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 昼下がりの迷宮~

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2011.03.03
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   【送料無料】叫びと祈り

砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇…
ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作。

【目次】(「BOOK」データベースより)
砂漠を走る船の道/白い巨人/凍れるルーシー/叫び/祈り


【送料無料】放課後探偵団』(感想はこちら)を読んだとき、書店のレビューに
  『叫びと祈り』が良かったので、梓崎優作品があるのを見てこの本を手にとった
と書いておられた方がありました。

『放課後探偵団』の中に収められた梓崎作品、確かに、とても心にしみるミステリーでした。
ならば、とこちらを読んだわけです。

『このミス』ランキングや本屋大賞候補など、日に日に(と思われます)評価が高まり、ベストセラーとなっている本ですが…

なるほど!
これは!
今まで味わったことのない、読後感。
絵画の中に足を踏み入れて果てのない地へ旅をし、気づけばもとの世界が見知らぬ色合いを帯びていた…というような、得も言われぬ衝撃に、鳩尾のあたりを打たれた感じです。


経済誌に、世界各国のまだあまり人々に知られない状況をルポする記事を載せるため、辺境に派遣される若き記者・斉木が、出会う事ごとが語られる連作短編集です。

新人賞をとった作品の、一篇目『砂漠を走る船の道』は、タイトル通り、塩をもとめて砂漠を行く隊商の物語。
ラクダにまたがり、道無き道を、経験者である長老の、知識のみを頼りに進みます。
過酷な道行き、砂ばかりが広がる景色、彼方に見えるオアシス、小さな部落…
本当にその紀行文を読んでいるような描写に、引き込まれる、というより飲み込まれるようです。
そして、連続殺人が起こります。

斉木の物語が続くのだから、彼がそこで命を落とすことはないだろう、とは予想するのですが(ズルイ読者)、でも時系列順に物語が並んでいるとは限りませんものね。
存分にハラハラします。

さらに、ミステリの仕掛けが単ではありません。
息をのみ、そして唸りました。

『白い巨人』は、友人との旅行を舞台にした、人間消失の謎解きものです。
これは、ステージになったスペインの景色とも相まって、明るい印象。
そして、二重三重の仕掛けも楽しめます。

しかし、その後の物語は、少しずつ暗さを帯びていきます。
『凍れるルーシー』は結末もはっきりとは描かれていないし、舞台設定からしてややホラーめいています。
でもそれが、少しも鼻につく感じなく文章になっているのがすごいです。

(この篇の結末、私なりの推理するところはあるのですが、ネタバレになりますね…
女性の仕業だったということと、復活というキーワードから考えて、完遂していなくて息を吹き返し… というのが予想)


そして、『叫び』と『祈り』。
この2作は単行本化にあたっての書き下ろしだということですが、どちらも衝撃的なまでの迫力です。

ルポのためにこれほどの…と、胸をかきむしりたくなるほどの体験をする『叫び』。

そして、静かな、あまりに静かな、焦燥に満ち、そして美しい『祈り』。
この一篇には、ここまでの物語や小さなエピソードがすべて、旋回しながら収束してゆくような迷路が仕組まれています。
これを描くために、4篇が編まれてきたのか、とも思えるほどです。


出版からは年度遅れになってしまいますが、私の今年のベストランキングに入ることが間違いない一作でした。
本当に、すさまじい筆力を持った作家さんが登場した、と、拙い読者ながら舌を巻いています。

東川篤哉作品は大好きだし、メジャーになってお金持ちにもなってほしい、と願ってあげたい作家さんではありますが、
本屋大賞は『叫びと祈り』で。
と、望みます。
どーん、と背中を押してさし上げたい。緻密で且つスケールの大きな物語を、
(そうです。ストーリー、ではない。物語、なのです。)
どんどん産み出していただきたい。

そしてもう一つ、ここに記したいことが。
これまで、出版から年月たっているか新刊かにかかわらず、単行本を中心に図書館を利用することも多かったあむあむですが、この本はお金を払って購入しました。
作家さんの収入は、とくに新人さんの場合、僅かな原稿料のほかは本の売上の印税にかかっているのだそうです。
そして、新刊を蔵書にし、無料で多くの人が読む図書館は、実は作家さんにとって、収入を枯渇させる脅威ともなるのだそうです。
そんなことを新聞で読んだので…

どんな本も次々に、とはもちろんいきませんが、読みたい本は、できるだけ、お金を払って(ときには楽天ポイントも使うけど)、手にしよう。
それが作家さんを応援することなのだ!
と思う、あむあむなのであります。


みんなも、読んでみて!
買ってみて!

 

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最終更新日  2011.03.15 23:50:28
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