業績、結果にこだわらない
ある大工とその弟子が、深い森の中を一緒に歩いていた。ある所まで来ると、そこに一本の巨大な、節だらけの、見事な樫の老木があった。すると大工は弟子に、「この木はどうしてこんなに高く、大きく育ち、たくさんの節をつけた見事な老木になれたか分かるかね。」と尋ねた。弟子は師匠をじっと見て答えた。「わかりません。なぜでしょうか」 大工は答えた。「それはだな、これが役に立たない木だったからだ。もし、この木が役立つものだったら、とっくの昔に切り倒されて、机とか椅子になっていたことだろう。しかし、なんの役にもたたなかったからこそ、お前がその木陰に座って憩うことのできる、これほどの高さの見事な木になれたのだ」 ヘンリ・ナウェン著 「静まりから生まれるもの」より 樫の老木はもしかしたら、机や椅子になるために、暖炉の薪になるために、クリスマスツリーになるために切り出されていった森の木々を羨ましく思ったかもしれません。自分はなんの約にも立てないんじゃないかと、自己否定したかもしれません。巨大な老木として人や森の動物たちの憩いの場に成るとは思っていなかったのではないでしょうか。(いやまあ、木は木としてただ有ることに忠実ですから、これは擬人です。樫の木が、「桜だったらみんなに愛でられるのに」とか思わないわけです。) 「静まりから生まれるもの」の中では、「独り静まる中で私達も自分はどれほど人の役に立つだろうかという思いにとらわれずに、のびのびと齢をとることができ、自分が計画したわけでないのに、何らかの奉仕を人にできるようになります。」とあります。「静まりから生まれるもの」は、 OUT OF SOLITUDE が英語の題名です。