999年2月号より。オリジナル製品として東急1000系のエッチングキットが発売された) 転機となったのは,2000年に発売されたEF61形電気機関車キットです。それまでのエッチングキットと異なり,当時,一世を風靡したレジンが素材に選ばれ,「東京堂プラス」シリーズと銘打たれました。EF61に続いて,591系振子試験電車がやはりレジンキットで発売され,車種の面白さもあって,非常に話題となり,「2001年版東京堂モデルカンパニー製品カタログ」の表紙を飾ることになります。 また「東京堂プラス」では,レジン製のNスケールバスも展開されました。バスコレ全盛の今日では考えられないことですが,当時,Nゲージ用のバスはまだまだ種類が限られており,東京堂製品にはインパクトがありました。 (RM MODELS 2000年3月号より。オリジナル製品も次第に種類が増えてきた) (RM MODELS 2000年7月号より。「東京堂プラス」ブランドでレジン製品の発売が開始された) (RM MODELS 2000年8月号より。創業5周年を迎えたこの頃から,斜めに文字を配置した独特の広告が始まる) レジンを手掛けるようになってからの東京堂製品は,ますます多品種化が進み,営団地下鉄の車両や大阪市営地下鉄の旧型車,名鉄など私鉄車両,北越急行HK100,クモハ485-0やクモハ481-200といった少数派形式,旧型国電,キハ35,国鉄レールバスをはじめ,様々な車両がレジンキットや完成品として発売されました。 特に,鉄道コレクションやマイクロエースの多品種化が進んだ今日でも競合製品がないのが,2008年に発売された常磐線用の2階建て試作車クハ415-1901のキットで,中古市場ではかなりの値段がついているようです。 変わったところでは,HOゲージでカトー製キハ82と切り継ぐことを前提とした「キハ81 先頭部ユニットパーツ」もありました。カトーからキハ81の発売が発表された今となっては,探し求める方はほとんどおられないでしょう。 レジンと並行してエッチングの新製品も引き続き発売され,201系900番台,203系,205系量産先行車,207系900番台(前面パーツのみ)といった当時完成品のない少数派国電や,都営5200形,名古屋市営地下鉄東山線の旧型車(黄電)などがありました。 (2001年版東京堂モデルカンパニー製品カタログより抜粋) そして,2001年に鳴り物入りで予告されたのが,TEXTでした。エッチングやレジンに加え,遂にプラ完成品を発売,しかも動力も自主開発ということで,話題を呼びます。第1弾の419・715系のほか,小田急EXE,119系,国電70系などが予告されました。 しかし,419系の発売は2004年末まで遅れ,マイクロエースと競合することとなり,肝心の製品の出来も,マイクロエースにかなり水をあけられてしまいました。 (RM MODELS 2001年12月号より。TEXTブランドで製品化されたのは,結局419・715系のみとなった) (RM MODELS 2002年1月号より。レジン製のキハ01,03レールバス。この製品のために下回りをもぎとられた限定復刻版キハ02が荏原中延の店舗に並んだ) (Nゲージモデル・アーカイブスより。キハ54のキット。レジン製の構体にエッチング製の外板を貼り付けるという独特の構造) (RM MODELS 2007年3月号より。TEXTブランドの419・715系や,HOゲージの「キハ81 先頭部ユニットパーツ」などがみえる) TEXTの遅延以外にも,様々な問題が露呈していきます。そもそも,レジン製品は,メーカーや個体による差があるとはいえ,変形がつきものです。しかも,東京堂モデルカンパニーの場合は,製品のみならず,メーカーの姿勢そのものにも疑問を抱かせる出来事が少なくありませんでした。一例を挙げれば,レジン製の国鉄キハ01,03レールバスをめぐる問題があります。同時期にトミックス25周年記念として発売されたキハ02復刻版と合わせ国鉄レールバス3形式が揃うというコンセプトは悪くありませんでした。しかし,問題は下回りです。何と,東京堂モデルカンパニーでは限定品のキハ02を買い占め,その下回りを自社のキハ01,03に取り付けて販売していたのです。哀れにも下回りを外された大量のキハ02車体が荏原中延の本店で売られていたのは忘れられない光景です。 結局,2009年に東京堂モデルカンパニーは廃業しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.12.06 00:28:36
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