プロフィール
たこ麗子
くびれと腹筋を寝たきり生活で手に入れた真実の記録。
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村社会。
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△月△日
リゾート地で休暇をとるつもりで訪れたのに、帰る目処が立たない。
村内ですれ違う住人は私を雑用係と思っているようで
「これを30分以内に届けろ」
「あれを渡して感想を聞いて来い」
とあれこれ要件を言いつけてくる。
映画“ドッグ・ウィル”のヒロインを思い出し、レイプを現実的に考える。
村内は携帯が通じない。郵便局から出せる手紙は村内に限られている。
家族に現状を知らせる方法は運に任せたボトルレターしかない。
タクシーの運転手はあれきり姿を見せない。
△月△日
役場で遠まわしに何度も草取りを要請されるので草取りをする。腰が痛い。
果物を取り付くしたので釣竿と網を買い、魚と虫を取る。
樹をゆすっていたら蜂の巣が落ちてきて蜂の大群に刺される。
村内に病院はないので治るまで待つしかない。
「樹なんてゆするからだ、自業自得だ」
「すごい顔」
「これに懲りたら二度としないことだ」
と住人から同情心のかけらもない説教をされる。
でも私は気がついた。樹にはしばしば金品が隠されているのだ。
やましいものを森に隠してる何者かの目を、住人は恐れている。
△月△日
休暇で村に行ったきり帰らない私を心配して夫が村に来て、捕まる。
夫には悪いがほっとした。
夫に事情を説明し、ローンの返済に協力してもらうことになった。
さっきまで夫は工務店店主のところでバイトをしており、まだ制服を着ている。
夫が村の掲示板に出した広告には「たぬきは ろうきいはん」と書いてあった。
店主たぬき氏は非識字らしく、気づいていない。
同居人との仲を想像して噂の種にしていた住人は今では同居人のことを
「あの居候」
と呼ぶようになった。
昨日まで私と夫婦同然に扱っていたのに。変わり身の早さに驚く。
三角関係がどうの、とほのめかされた。
△月△日
夫が村に出ている間、ベッドでうとうとしていたら同居人が起きた。
案の定、同居人は村人の仕打ちに耐え切れず、引きこもっていたようだ。
終わらないローンの返済、村の整備の責任を負わされること、噂話と雑用。
「ここで一生雑用に追われて生きるのか、と思ったら生きる気力がなくなった」
と窓のない屋根裏部屋でうつむいて話す。
私が家に案内されたときはゴキブリだらけだった。
郵便局に預けた金がいくらかあるそうで、明日久しぶりに村に出てみるとのこと。
スコップやパチンコといった便利な道具も持っており、貸してくれるとのこと。
夫が帰って部屋に入った瞬間、私も同居人も眠りに落ちた。
催眠術にかかったような異常な眠気だった。
何かある。たぬき氏が建てた家だ。
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