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Mar 11, 2009
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カテゴリ:心境の吐露



♪ 思えば遠くへ来たもんだ~ ♪


北海道へ旅行していた時、3日連続で通ったバーのマスターが、これまた3日中2日かけてくれた曲のワンフレーズ。良い人だった。今回は懐古話。



今まで数多くのバーに行ったことがあるが、このバーのマスターだけは今までの人とは少しだけ違った。何と言うか…独特のオーラを持っている人。気さくな人物であることに変わりはないのだが、言葉では表現しにくい魅力を持った人。
そんな良い意味で変わったマスター流が散りばめられたお店だからこそ、店の雰囲気もどこか落ち着き、それでいて懐かしい雰囲気を持っていた。近くにあれば毎日でも通うこと請け合いのお店だ。これだけ褒めちぎれば回し者だと思われても仕方ないだろう(笑)


少々あって、このバーには3日連続で入り浸ることになったのだが、最初の印象と同じく。このバーを気に入るのにそう時間はかからなかった。マスターもさることながら、そこに飲みに来るお客さんも素敵な人達ばかりだった。擦れていない、そんなイメージを持たせる雰囲気。気持ち良いものだ。
私はこのバーで初めて自分のリミットを越えるお酒を飲んだ。もう2回目からは本名で呼ばれるほどに馴染んでいた。顔馴染みのお客さんともふれあい、楽しい時間を過ごさせてもらった。


思えば…


あの時、雪が吹雪く中、小さくて安っぽい(と書いたら怒られるかもだが)扉を開けたのが全ての始まりだった。中にはマスター一人、ちびちびとお酒を飲んでいた。見るなり
「あぁ、確か昨日来た…!」
その一言で嬉しくなる。忘れられていない、むしろ良い意味で覚えられていた。この土地には私を排斥する者の存在しかない。その中で唯一私を迎え入れてくれる人の存在。心が震えた。普段はいきなりテンション高めに話すこともないのだが、この時ばかりはテンションもややあがってしまっていた。重い荷物を下ろし、端っこから2番目の席へ。同じものを注文し、小さく乾杯。寒さの中でも暖かさを帯びる液体が微かに震えた。

それからはもう自分の許容量も忘れて飲んだ。マスターの話は面白く、そして私の話も沢山した。不幸な話、昔の話、総じて笑い話…etc 全ての話に上手く反応してくれるマスターが最高に素敵だた。そのうち常連とおぼしき人も現れ、今度は3人で盛り上がった。私が関東から来た関西人というだけで入りは上々で、後は関西で鍛えられた話術で盛り上げることが出来た。マスターが新しく入ってくるお客さん全てに私を紹介してくれるのも嬉しかった。


午前0時をまわった。もう4時間以上いる。そろそろ帰ろうかと思った矢先、遂に彼が現れた。未だに名前も知らない彼は、私の横に偶然座ったのだが、次の瞬間から私に絡みだした。酔っている人間の典型、同じ話を繰り返す。それが彼の固有能力のようだった。まぁ場数はそれなりに踏んできているので、そういう状況でも上手く相手を気持ちよくさせるスキルは持っている。だが、逆にそれがいけなかったのかもしれない。テンションの上がりきった彼は、私に奢ると豪語して、更に飲ませようとしてきた。もうなんだかよくわからないノリになっていたので、それを受けて更に飲む。

限界まで飲む

なんか盛り上がる

更に飲む

更に盛り上がる

最初に戻る

図式的には磐石の流れをもっていた。もうやばいと思うレベルを遥かに超え、私は飲み続けていた。何かを忘れるように。


結果的にはつぶれることになってしまった。店で静かに飲んでいた他の常連さんには迷惑をかけたことだろう。仕方ないとは言え、いい大人が情けない。その日は謝りながら帰ることになった。
次の日も同じような時間、私はその扉を開け、店を訪ねていた。デジャヴかと思うくらい同じような絵がそこには展開されていた。浮かない顔の私をマスターは迎え入れてくれた。家に帰ってきたかのような安心感。当然その日も猛烈に飲んだのは言うまでもない。お酒が楽しいという意味がわかった。
それ以降はそのバーには行っていない。行きたいと思ったが、予定が予定だけに無理だった。結局何も言わずに横浜へ帰ってきてしまった。今はそのことだけが気がかりで仕方ない。連絡を取る方法がないのが悔やまれる。しかしそうなってこそ思う、必ず…必ずまた行こうと。そこ以外には行くあてもないのだが、必ず行く。これは私の意地だ。感謝の言葉を直接伝えたい。そしてあの空気は癖になる。あの感覚はアルコールよりも愉悦だ。


薄暗い店内
微かな音楽
ジャズだろうか?
傾けたグラスに入った琥珀色の液体をぐっと飲み干す
喉を通過する度に微かな熱を帯びる
良い雰囲気で飲むお酒は格別だ
楽しいトークに気分も盛り上がる




私はここを忘れない。













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Last updated  Mar 14, 2009 12:50:57 PM
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