【送料無料】館島
天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。
嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!
瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルな筆致で描いた意欲作。驚愕のトリックが炸裂する本格ミステリ。(「BOOK」データベースより)
やっぱり読んでしまいましたよ。ガマンできず…
そして存分に、楽しみました!
先日の、東川篤哉氏のお話の中にたびたび語られた自信作。それも納得の大作でした。
まず一番に感じたのは、東川作品の味は、やっぱり長編がいいなぁと。
笑いを誘う言い回しや、登場人物の思いも寄らないリアクションの数々。
文字数、行数のゆとりのなかでたっぷりと味わうことができるのです。
ついでに申すと、作品中(とくに長編)よくあらわれる<フレーズ繰り返しの妙>。
私、東川さんはこれを、パソコンの<コピー&ペースト>で書かれるのだと思っていました。
でも、先日のお話によると、氏はパソコンでなくワープロをお使いだという。
…たいへん…
(私などの心配は無用でしょうが。)
張り巡らされた伏線が見事に収束されるというのも東川作品の特徴ですけれど、ユーモアに包まれた驚くような仕込みも、また長編ならではのものがあります。
さて、<ユーモアミステリー>という東川作品、その<ユーモア>の部分について先に書いてしまいましたが、<ミステリー>の部分だって実に素晴らしい。
孤島!
間取り図つきの、オーナーこだわりの館!
愛憎が見え隠れする人間関係!
呼び集められた人々!
嵐!
待ってました、という舞台に、そうこなくっちゃ、という不可思議満載の死体!
<まさか!>という仕掛けも、あの伏線には納得せざるを得ません。
どこをとっても、「これはズルイ」というものがないのです。
最初から最後まで、ほんとうに楽しいんだってば!
そしてもうひとつ。
瀬戸大橋という、今になってはあるのが当たり前のように感じるようになってしまった大きな建造物を、地元の人達がどんな思いで迎えたのか…
切ないとも何ともいえないような感情も、滲み出ています。
決して、面白おかしいばかりの話ではないのです。いろんな意味で、本物なのです。
ちなみに、この作品について、桜庭一樹氏も大いに楽しんだ由、東京創元社の<Webミステリーズ!>で語っておられます。
桜庭一樹 読書日記 【第1回】 2006.03.08 より
創元の担当編集者、K島氏と会う。
(中略)
わたし「それと『館島』」
スプーンをおいて、両手で○○○○と、館島のトリックを再現してみせた。ふふふふ、と笑いがこみ上げた。
わたし「このトリックが、ふふふふ、好きで、つまりこういうのが、ふふふ、好きなんです。あの二冊を読んだとき、喜びに部屋の床を転がりながら、この感動を誰に伝えればいいかと」
K島氏「それはぼくに伝えればいいんじゃないですか」
わたし「ふふふふ……。あっ、そういえばそうですね? つぎからそうします」
(中略)
わたし「○○○○。ふふふふ」
K島氏「ははは。……ところで、『館島』は続編が出る予定ですよ。○○島」
わたし「おぉ、島シリーズ。いいですね。最終巻はぜひ『K島』で!」
K島氏「えええー(ちょっといやそう)」
続編の話は先日の対談でも出ていました。まだ書き始めてはおられないみたいだったけれど…
あの<探偵>と<刑事>のひとたち。読み終えたら誰でも、この後の活躍も読ませて欲しいと思うはずです。
桜庭一樹さんも、待っていると思うな。