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カテゴリ:農業
農薬の話を書こうと思ってから20日もすぎてしまいました。
農薬肯定派や農薬を使わなくては生計がたたない慣行農家の方の意見や、農薬を拒絶する消費者を嘲笑するような専門家の意見、、、自分と反対の立場の方の意見をたくさん聞いてから記事にしたいと思って、毎日勉強をしていたのですが、調べれば調べるほど憂鬱に。。。 価値観の違いの問題にしてしまうことで、本質をうやむやにしないように気をつけて、この重いテーマを扱うことにします。 農薬に私がなぜ反対するのか。。。 そもそもの発端は、中学時代、社会科の先生が、教室に持ってきた1本のバナナでした。 特売では、1房10本で200円以下で売られることもあったバナナ。 そのバナナはプランテーションという場所で栽培され、生産している農民は1房あたり、2円の収入もない、、、 その上、多くの農薬により健康を蝕まれている。。。 それらの農園で使用されている農薬は、先進国では使用を禁止されている毒性の高いものである。。。 さらに、輸出中に虫がつかないように、殺菌やポストハーベストを使用。。。 プランテーション栽培の問題点やポストハーベストに関してもいずれお話する予定ですが、まずは今日から何回かにわけて、農薬の本当の問題点について一緒に考えていただきたいと思います。 さて、今日は、クイズの答えに関するお話をすることにします。 危険性が証明され、製造・販売・使用が禁止された農薬、、、 その農薬はいったいどうなったのでしょうか? メーカーの都合(売れ行きが悪い等)で登録が更新されなかった、登録失効農薬や有効期限切れ農薬ならば、そのまま使用しても罰則はありません。 *登録失効してから危険性がわかったものに関しては、禁止農薬になるために、使用することは禁止されます。 有効期限が切れた農薬の場合、化学変化がすすみ、農薬の性質が変化し、より有毒になることもあります。 また、長期間放置された使用期限切れの農薬が夏場の高温で発火する事件もおきています。 しかし、残農薬の処分は農家に任されています。 農家は、廃棄処理業者にお金を払って処分してもらわなくてはいけません。。。 禁止農薬に関しても、全てが回収処分の対象になるわけではありません。 そこで疑問がでてくるのです。 いったいどれだけの農家が、本当にお金を払って処分しているのだろうか? 残農薬の実態は把握されているのだろうか? メーカーで抱えてしまった在庫はどう処分されるのだろうか? 廃棄処理業者は適切に処分しているのだろうか? 1.廃棄処分 昭和46年に、残留性有機塩素系農薬(DDT、BHC、アルドリン、ディルドリン、エンドリン)が禁止されたあと、政府の指導で、全国174箇所に、総数量約3680tが埋設処分されました。 これらは特定できた数値だけです。 現実にはこれよりも多い量の農薬が、処分されたのですが、どのように処分されたのか、その実態は把握されていません。 問題は、ドラム缶に入れられて土中に埋設されたものを掘り返してみたところ、「ドラム缶が空になっていた」ということです。 つまり、ドラム缶の中身は環境中に放出されたということです。 土壌汚染、水質汚染、、、しかし特定されている廃棄場所に関しては混乱をさけるために非公開となっています。 廃棄場所の上に住宅が建っていることもあるからだそうです。 農薬の中には、焼却処分をするとダイオキシンや有毒ガスを排出するものもあるので、農家による野焼きは禁止されています。 しかし、処理業者にお金を払って処分をせずに、川や古井戸に中身を捨てて、容器を山に捨てる農家もいます。(農家の方による伝聞) 中身も危険ですが、容器も危険です。 希釈前の農薬が付着しているため、手袋を着用しないで触れたら、かぶれたり火傷をすることもあります。 現在、農薬は適正に廃棄処分されているかどうか、、、 実は、農薬をどのように廃棄処分すべきかについては、まだ解決されていません。 参考:埋設POPs系農薬のその後 *POPs系農薬:人や環境への毒性、難分解性、生物濃縮性、長距離移動性の性質を有しているとして、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(通称POPs条約:2001年5月採択)で製造・使用が原則禁止された化学物質 2.使用継続 禁止農薬が残留農薬として検出されることがあります。 禁止された農薬というのは、効き目が強いことが特徴です。 高いお金をかけて買った、効果の高い農薬。。。 禁止されたからといって、高い処理費を負担して業者に処理してもらうより、ばれないことに賭けて使用した方がメリットがあると考える人がいても不思議はありません。 *禁止農薬は残留性が高いので禁止されているのですが、土壌に残留していたために、禁止農薬を使用していなくても残留農薬として検出されることもあるそうです。。。 また、除草剤などは、検出されないように、作物の栽培地ではない場所の除草に使われることもあります。 いずれにしろ、土壌を汚染することには変わりません。 気になるのは、古い農薬は分解すると、もとのものよりも有害な代謝物が生成することがあるので、そのような危険性を考慮せず、処分に困って使用される農薬の害を防ぐためにも、未使用・残農薬の回収・適正処分をメーカーが無料でする必要があると思います。 3.保管 高い処分費用を払って処分するのはちょっと、、、 と思って、農薬保管庫や農作業舎にやむ得ず、使えなくなった農薬を保管している生産者も沢山います。 保管中に火災が起きたり、何者かに持ち去られたり、世代が変わって、間違って使用されてしまったり、、、 農家がどの農薬をどのぐらい保管しているかについての実態把握がされていないため、犯罪に利用される危険が高くなります。 3.援助物資として輸出 これが一番問題があると思われます。 発展途上国への援助物資として、日本からは農薬が送られてくるのは有名な話でした。 それも、日本で使用が禁止された農薬が。。。 技術がなく、使用方法もわからず、また、運搬のルートもなく、農民へ渡されることの無かったそれらの農薬のほとんどが未使用のまま放置されています。 オブソレート(期限切れ)農薬の処理は、別のODAで資金を調達して行うしかありません。 1kgあたりの農薬を処分するのにかかるのは約3ドル。 しかし、焼却する方法も、コンクリートで囲って埋設する方法も、現地の住民の反対があって、すすんでいません。 その間にも、保管状況が悪いためにもれ出た農薬の影響で、水質が汚染され、健康被害も起こりました。 それでも、日本からの農薬の援助は行われました。 2002年には食料増産援助の見直しが行われ、農薬援助は原則行われないことになりました。 2004年2月24日にPIC条約(国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約)が発効し、相手国の不利益を防ぐ規則が定められましたが、それまでは野放しであったため、発展途上国は、先進国で禁止された農薬の実質的な廃棄処分場になっていたと考えることができます。 ODAには私達の税金が使われています。 その税金が無駄になっているだけでなく、他の国の人の健康を蝕場婿とに使われている、、、 さらに、その禁止農薬を使って栽培した農産物は日本に輸入されて、、、 喜んでいるのは、競争入札を実施しない随意契約によって利益を得ることができた一部の業者だけです。 (食料増産援助のうち肥料に関しては、1998年12月31日朝日新聞の調べで、競争入札に談合が繰り返されていたことがわかっています。談合によって得られた利益は、t換算で、肥料の通常民間貿易の30倍以上になったそうです。) 実際に援助された農薬が使用されている地域でも、熱帯地域では、防御服やマスクの着用をしないまま使用されているため、健康被害が起きていました。 参考:食糧増産援助を問うネットワーク 農薬の最終処分、、、この問題が解決されていないということは、農薬の非常に大きな問題の1つだと思い、シリーズの最初に取り上げることにしました。 次回は、残留農薬の問題についてのお話をしようと思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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