意匠出願の優先権主張
引き続き、パリ条約の優先権主張について気づいたことを書いておきます。パリ条約Fは部分優先および複数優先に関していますが、これは特許について規定しており、意匠には適用する義務がありません。以下は、スタンダード意匠法の記載です。わが国では、1意匠1出願の原則を採用し(7条)、出願に係る意匠の全体で1つの意匠と認定することとなるため、出願に係る意匠の一部について優先権を認めることは困難である。従って、わが国においては、意匠についてパリ条約4条Fの規定を適用する余地はないものと解される。なるほど。ということは・・部分意匠の場合どうなるかというと、最初の出願が部分意匠である場合、わが国の出願が部分意匠であって当該部分が同一である必要があり、このとき、もし、わが国の出願が全体意匠である場合は、当該部分意匠のみ優先権が有効なのではなく、優先権そのものが認められない。そして、最初の出願が全体意匠である場合、わが国の出願も全体出願であって同一である必要があり、このとき、もし、わが国の出願が部分意匠である場合は、当該部分意匠のみ優先権が有効なのではなく、優先権そのものが認められない。(スタンダード要旨)となり、組物の意匠の場合は、最初の出願もわが国の出願も同様に組物の出願であって、組物の意匠の全体として同一である場合に限って優先権の利益が得られる。さらに、他の同盟国において、組物を構成する物品ごとの複数の意匠出願を基礎として、わが国に組物の意匠登録出願をしても優先権の利益が得られない。(スタンダード要旨)となります。このような点は、逐条で追いかけていても遭遇できませんでした。