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大宇宙ファンタジア☆世界樹☆その11
…心眼といえば、眼をつかわずに物事の本質を観ることであるといわれており、 禅の修行者はそれを得るために大変な修行をしたと言われているけれども、 知性体がどのくらいの修行をつんだのかは、知性体すら知らないらしい… 知性体は、ない口でつぶやく。 「さてと、これからどうするんだったっけ。 えーと、…そうだ、思いだしたぞ。 念じるんだ、念じるんだよ知性体。 ぼくは知性体、もっとましな名前が欲しいけれど、今はぜいたくを言っちゃいられない。それは、将来、かわいこちゃんにつけてもらうとして、 ここは、ジャンプ一番一念発起、念じるんだ、知性体。ぼくは言わずと知れた誰もが認める知性体、手はないし、脚もないし、目も耳も口もない。そんなぼくにできることといえば、考えることと念じることぐらいのもんだ。 いやなに、その気になれば、手も脚もニャキニョキはえさせることもできるし、目も耳も口もパンポン生じさせることもできるんだけれど、 と自分を元気づけておいて、と、 さて、うーん、念じるぞー、うむー」 知性体は、ない顔をまっ赤にして念じる。 …宇宙のたまごよ、孵化せよ、孵化せよ、ふかふかの大宇宙になーれ。宇宙のたまごよ、ふかせよ、ふかせよ、アクセル全開、ビビビー… ほかに表現できないので、そう表現されてはいるが、それは言葉ではなく、ましてや日本語ではなく、イメージであり観念であり概念であり感じでありユーモアの精神の大本ヒューマニティーその他もろもろなのであった。人びとがマネしようとしても、とてもできる芸当ではない。 知性体の念じは神時計の神時間で一週間と三時間十六分なんとか秒つづいた。その結果、知性体はくたびれたかというと、そんなことはない。どころか、以前より元気になった。なぜなら知性体は全知全能の神の一柱であり、エネルギーを自在に操れるからである。 「あー、はらへったなあ」 にもかかわらず、知性体はぼやいた。 しかし、知性体も人の子、いや失礼、宇宙の子、さらに、人の親、というより宇宙の親。その超絶・激甚な激務を考えると、それくらいのパフォーマンスをして楽しむ権利と資格はあるのではなかろうか。 それを無慈悲にも、全知全能の神がそんなこと言うなんて、あーあ、ゲンメツだー、などという知的な御仁がいたとしたら、 現に今、まだ生まれ落ちてないのに顔をだしてきて、そう言おうと張りきりだしている方が無限天空に現れたが、 やはり、その御仁の方がまちがっている、のではなくて、あるいは正しいといえないこともないのかもしれないはずにちがいないと思われないこともないのかもしれないのです。 そのどちらの意見が正しいかを判定するには、あと数秒待てばよい。全知全能の神が、まちがっている個所にカミナリを落として消してくれるはずだからである。 ……… しかし、どちらも消えなかった。 ということは、どちらも正解なのにちがいない。 それとも、カミナリを落とすと、神ならぬ紙に火がついて、全部燃えてしまうことを懸念して落とさなかったのだろうか。 または、今のカミのダブルミーニングについて縁起をかついだのだろうか。つまり、自分の方が燃えてしまうのはいやだ、と。 あるいは、カミナリを落とす、という表現の別な意味のイメージが自分につくことを憂慮したのだろうか。 それとも、神と人間の時間感覚のズレで、それはこれから先になるのだろうか。 または、神はそんなみみっちい話しにはまったく反応しないのだろうか。 それとも、神はここを見ているわけではないのであろうか。 あるいは、そもそも神はいないのであろうか。 しかし、神がいないのであれば、ペンの描きだすこの物語りはなりたたない。それなのに、ペンは依然として歩みを続ける。ということは、物語りは成り立ち、神はいる、ということになるのであろうか。 そこらのところを、論理明晰、単純にして複雑明快に回答を出せる方がどこにいるのか? それは誰も知らない。 ここで、さっきのまだ生まれていない方で顔をだした、つまり、さっきの顔をだしたまだ生まれていない方、はその推論の拙劣さにあきれはてて《カッカ》し、熱をだして溶けくずれはて消えてしまった。 その方は、遥かな未来に「閣下」と呼ばれるようになる人にちがいない。 …いずれにせよ、その長時間にわたる知性体の強烈にして熱烈なヒューマニティーのこもった念じのおかげで、宇宙卵はいっそう活発度をました。そして、ルビーレッド、サファイアブルー、トパーズイエロー、エメラルドグリーン、そして虹色に変化しながら輝く。 ここで、嗅覚のいい物理学者でまだ生まれていない、がかぎつけて、叫びながらこう言おうとしている。 「その場合、そのとんでもない重力によって空間が極限まで曲がってしまって、宇宙卵から光は出られないよ。 かんたんに例えて言えば、光がとてつもない重力によってひっぱられて、そこからは出られないよ」 すると、ペンはこう反論する。 「それじゃ言ってあげますけどね、あなたはまだ生まれておらず、宇宙卵の中に可能性として存在しているだけなんですよ。そんなあなたは考えることもしゃべることもできっこない。 そんな、ない存在が意見を言うという矛盾が起こるのであれば、宇宙卵から光が出ても不思議ではないですなあ。 それに、文学的表現というのは物理学を超えているのですよ」 すると、それを聞いたその、まだいないはずの物理学者は、空気がぬけてしぼんだ風船のようになり、準備していた反論は、ぐにゃぐにゅとねじ曲がり、両方とも跡形もなく薄れ消えはててしまった。 by西山浩一(C)(春楽天・世界人) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.07.25 07:32:05
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