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海戦史上、最後のガレー軍船同士の大規模な戦いだったレパントの海戦。1571年、再びキリスト教徒の連合艦隊とトルコ帝国が約400隻がレパント沖で向かい合うあうことになる。この海戦では、有名な砲艦ガレー軍船ガレアッツァも参戦し、連合艦隊の勝因に一役買う。しかし残念ながら「海の都の物語」では、詳しくは語られていないので、ぜひ塩野さんの「レパントの海戦」を読んでください。連合艦隊の軍船は揃ったが、またここで総司令官を誰にするかでスペイン、ヴェネツィアがもめることになる。スペインが薦めるのは、司令官候補にジャンアンドレア・ドーリアという海の傭兵隊長。プレヴェザの海戦で敵前逃亡した、あの海賊ドーリアの甥っ子だ。ドーリアの身内なんか信じられるものかと、この時もヴェネツィアは猛反対する。「そうだ、そのとおり!」と本を読んでいて強く同意してしまう。しょせん金で雇われた海の傭兵。ヴェネツィア人のような国を守るために自分の命など惜しくはないという考えは持っていない。左翼に布陣したヴェネツィア海軍は、レパントの海戦でも海賊シロッコ艦隊相手に壮絶な白兵戦をする。ところが右翼に布陣したドーリアは戦術を失敗してしまう。いや、こいつは絶対に戦闘から逃げてるなと思ってしまう行動に出る。スペイン王フェリペ2世からもヴェネツィアの戦力を削ぎ、適当に終わらせれば良いと言われているようだ。味方の中に裏切り者がいるのだから、存亡に賭けるヴェネツィア海軍を応援してしまう。どこかの国の政治家のような世襲の情けなさも感じてしまう。それに対して、トルコ海軍側の海賊司令官ウルグ・アリはなかなかの人物。元はイタリア人でキリスト教徒だったが、イスラム教へ改宗したという海賊。世襲海賊のドーリアを、振り切り、総司令官ドン・ホアンの本隊へ突入し、総司令官を守るマルタ騎士団(聖ヨハネ騎士団)の旗艦を攻撃、拿捕、そして牽引して逃げるからたいしたものだ。だがこの時も、右翼に布陣していたヴェネツィア海軍の一部が、ウルグ・アリ艦隊へ突入し自爆してまで、騎士団の旗艦を奪い返そうと戦うのだからヴェネツィア人が大好きになってしまう。逆に、右翼の傭兵司令官ドーリアはまったく戦わず鎧は血も浴びず、きれいだったという。
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Last updated
Jul 18, 2009 04:36:27 AM
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