ちくま文庫「ひょっこりひょうたん島」全13巻、読んだ!
昨秋、岩手県大槌町の「ひょうたん島」を調べて以来、「ひょっこりひょうたん島」の記憶が鮮明に蘇ってきた。凝り性の私としては徹底的にやらねば気が済まず、ちくま文庫の13巻※1を何とか入手し年末から読み耽った。1991年発売当時に購入していた1,2巻(ライオン王国の巻)、6,7巻(海賊キッドの宝の巻)を読んでしまうと、どうしても他の話が気になってしまう。ところが絶版で入手困難。特に12巻が入手難で古書に6万円なんて文豪の初版本みたいなべらぼうな価格が付いている。ヤフオクで5冊セット(12巻含)価格6,000円を見つけ、さっそく落した。残り5冊は重複してしまったが、6万円の古書を買うよりもずっと良い。全部読んだ。12月、1月、ステイホームの多くの時間を楽しく潰すことができた。オリジナルの放送は1964年で56年前。リメイクは1991年、それからでさえ29年経っている。リメイク版が放送された「海賊の巻」と「マジョリタンの巻」はビデオで何回か見ているのでほぼ思い出せる。リメイクされず56年前の記憶しかない「ライオン王国の巻」、「ブルドキアの巻」、「魔女リカの巻」は朧気ではあるが何となく覚えている程度。特に「ライオン王国の巻」は始まった当初から強烈な印象があり、他の話より覚えている。「ブルドキアの巻」は夏の放送だったから、元気な良い子が午後5時45分にテレビの前に座っているわけがない。その上、今読んでも風刺が効き過ぎている。60年代はノラ犬も結構闊歩しており、今ほどペットとして可愛がられていたわけでもないが、「犬コロ」と言う言い方には抵抗があったはずだ。悪人でもどこか間抜けで憎めない数多の登場人物たちの中で、犬の国のピッツ長官だけは冷徹だった。ダンディと壮絶な銃撃戦の末に射殺されると言う結末も、ちょっと刺激的過ぎた。やはり季節性があり夏場の夕刻はTVから遠ざかり、1965年に放送された「マジョリタン」の後半と、その次の「南ドコニカ」はあまり記憶にない。1966年は中3の年で翌年には高校入試がある。この頃、あろうことか「ひょうたん島」の視聴を親から禁止された。この理不尽極まりない子育てを私は未だに恨んでいる。親を含めた権力者に、この番組は目障りだったのだろう。この話はいずれまた。挿入歌がミュージカルのようだと前にも書いたが、「ブルドキア」で飛行機が爆撃する場面の歌詞を読んでいるうち、突然その歌を思い出してしまった。56年間、脳裏の奥底に仕舞われ、思い出すことも無かった歌を!放送では気にも留めなかったことだが、台本をじっくり読むと辻褄が合わない場面転換や途中で忘れられた事象※4が非常に多い事に気付く。ベージを飛ばして読んだのかと、何度かページをめくり直してみたほど。二人の作者の共同作業だったこととに起因すると思いきや、番組の時間に収まらず、ディレクターが切った部分もかなりあったらしい※3。とにかく子供の冒険活劇、ファンタジーではない。初老になっても十分面白い。勢いあまって二つの参考文献※2※3も読んだ。こちらも十分興味深い。。。。。高瀬省三氏のカバー絵や挿絵も楽しい。挿絵を楽しみに読み進んだ文庫本も最近は珍しい※1. 井上ひさし、山元護久,「ひょっこりひょうたん島 1~13」,筑摩書房,1991※2. 伊藤悟,「ひょっこりひょうたん島 熱中ノート」,実業之日本社,1991※3. 武井博,「泣くのはいやだ、笑っちゃおう 「ひょうたん島」航海記」,アルテスパブリッシング,2015※4. 開始からしばらくレギュラーだった医者ムマモメムが、ある頃を境に突然消えてしまったという大ミステリーがあった。作者二人が、「ムマモメムはあまり面白くないから外そう」と思い立ち、その通り実行したらしい。