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クリクリマロン2168

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2011.05.11
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第六夜(小説)お金を拾って来る犬・200
――――――――――――――――――――――
動物病院まで歩いて行った。

下宿を出ると、いつもゴンタと散歩した道を歩いた。

ゴンタがよく糞をするなじみの雑草地を眺め、大きな

木の根っこに小便をした場所。どれも思い出の場所だった。

両親。兄弟、親戚、親しい人,お世話になった人、友人知人、

そして恋人が病院に入院となれば、心は悲しみの涙で詰まってしまう。

元気に回復を願っているが、もしも、悪化の恐れがあると耳にすれば

心は悲痛になる。

僕が医者ならと思う時がある。先輩や知人友人すら、良い医師を紹介

してもらいたい。と思うと,それに病気に効く薬は、くちコミでも買って

来て、患者に飲ませたい。

それが人間ではなくて動物でも同じことなのです。

昨日のゴンタの傷は肉を食いちぎられてしまったようで、多量の出血で

見るに耐えられなかった。獣医の処置で、幾分血は止まったが、

人間だったら死んでしまったかもしれない。

食パンをねずみに食いちぎられた姿だったのが眼から消えていない。

病院に着いたのが9時ジャストだった。診察時間は10時とのこと、

その間、控え室に展示してある動物の介護のこととか。食べ物の

扱い方が判りやすく壁に貼ってあった。

猫飯は一番犬にとって健康食ではないと書いてある。そういえば

ゴンタは殆ど猫飯だった。ご飯に味噌汁をかけ,その上に焼き魚

、それもニシンをのせての飯だった。

ああ、可哀想だったなと僕は思った。病院を退院したら、

ドックフ-ドの食生活に変えてゴンタに食べさせてあげよう。

10時の診察まで待合室でぼんやりしていると、つぎから次ぎと

動物の患者が飼い主に抱えられて入って来た。

猫を連れてきた婦人。小鳥の籠を持っては言って来た坊や。

僕と同じように足の長い洋犬を連れて来たお嬢さん。

雑多な動物の全てを動物医師が見るようだが、凄いと思った。

しばらくの間ゴンタのことを忘れていたが。なぜか

ゴンタは元気な姿で僕の前に現れると信じてしまった。

10時に一番で僕の名前を呼ばれたので、診察室に入った。

先生は元気な顔をして、

「やぁ、昨日は大変だったね」

と笑い顔で僕に言った。

「ところでゴンタは?」

「ああ、それだがね、ゴンタ君は、今朝の4時になくなりましたよ」

「亡くなったとは・・」

「死んだのです。どうします。遺体は。火葬にします?」

「ゴンタは何処にいるんですか?」

「火葬室の前に置いてありますが,もし遺体を引き取るのなら

今日中にお願いしますね。とかく一日以上そのままにしておくと

保険所がうるさいからです」

獣医とは、こんなに冷酷とはおもわなかった。動物は死んでしまえば

ペットでもなく、ただの生ものの肉塊に過ぎないのだ。

獣医に冷たく足げにされて診察室を出た。

看護士の案内で地下の火葬室に入った時、白いテ-ブルに数匹の動物

の遺体がおいてあった。火葬する動物と未処理の動物だった。

ゴンタは未処理のテ-ブルに寝そべっていた。体中包帯でつつまれていたが

顔だけは見えた。眼を開けている。とても死んでいる顔ではない。

今にも尻尾を振って飛びかかるみたいだった。口をあけ長い舌が垂れ下がっていた。

犬の舌って、こんなに長いとは想像つかなかった。

僕は泣かなかった。涙も出なかった。

「どうします?」

と看護士が言った。

「どうするって?」

「テイクアウトします?」

「なんです、テイクアウトって?」

「お持ち帰りです」

「可愛いゴンタの死体を牛丼屋みたいな扱いをしないでよ」

僕は勿論、ゴンタを連れて帰りたいが、それは不可能だった。

遺体を埋める場所もない。もし持って帰って、下宿の庭に埋めることは

出来ないことは判っていた。

「お願いします」

と看護士に言った。

「お持ち帰りですね?」

「いいえ、火葬してして下さい」

「判りました。手続きしましょう。待合室でお待ちください。

最初に診療費と死体焼却費を会計でお支払いなりましたら、

2時間ほどで終わります。よろしいですね」

看護士は念を押して出て行った。







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Last updated  2011.05.15 12:27:50



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