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カテゴリ:SF
「ジュラシック・パーク」 Jurassic Park 1993年 アメリカ映画 監督 スティーヴン・スピルバーグ 出演 サム・ニール ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム リチャード・アッテンボロー 言わずと知れた、スピルバーグ監督の大ヒット映画です。 実は僕は、恐竜も大好きで、「ワン・ピース」や「20世紀少年」の単行本とともに、恐竜の図鑑や解説書などが、結構なスペースを割いて、本棚に並んでいます。そして、どこかで恐竜展があると聞けば、必ず喜び勇んで出かけています。愛知県に住んでいる僕ですが、名古屋はもちろんのこと、東京や大阪でも、そのためだけに出かけて行ったことがあるほどです。近所で、常設で恐竜が見られる、豊橋の自然史博物館や、瑞浪の化石博物館などは、もう何度も何度も行っています。 だから、この映画は、涙がチョチョ切れるくらい、待ちに待ったうれしい題材の作品でした。 まず、何といっても、現代に恐竜をよみがえらせるアイデアが素晴らしいです。(もちろん、これは原作のマイケル・クライトンの業績なわけですが。) 琥珀の中に閉じ込められた中生代の吸血昆虫(蚊やダニなど)の体内に残された恐竜の血液から、恐竜のDNAを取り出し、爬虫類や両生類のDNAに組み込んで成長させるというアイデアは、本当に実現できそうで、非常に科学的です。(実際にそういう研究をしている科学者がいるといううわさがあります。) 佐々木淳子先生の「青い竜の谷」や、星野之宣先生の「ブルーホール」など、現代に恐竜をよみがえらせる漫画はいろいろありますが、そのよみがえらせ方は、超能力であったり、タイムトンネル(時空を超えて過去や未来に行ける穴のことです。)であったりするので、この映画(原作小説)ほどのリアリズムはありません。 かつて、このブログで「ガタカ」という映画を取り上げた時に紹介した「NASAが選んだ現実的な映画ランキング」でも、「ジュラシック・パーク」は7位に選ばれています。 それから、人類が最も苦労させられるのが、ティラノサウルスではなく、ヴェロキラプトルだということが素晴らしいです。(もちろん、これも原作のマイケル・クライトンの業績なわけですが。) ティラノサウルスは、今のところ最強最大の肉食恐竜(獣脚類)です。(なぜ今のところとつけるかというと、全恐竜の化石が発見されているわけではないからです。今後、もっと大きな肉食恐竜が発見される可能性が多大にあるからです。そもそも生物が化石になるというのは、結構、条件が厳しく、かなり特殊な状況にある場合のみです。その時代にいた全生物の死体が化石になっているわけではない、ということは古生物学の最も重要な大大大前提です。多くの人々が誤解している部分ですが。) しかし、恐竜と人類が同じ時代に生きていたとしたら、人類にとって最も脅威になるのは、ヴェロキラプトルやディノニクスなどの、小型獣脚類であるというのは、今や定説です。 彼ら小型獣脚類(ドロマエロサウルス類)は、知能が高く、俊敏な動きで、その足にある大きなカギヅメを最大の武器とし、群れをなして、大型恐竜をも獲物にしていたのです。 なにしろ、ディノニクスの発見から、そのどう考えても運動能力が高いはずの体型から、恐竜温血説が生まれたほどです。(今や、大型恐竜はともかく、少なくとも、彼ら小型恐竜は温血であったというのは定説です。) だから、視線が高く、動きがそれほど俊敏ではない、ティラノサウルスら大型獣脚類よりも、ほぼ体型が人類と同程度で、動きが俊敏なドロマエロサウルス類の方が、人類にとっては脅威なのです。 そんな非常に科学的な事実が、当たり前のように描かれているのが素晴らしいのです。そういった描写も、科学的知識に長けているNASAの皆さんが、現実的と評価している要因のひとつであると思われます。 そしてまた素晴らしいのは、「自然をなめたらいかんぜよ。」を、作品のテーマとしているところです。 ジュラシック・パークを作り上げたインジェン社のオーナー、ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)は、その開園前に、有識者にその存在を紹介するため、古生物学者のアラン・グラント博士(サム・ニール)、エリー・サトラー博士(ローラ・ダーン)、数学者のイアン・マルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)を招待し、自分の孫のレックス、ティムとともに、パークを視察に出かけ、恐ろしい目に会ってしまうのです。 彼らが危機に陥ってしまう要因は、ライバル社にその機密を売ろうとした、裏切り者の社員のせいではあるわけですが、劇中で、マルコム博士が指摘しているように、人類が恐竜を制御できるなどと思うのは、人類の奢りであり、遅かれ早かれ崩壊したであろうことは明らかです。 今現在全世界で問題になっている地球温暖化や、福島の原発事故などは、まさに、人類の奢りが招いた結果であるという見方もできるわけで、まさしく現代的なテーマが描かれている作品なのです。 そして何より、1番素晴らしいのが、非常に科学的であり、まさにタイムリーなテーマを描きながら、非常に楽しめる作品に出来上がっているということです。 当時の最新の技術を駆使して非常にリアルな恐竜を描きだし、ハラハラドキドキする展開を演出し、観始めるとたちまちその世界に引き込まれ、一気に最後まで画面に集中してしまいます。そうして、この映画は、僕のような恐竜マニアだけではなく、非常に多くの人々の心をつかみ、空前の大ヒット映画になったのです。 しかし、実は僕はたったひとつだけ、この映画で気になることがあります。それは、「ジュラシック・パーク」つまり、“ジュラ紀の公園”という名前なのに、出てくる恐竜は、白亜紀のものが主だということです。 恐竜は、約2億2500万年前から、6500万年前まで続く、中生代と呼ばれる時代にこの地球を支配していました。中生代は、古い順に、三畳紀・ジュラ紀・白亜紀と、3つに分かれ、そのもっとも古い三畳紀の途中に恐竜は現れ、様々な形態に進化していきます。 三畳紀の間は、非常に原始的な恐竜しかいなかったので、まあ一般的には、恐竜の時代と言えるのは、ジュラ紀・白亜紀ということになります。 この映画に登場する恐竜たちの内、ジュラ紀の恐竜は、グラント・レックス・ティムが夜を一緒に過ごす巨大な植物食恐竜ブラキオサウルスと、裏切り者社員が毒を吐かれてしまうディロフォサウルスの2種類のみです。 一行の車を簡単にひっくり返し恐怖に陥れるティラノサウルス・レックス(T-REX)や、彼らを1番危機に陥れるヴェロキラプトル(ラプター)、瀕死の個体を発見し思わずエリーが治療するトリケラトプス、一行が群れに出会うガリミムス、遠景しか登場しないが頭のトサカが印象的なパラサウロロフスなどは、すべて白亜紀の恐竜です。 確かに時代が新しい白亜紀の方が、より個性的な形態をした見た目にも目を引く恐竜が多く、T-REXや、トリケラトプスなどの有名な恐竜が多いということがあるのですが、恐竜マニアとしては、少し気になりました。 まあ、一般的には、どうでもいいことだけれどね。 ということで、今回はこのブログには珍しく、大大大ヒット作を紹介しました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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