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カテゴリ:戦争
ボスニア・ヘルツェゴビナ、スロバキア、イタリア、イギリス、フランス、ベルギー 監督 ダニス・タノヴィッチ no man’s landとは、誰もいない土地、中間地帯のことです。戦場においては、最前線の陣地と陣地の間の一番危険な地帯のことです。ボスニア紛争のことを描いた反戦映画です。全編コメディタッチで描かれていきますが、せりふなどから、この内戦の状況がわかってきます。そして、ラストは……、こわいです。 霧の深い夜、10人ぐらいのボスニア兵が前線に向かっています。明るくなると、敵のセルビア人の陣地の目の前にいることに気付きますが、あっという間に銃撃を受け、ほとんどやられてしまいます。 その中の1人チキは、中間地帯にある無人の塹壕に落ち、命拾いします。塹壕の上をのぞくと、仲間のツェラが倒れているのが見えましたが、どうすることもできません。塹壕の中を見て回っていると、セルビア兵が2人偵察にやってきました。 チキはあわてて隠れて見ていました。セルビア兵は、ツェラの遺体を運んできて、味方が持ち上げると爆発するように、地雷を仕掛け、その上に置きました。 チキは飛び出し2人を攻撃します。1人は倒し、1人は負傷しました。チキは銃を構えたまま、地雷を解体するように命令します。しかし、地雷を仕掛けたのは倒れたベテラン兵の方で、生き残ったニノは新兵で、何もわかりません。 塹壕の上では銃撃戦が始まりました。物置に隠れながら二人は、言い合いをします。「そっちが戦争を始めたのだろう。」「いやそっちだろう。」「おれの村は焼き討ちされた。」「僕の村はどうだ。誰が村人を殺した。」その時銃を持っていたのはチキでした。ニノはしぶしぶ非を認めさせられます。 銃撃はやみました。その時、ツェラが目を覚まします。死んでいなかったのです。あわてて動かないように制したチキは、状況を説明し、介抱します。そのすきに、ニノは銃をとり、チキに聞きます。「どっちが戦争を仕掛けた。」チキは、しぶしぶ答えます。「俺たちだ。」 ツェラの提案で、チキとニノは、丸腰で塹壕の上にあがり、白旗を振ります。それを見た両陣営は、国連軍へ連絡します。仲裁をするために国連防護軍が駐留しているのです。ただし、武力行使も危険地帯の立ち入りも禁止されています。連絡を受けたマルシャン軍曹は2人の部下を連れ装甲車で様子を見に行きます。 国連防護軍本部のソフト大佐は報告を聞き、めんどうな状況なので、かかわりたくないようです。現場に到着し状況を理解したマルシャン軍曹ですが、帰還命令が届き、すぐに、戻ってしまいます。 戻る途中で、TVクルーに出会います、無線を傍受していて、状況を理解しています。マルシャン軍曹はTVを利用することを思いつきます。 結局、マルシャン軍曹は、地雷処理班と、TVクルーを現場に呼ぶことに成功しますが……。 ネタばれしてしまうとこれから見たい方に悪いので、このくらいにしておきましょう。 チキが彼女の話をすると、ニノの知り合いでした。このとき、打ち解けるかと思われた2人ですが、やっぱりいがみ合ってしまいます。この戦争は、ユーゴスラビアから、ボスニア・ヘルツェゴビナが独立する際に、反対したセルビア人を無視して独立宣言をし、そのセルビア人をユーゴ政府が援助し、といった複雑な状況で始まった内戦です。元は同じ国であった人たちが戦っていて、このときは泥沼化していたのでしょう。チキとニノはただの一兵士ですが、両陣営の状況の縮図になっています。 そして、国連軍とメディアの立場も微妙です。人道支援という言葉を口実に、傍観者に徹したいソフト大佐は、この後現場にやってきますが、ミニスカートの美人秘書を連れています。最前線に一番近いところに駐留していたマルシャン軍曹たちは、現地の言葉がわからないフランス人です。TVのリポーターはチキとニノにインタヴューを試みますが、邪険にされてしまいます。プロデューサーは状況を理解してないのか、ツェラにインタヴューしろと命令します。 このように、いろいろと皮肉がたっぷりで、苦笑いさせられる作品ですが、ラストは恐ろしく、考えさせられます。 リポーターと話している中で、マルシャン軍曹は、オフレコでこう言います。「殺りくに直面したら、傍観も加勢と同じだ。」登場人物のほとんどが、何かしらおかしい中、このマルシャン軍曹だけが、まともで、心の底から彼らを助けたいと思っているようです。 アカデミー外国語映画賞をはじめ、いろいろな映画賞に輝いている作品です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.08.01 19:10:15
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