The Tao of Krishna

2006/02/13(月)00:53

ミッシェル クワンの決断

なんとなく異文化(9)

米国フィギュアスケート代表のミッシェル クワンが五輪出場を 辞退した。従来の右足の故障が悪化したためだという。 代わりに出場する選手はエミリー ヒューズ。 前回の五輪金メダリスト、サラ ヒューズの妹だ。 「なんという因縁だろう」とうなっているのは私だけだろうか。 3週間前の日記、“Battle of Giants”のExtra Commentで、 ミッシェル クワンとサラ ヒューズのことについて触れている。 4年前のソルトレイクシティでのオリンピック、フィギュア スケートで、誰も期待でしていなかった、サラ ヒューズが ノーミスの演技で、5度の世界選手権で優勝し、五輪でも優勝 することを期待されていたミッシェル クワンの目の前でいとも 簡単に金メダルをとり、アメリカ中が彼女の快挙を祝福していた中、 ミッシェルが悔し涙を流しながら、サラにお祝いのハグをしていた 姿に、胸が痛んだという話である。 ミッシェルが出場を辞退したという決断の背景には彼女の複雑な思 いがあると思う。 オリンピックに出るレベルに行き着くまでのきつい練習を経験して きた選手だったら、誰だって、オリンピックに出場したいと思うだ ろう。 ミッシェルが米国でのオリンピック代表選考会に参加せずに代表に 選ばれたことに対して、批判もされていた。 その代表選考に関しては、若い選手に機会を与えるため、 辞退するべきだとか、色々な意見もあるようだが、私個人の 意見は簡単である。 若かろうと、ベテランだろうと、五輪で最も力が発揮できる 可能性のある人間が選ばれれば良いと思う。 (それに、金メダルをとったサラ ヒューズは金メダルをとった後、さっさと引退している。彼女の例に関していえば、これでは若い選手に機会を与える意味はないのではないかと思う。) そして、選考会側が、たとえミッシェルが高いジャンプを跳べ なくとも、故障が回復しさえすれば、彼女の完成度、表現力は まだまだ世界で戦えるレベルと判断したのだろう。 ミッシェルも13歳で天才少女と呼ばれていた(当時は年齢による 五輪参加の制限はなかった)時代があった。リレハンメル五輪出場 選手の補欠として全くスケート靴を履く機会を得ずに帯同した 経験がある。 彼女の五輪2回の出場の経験で、その2回とも金メダルの有力候補 だったミッシェル。(残念ながら、どちらも、同じ米国代表の 若手に金メダルをさらわれた。) それでも、彼女が出場を断念するのは、ミッシェルにとって、 五輪は、ただ参加さえすれば良いのではない。 米国の代表として勝たなければならないというプレッシャー、 責任感、現実を直視する彼女の冷静な目が出場を辞退するという 決断に至ったのではないかと思う。 この期に及んで、出場を辞退を発表すれば、大騒ぎになることが 分かっていても、自分に勝つ力がないと判断したら、補欠のエミリ ー ヒューズが米国から駆けつけて準備ができる期間内に発表する べきだと考えたのだろう。 女子フィギュアスケートショートプログラムまで、一週間。 ミッシェルの体調が回復する可能性もあったかもしれないのに、 決断をしたのは、米国代表の責任感からで、最悪の状況を考えて のことだと私は思う。 これ以上、まわりを混乱させないよう、できるだけ早く選手村を 離れるつもりだといっていたミッシェル。 フィギュアスケートから離れた生活など、彼女にできるのだ ろうか? 最後まで、強い心で記者会見していたミッシェルの未来が明るいも のであることを祈っている。

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