徒然草を読もう・第九十九段
第99段 堀川相国は、美男のたのしき人にて、そのこととなく過差を好み給ひけり。御子基俊卿を大理になして、庁務(ちょうむ)おこなはれけるに、庁屋(ちょうや)の唐櫃(からひつ)見ぐるしとて、めでたく作り改めらるべきよし仰せられけるに、この唐櫃は、上古(しょうこ)より伝はりて、その始めを知らず、数百年(すひゃくねん)を経たり。累代の公物(くもつ)、古弊(こへい)をもちて規模とす、たやすく改められがたきよし、故実(こしつ・こじつ)の諸官申しければ、その事やみにけり。現代風訳 堀川太政大臣は、美男で裕福で、何でも贅沢を好んだ。息子の基俊卿を検非違使庁の長官に任命して、検非違使庁の執務の際に、検非違使庁の建物の唐櫃が見苦しいと、新調するよう仰せられた所、この唐櫃は、大昔から伝わっていて、その始めがわからずに数百年を経ている。代々伝えられてきた公用の器物は、古くすたれているのをよしとするので、たやすく改めがたい旨を、古くからの慣例に通じている役人たちが申したところ、唐櫃を作り変えることは取りやめになった。なんでも新しければいいというものでもないですよね。文化財の価値がわかる人がいないと、東大の生協食堂のようになるわけで・・・参考に「2018年5月8日関係者各位 東京大学中央食堂の絵画廃棄処分についてのお詫び 東京大学消費生活協同組合理事長 武川 正吾 このたび私ども生協職員の軽率な判断により、東京大学中央食堂に展示されていた宇佐美圭司氏の絵画「きずな」が永遠に鑑賞のできない状態となりました。このような取り返しのつかない事態を防げなかったことに対して、生協の理事長として責任を痛感し、深く反省し、心よりお詫び申し上げます。まことに申しわけございませんでした。今回の事態に至った経緯については、別に代表理事が詳細に説明しているとおりです(http://www.utcoop.or.jp/news/news_detail_4946.html)。今後は二度とこのようなことが起こらないよう、現在の組織のありかたのどこに問題があり、どう改めたらよいかについて検討し、関係者のみなさまからの信頼回復に努めてまいる所存です。」