一九四五年四月二十四日、火曜日、昼下がり
(ベルリン終戦日記/ある女性の記録:山本浩司(訳):白水社:p50)より引用『ヘフター精肉店のまえに並ぶ行列に直撃弾が落ちた。死者三名、怪我人十名…それでも行列はもう持ち直している。周りに立っている人々が肉の配給券から血しぶきを袖で拭き取っている様子を未亡人は実演してみせる。それからこう言うのだ。「ええまあ、三人だけですからね。空襲を考えれば、こんなものが何だというのでしょう。」確かに私たちは贅沢にならされ、これくらいの死者には驚かなくなっている。 それでも私は驚かずにはいられない。仔牛四分の一頭と豚の頬肉がわずかばかりあるのを目にして、どんなによぼよぼのおばあさんも断固として頑張っている。彼女たちは壁のように立っている。以前には中部ドイツ上空を三機の戦闘機が飛んできたというだけで地下壕へ一目散に逃げ出していたというのに、その同じ女たちが今ではせいぜいバケツか鉄兜を頭にかぶるだけですませている。』