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2024/05/24(金)05:09

西側金融制裁の隙を突いて儲ける西側銀行ライファイゼンの矛盾

金融と投資(129)

 日本のメガバンクなどのほとんどの大手企業はテロ国家のロシア事業から撤退したが、西側にはアメリカやEUの経済制裁のもと、かえって隙を突くかたちでロシアでの存在感を高め、高収益を挙げているハゲタカ銀行がある。 ​◎年間純利益は約2000億円​​ オーストリアの大手銀行ライファイゼン・バンク・インターナショナルだ(写真)。同行は、欧米の銀行がロシア事業から撤退・縮小する隙に逆にロシア事業を伸ばしている。  アメリカの経済アナリストの予測によると、同行のロシアとその同盟国ベラルーシの事業で得られる純利益は2024年12月期で12億ユーロ(約2000億円)にのぼる見通しだ。ロシア・ベラルーシ事業は、全体の69%にも達する。 欧米各国がテロ国家ロシアの対ウクライナ侵略を止めさせるべく制裁を加えているのに、その隙を突いて多額の利益を挙げていれば、ロシアはそれ以上の利益をそこから得て、戦費を稼いでいることになる。 しかもライファイゼンは、テロ国家ロシアに多額の税金さえ納めている。ちなみに23年の外国銀行のロシアでの納税額は計8億ユーロを超えるが、ライファイゼンはその半分以上を占めている。 ​◎ECBから撤退急げと催促されている​ かねてから同行にロシアからの撤退を促しているECBは4月に撤退を急ぐように催促したのも、当然だ。 ライファイゼンが西側の対ロ制裁の抜け穴になっているのは、同行が重要な送金ルートになっているからだ。ロシアの金融機関は、国際的な決済ネットワークSwiftから締め出されているが、ライファイゼンはEUの銀行だから、そうではない。ロシアは、原油や食料の輸出代金を同行を通じて得ることができる。 アメリカやEUは、ライファイゼンのロシア事業を制裁対象に加えないと、抜け穴を塞げず、ロシアに貿易代金を流し続けることになる。 ​◎資産接収のリスクを抱え、利益も母国に送金できない​​ ただライファイゼンも、ロシアからの撤退をしたくても、簡単にはいかない事情があるようだ(写真=モスクワ市内で掲げられているライファイゼン銀行の看板)。株式会社である以上、株主の価値を毀損するわけにはいかない。​  撤退するにも、ロシアの資産を保全したうえで撤退しないと、プーチン政権が多くの西側会社の撤退でやったように資産を接収され、プーチンのお仲間に格安で譲渡されてしまう。円満に撤退するには、ロシア政府による事業譲渡先の審査が必要になる。その見通しは暗い。 しかもライファイゼンは、ロシアで得た収益をオーストリアの親会社に配当として移転できない。 ​◎ロシアに積み上がった死に金の利益は1兆円弱​ 母国に移転できない資金はロシア中銀に積み上がり、50億ユーロ(約8500億円)近くにもなっているとみられる。ロシア中銀に預け入れた資金から、同行は年に16%の利子を受け取っているが、それも母国に送金できないから「死に金」に近い。​ ライファイゼンの株価は、ロシアのウクライナ侵略が伝わると、一時は3分の1前後に暴落したが、この1年間では約26%値戻しした(グラフ)。​  ライファイゼンの投資家たちは、プーチンのさじ加減でライファイゼンの命がどうなるか分からないのに、意外に楽観的で、これには驚くしかない。​昨年の今日の日記:「函館の旅(15):残念、見つけられなかった中川五郎治の墓、そしてロシア人墓地へ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202305240000/​

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