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2017.10.08
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カテゴリ:古生物学、進化

 いつの時代も、大型動物が生きているということは、僕たちの心を躍らせる。
 氷河時代が終わって、更新世メガファウナ(大型動物群)が一斉に絶滅した現代は、寂しい時代である。

◎第四紀絶滅以後も生き延びた巨鳥
 メガファウナは、哺乳動物に限られない。鳥類でも、いた。
 図体が大きすぎたために飛べない鳥、であったが、特徴は、マンモス、マストドン、ケブカサイ、肉食ではなどアルクトドス・シマス(顔の短いクマ=写真)、剣歯ネコなどの哺乳類と異なり、鳥類でも巨大化がなされたということだ(アルクトドス・シマスについては、2012年4月27日付日記:「北米北部で栄え、氷河期末に絶滅した史上最大のクマ=『アルクトドス・シマス』はなぜ滅んだのか」を参照)。



 もう1つ、哺乳類メガファウナは、氷河期末に一斉に絶滅(「第四紀」絶滅という)したのに、巨大鳥は人類史ではつい最近まで生き続けていたことだ。
 この絶滅には、第四紀絶滅と同様、いやそれ以上に人間が関与していたことも共通する。

◎最大体高3.5メートル、体重500キロのエピオルニス
 その1つ、その名も英名で象鳥(elephant bird)と呼ばれるエピオルニス(想像図)は、遙かなる近縁種のティラノサウルス・レックスの絶滅以降、新生代(6500万年前以降)に現れた最大の鳥、と言える。



 ダチョウなどの走鳥類の仲間で、頭頂までの高さは軽く3メートルを超え、最大のものは3.5メートル近くに達した。体重も350キロ~ 500キロもあり、鳥類史上最大の鳥であった(=左から人間、エピオルニスとその卵、ダチョウとその卵、ニワトリとその卵)。



 まさにelephant birdと呼ぶにふさわしい。ちなみにエピオルニスに匹敵する鳥は、800万年前から3万年前までオーストラリアに住んでいたドロモルニス(Dromornis)しかいない。
 ドロモルニスは、前記のように3万年前頃には絶滅する。おそらくその絶滅には、この頃までに、オーストラリア全土を征服したオーストラリア・アボリジンの祖先が関与したであろう。なぜなら超大型有袋類であるディプロトドンも、この前後に絶滅しているからだ。

◎最も近縁なのは小さなキーウィ
 幸いにもエピオルニスは、アフリカ大陸から切り離された巨大無人島だったマダガスカル島に閉じ込められたために、その後も生き延びられた。
 エピオルニスの含まれる走鳥類は、南半球各地に現生の仲間がいる。アフリカにはダチョウ、オーストラリアにはエミュー、旧サフル大陸のニューギニア・オーストラリアにはヒクイドリ、南アメリカにはレア、そしてニュージーランドのキーウィである。さらに別の機会に取り上げるニュージーランドの絶滅したモアも、そうである。
 この中で、巨鳥エピオルニスと遺伝的に最も近縁なのは、意外にもはるかに小型のキーウィである(写真)。



 このことなどから、はるか昔、南半球の巨大大陸ゴンドワナで進化した現生走鳥類の子孫は、その後、ゴンドワナ大陸の分裂後に各陸塊に隔てられ、独自に進化しつつ徐々に大型化していった、と考えられる(なお前記のドロモルニスは走鳥類ではなく、キジカモ類の仲間)。

◎巨大島の中で大型化へ進化
 その中で、島に閉じ込められたエピオルニスとモアだけが巨大化した。ただ同じ走鳥類で、ニュージーランドに閉じ込められたキーウィは、モアが巨大化していったために大型になれなかった。
 ニュージーランドもマダガスカル島も、巨大島であるが大陸からは隔てられている。そのため、捕食者となる肉食動物はいなかった。
 小さな島では、限られた食資源に適応するために体型は小型化するが、大陸のような巨大島ではその制約はないから、もともと飛べない鳥であったエピオルニスもモアもどんどん大型化していった。
 そして前述のようにエピオルニスは、体高3メートル超、体重500キロ弱まで大きくなったのである。

◎卵の重さは10キロ!
 体型が大きいから、産む卵も超大型だった。長さは13インチ(34センチ)もあり、重さは10キロもあった。もちろんこれまで見つかっている卵では最大であり、ちなみに鶏卵の160倍もあるのである。
 ところが、マダガスカル島という捕食者のいない楽園で繁栄したエピオルニスにとって、自らと産卵が超大型であったことが災いとなった。
 思わぬ捕食者、人類が、はるか東南アジアから舟で渡ってきたのである。

◎1500年前、ボルネオ島南部からヒトが移住
 マダガスカル島にいつヒトがやって来たかは、まだ謎の部分が多いが、おそらく紀元500年頃(今から1500年前頃)にボルネオ島南部から舟で渡ってきた移住者だろう、と考古学、遺伝学などから推定されている。
 近いアフリカからではなく、はるかに遠い東南アジアから、というのは、意外と思われるかもしれないが、舟を動かす季節的な風向きは、東南アジアからの方が最も都合が良いのだ。
 移住者たちは広い(58.7万平方キロで4島合わせた日本の1.5倍強)マダガスカル島で焼き畑を行い、環境をどんどん変えていった。

◎植民者の絶好の標的
 この過程でマダガスカル島で独自に進化していたキツネザル類は、生息地の森を失って続々と絶滅していった(11年2月3日付日記:「アフリカ、マダガスカル島のキツネザルの偶然;進化が生んだ多様化」、及び10年1月30日付日記:「スパコンで解いたマダガスカルの哺乳類固有種の漂流説:原猿類、キツネザル、メガラダピス」を参照)。
 危機に陥ったのは、エピオルニスも同じだった。1羽仕留めれば、村全体の食べる肉が得られ、また卵を採取すれば大きな蛋白質の塊が手に入るのだ。
 こうしてマダガスカル島に、おそらく最盛期には数百万羽はいたであろうエピオルニスは、ポルトガル植民者が到達した頃にはほとんど見られなくなった。

◎マルコ・ポーロも伝えた巨鳥
 しかし13世紀後半に中東を経由して中国や東南アジアを旅行したマルコ・ポーロは、1298年の記に伝聞として「マダガスカル島に巨大な鳥ロックがいた」と書いていることから、彼の時代にはまだエピオルニスは生存していたようだ。
 またマダガスカルのフランス人総督も、1650年代にエピオルニスらしい巨鳥を記録しているので、この頃までは辛うじて生き残っていた可能性が高い。
 しかしその後は、記録からも消える。不確かだが1840年頃まで生存していたとする説もあるが、この説は採用しがたい。今日、エピオルニスはマダガスカル島各地で巨大な骨を残すだけだ。
 生き残っていれば、せめてそれを観るためだけでもマダガスカル島に行きたいところだが。

昨年の今日の日記:「NHK-Eテレの『地球ドラマチック――洞窟に眠る新種の人類』で触発される謎の多くと宝庫への希望」






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Last updated  2017.10.08 05:33:35



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