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名無し人の観察日記

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2011.03.27
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カテゴリ:カテゴリ未分類

 東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた福島第一原子力発電所の事故。記者会見でしばしば使われているのが、「想定外」と言う言葉です。想定を遥かに超える津波によって事故が引き起こされたと言うのですが、これに対し反原発勢力だけでなく、普通の人々も激怒中です。
 原発のような何か起きた場合に大惨事を招きかねない物を作るにあたっては、どんな想定外も許されない、と言うのが怒ってる人々の主張な訳ですが……
 
 私もシステム屋の端くれなので敢えて言いますが、どんな機械やシステムでも、必ず「想定外のトラブル」と言うものは起こりえます。人間は神様ではなく、起こる自称の全てを予測する事などできません。「想定外は許されない」と言うのは、はっきり言ってしまえば人間に神様である事を要求する、非常にナンセンスな主張です。
 だから、どんなシステムでも「想定外」が起きた後、それをリカバリー(回復)するための、別のシステムを平行して作っておきます。それも出来れば複数。
 今回の原発事故で、リカバリーとしての東電の復旧作業や、それを支援している政府などの動きは、完璧ではないにしてもそれなりに機能しているのは確かだと思います。
 
 で、ここからが本題ですが、リカバリーを整備しておくにしても、それ以前にトラブルを減らすために可能な限りの事象を想定しておくのが必要なのも確かで、福島第一に関しては津波に対する想定が甘すぎた、と批判を受けています……が、果たして、本当に福島第一の津波想定は甘すぎるものだったのでしょうか?
 
 まず、福島第一原発では津波対策の想定として考えられていた最大波高は5.7mであったそうです。一方、今回の地震で押し寄せた津波の高さは14mと、想定の2.5倍に達しました。
 
特報:福島第一原発、津波を「再評価中」だった
(日経BP社ケンプラッツ:11年3月23日)

 この記事によれば、原発の耐震基準が2002年に見直された後で、引き波による取水停止対策も見直しがかかったそうで、この点でも共産党とそのプロパガンダを信じた奴涙目なのですが、まぁ今回は置いておきましょう。
 さて、この5.7mと言う最大波高の事前見積もりは、甘過ぎるものだったのでしょうか。結論から言うと、甘くはない、妥当なものであったと私は評価します。
 現実問題として14mの津波が来ているのに何で妥当なんだと思われるかもしれませんが、そもそも地震の専門家でも日本付近でマグニチュード9クラスの超巨大地震が起きることを想定していた人は殆どいませんでした
 その傍証の一つが、三陸海岸地方の各自治体の被害です。これらの自治体の多くでは、22000人が犠牲になった明治三陸地震(マグニチュード8.3)を想定して津波対策をとっていましたが、今回の津波はそれらの対策を無残に粉砕して押し寄せ、多くの自治体が壊滅状態に陥っています。

 新聞では869年におきた貞観地震と今回の地震の類似性を指摘し、想定は甘かったのだと主張しているところもあります。
 
福島第1原発:東電「貞観地震」の解析軽視

>東京電力福島第1原発の深刻な事故原因となった大津波を伴う巨大地震について、09年の経済産業省の審議会で、約1100年前に起きた地震の解析から再来の可能性を指摘されていたことが分かった。東電は「十分な情報がない」と対策を先送りし、今回の事故も「想定外の津波」と釈明している。専門家の指摘を軽んじたことが前例のない事故の引き金になった可能性があり、早期対応を促さなかった国の姿勢も問われそうだ。
(毎日jp:11年3月27日)

 責任が問われそうだも何も、今お前がヒステリックに糾弾してるではないか、とツッコミを入れたくなる記事ですが、この記事で毎日新聞が勘違いしているポイントが一つあります。それは、東北地方太平洋沖地震は厳密には貞観地震の再来ではない、と言う点です。引用されている産業技術総合研究所の調査報告書を見てみましょう。
 
活断層・古地震研究報告

 貞観地震の津波に関する研究は、2006~2010年にかけて行われています。
 まとめると、貞観地震は確かに仙台湾岸に巨大津波をもたらした大地震ですが、産総研がシミュレーションで想定した地震の規模は、マグニチュード8.1~8.4。また、震源域は牡鹿半島から福島県沖、南北約200kmの仙台湾正面。
 これに対し、東北地方太平洋沖地震はマグニチュード9.0、震源域は三陸沖から茨城県沖にかけての南北約500kmに達しています。断層すべり量も、想定貞観地震の7mに対し、20mと三倍。つまり、東北地方太平洋沖地震は仙台湾沖だけでなく三陸沖と茨城沖でも断層運動を伴った、想定貞観地震の10倍以上の規模を持つ超巨大地震であり、想定貞観地震に対応した津波対策であればこの被害を防げたかどうかについては、かなり疑問が残ります。
 
 実際、産総研の報告書の中でも、貞観地震の津波被害があったのは牡鹿半島から常磐海岸にかけてで、三陸地方では津波の痕跡がなかったことが報告されています。三陸地方も大被害を蒙った今回の地震より、貞観地震の津波の規模が小さかった傍証になります。
 さらに、比較対象となる仙台湾岸に関しても、貞観地震の津波到達域が最大で内陸4kmと想定されるのに対し、今回の地震では宮城県の亘理町などで内陸6~10kmに達する津波が確認されており、仙台湾岸でも今回の地震の津波が遥かに大きかったことが伺えます。
 
 これらの情報を整理すると、福島原発の津波想定に関しては……

・マグニチュード8級、津波の高さ5m級までは想定され、対策が進行中だった。
・マグニチュード9級の地震に関しては福島第一だけでなく、全国的に対策は考えられていなかった。
・一部言われている貞観地震との類似性に関しては、一番詳細な想定でも東北地方太平洋沖地震の規模ではない。


 そもそも、貞観地震自体時代の古さもあって研究が進んでおらず、今回の地震との類似性から注目されるようになったもので、それまでは一部の研究機関が小規模な研究を進めていたに留まっており、国を挙げてこれを想定した対策が論じられる段階に無かった事は確かです。
 
 原発に限らず、リスク管理には必ず「これ以上は想定しても対応できない」と言うラインが存在します。例えば、今回の震災で仙台湾岸に10m以上の津波が押し寄せてくる可能性があることは立証されましたが、それに対して仙台湾から常磐海岸にかけて、延長200km近い海岸に延々と高さ20m以上の防潮堤を建設できるかと言えば、そりゃ無理としか言い様がありません。
 まして、それが災害の前だったら「景観を破壊するような真似をするな!」「また公共事業に無駄金を使うのか!」と世間から叩かれるのは目に見えています。おそらく、福島第一に関しても、マグニチュード9クラス、津波の最大波高20mに対応できる安全対策をとろうとしていたら、地震の前なら鼻で笑われるか、そんな無駄な事をして電気代に反映されるようなコストをかけるな、と袋叩きにされていたでしょう
 
 事故が起きてしまったことに怒りを覚えるのは当然だとは思うのですが、自分が本当に合理的な意見を持って相手を責めているのか、と言う事は、毎回自問すべきだと思います。
 
 感情的にわめくだけなら、サルでも出来ますから。


 
 
 





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Last updated  2011.03.27 22:05:17
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