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カテゴリ:農業
自然農を実践している人が、必ず読んでいる本。
それは、福岡正信氏のこの本です。 この本によると、自然農とは、「耕さず、無農薬、無肥料、草や虫を敵とせず、自然の理に沿った農」ということになります。 *自然農法:自然農を実践するための方法論 自然農:自然と共生をする農業哲学のこと 「耕さない」には「無肥料」が前提となります。 自然の状態で、栄養がある土は、有機質がたっぷりふくまれていて、土壌中の微生物によって土がふかふかになっています。 見栄えを良くするために農薬を使うと、土中の微生物も殺すこともあり、結果として栄養が損なわれ、化学肥料に頼ることになります。 化学肥料は栄養が雨で流されてしまいやすく、また微生物が活動しにくいので、土は固くなり、耕す必要がでてきます。 そのため、大型機械を使って深く耕すと、ふたたび土の中の生態系が壊され、微生物のバランスが崩れ、さらに栄養を作り出す能力が落ちる上、その重さゆえ、より土を固くしてしまいます。 栄養がたりないので、化学肥料を足す、、、悪循環が始まります。 慣行農業を実践する農家は、化学肥料を使わないと作物はできないと言いますが、確かに、一度化学合成農薬と化学肥料を使う農業を始めてしまうと、その循環を断ち切るのは困難です。 化学肥料を使わないと、植物は自分で必要な栄養を吸収するために、深く広く根を張ろうとします。 そのため、雑草に負けずに成長できます。 また、富栄養よりも、貧栄養の方が、小ぶりでも栄養価が高くなり、味が濃いだけでなく、栄養分が濃くなると、外敵から身を守る効果もあるので、必然的に農薬を使わなくても、栽培できるのです。 (山菜を思い出してください。味が濃く、虫もついていませんよね?) 雑草も、刈り取って、その場に捨てると栄養になりますし、マルチの役割にもなります。 (栽培するものによっては、まったく刈り取らない場合もあります。) 野菜の成長とともに、再び雑草も生えてきますが、雑草があるから、虫も野菜だけを食べようとしたりしません。 そして、草があると、植生が豊かになり、集まる生物の数も増え、害虫に対する天敵(昆虫・鳥・蜘蛛等)も集まってきます。 そのように生態系のバランスが取れると、人間が手を出さなくても、作物は実るようになるそうです。 著者の福岡氏は、自然を観察して、この理にたどり着きました。 天然の枇杷やかんきつ類、柿や栗が何もしなくて豊作になるのだし、おいしい山菜も手入れをしなくても毎年ちゃんと生えてくるのだから、自然にまかせておいても、その土地にあったものなら、、、単一作物だけ育てようとしなければ、、、大丈夫。 自然農では、冬にトマトを作ったり、とうもろこしだけ何ヘクタールも作ったりしません。 その点では、マクロビオティックを実践する人に、自然農を理解したり実践する人が多いのは納得がいきますが、一般農家には受けないというのもわかります。 しかし、家庭菜園で実践するのにはむいていそうです。 特に、週末菜園のように、手間をかけられない方には。。。 また、自然農で混植すると、連作障害がないそうです。 自然界には連作障害は存在しないですものね。 実は、福岡氏の著書は各国語に訳されたため、日本で自然農をしている人よりも、外国で自然農を実践している農家の方が多いのです。 外国で、「Mr. FUKUOKAを知っているか?」と聞かれたら、福岡正信氏のことです。 日本では、すでに化学肥料や化学合成農薬を使用する慣行農法が確立されていて、自然農法の入り込む余地がありませんでしたが、外国では、まだ、選択の余地があったからです。 有機農法と自然農法の大きな違いは、有機農法は、「耕すこと、肥料が必要、農薬は安全な天然由来のもので」という考えなので、どちらかというと、慣行農法の延長線上であるということです。 慣行農法の危険性に気がついたから出てきた、有機農法。 自然農では、雑草がない・虫がつかない、というのは不自然である、という認識に基づいていて、除草や駆除はしない方が良い、と考えています。 耕さない、除草や駆除をしなければ、自然の山や森と同じように、何もしなくても実りができる、という考えです。 だから、有機農法と自然農法では、まったく発想が異なるのです。 そして、できる作物の性質も大きくことなります。 そのことについては、「なぜ葉物は湯でこぼすのか」の話の時に詳しく説明します。 慣行農法が西洋医学における対症療法だとすると、有機農法は漢方薬、自然農法は、自然治癒力を高めるために毎日の食事を気をつけること(食事療法)ということになるでしょうか。 慣行農法は、石油に依存した農法です。 また、生産するために、生態系を破壊するだけでなく、大量の農業廃棄物を出します。 より安く、より見栄えのよいものを求めたために、味が薄く栄養価の低い野菜が大量生産されるようになりました。 健康、環境への配慮を考えると、LOHASと相容れない農法になります。 有機農法も、かかる労力を考えると、より環境に優しく、安全で栄養価の高い農産物を生産しているとしても、大型機械を利用したり、農業資材を利用しないと経営的には難しいそうです。 自然農法は、究極の「持続性」を持った農法ですが、慣行農法から転向するためには、土地から農薬が抜け、自然の力で土力を回復するまで待つには、とても時間がかかります。 そして、手を加えない、、、というのは、思うより大変なことです。 病気の子どもを前に、自然治癒力を信じて薬をあたえないというのは、とても勇気のいることです。 それは信念だけでなく、本当に見極めるだけの、知識と、観察力と、判断力がないとできないことです。 そうではあっても、作物ならやり直しがききます。 せめて「家庭菜園なら、自然農」という考えが広まると嬉しいですね。 自然農に興味があるが、難しい理論はちょっと、、、という方には、福岡氏の考えをもとに、独自に自然農を追究している川口由一氏の本をおすすめします。 私はこの本を先に読みましたが、実践が中心、対談もあり、とても読みやすいのに、自然農の本質がよくわかりました。 慣行農法をして自身の体調を崩し、周りの偏見の目に耐えて、無収穫の何年もの間を耐えて確立した、人間と自然に優しい自然農法。 淡々とした語り口の中に、その芯の強さがうかがわれます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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