山田理沙のカナダ看護活動日誌。

今週末は、月曜のシビックデーを合わせてのロングウィークエンド。週末は病院全体がのんびりしていて、週末勤務者として、その雰囲気は好きなんだけど、あらゆる部門がお休みでオンコールがある部門も対応が緩慢なのがいただけない。土、日の間「週末だから月曜日まで待たないと・・・」と言うだけでも、結構ストレスなのに、ロングウィークエンドの時は、これがさらに火曜日まで・・・で、ストレス倍増。

今週末の担当は、５月末に癌のため、肺葉切除術を受けたまま、様々な合併症を起こし、未だ人工呼吸器からの離脱ができず、気管カニューレの挿入がされて久しいルエストさん（仮名）。先月半ばまでは、離脱訓練で24時間の成功を収め、昼間は理学療法士とともに廊下まで歩行器を使って歩くこともできた、と言う、夜勤のアンドレア（仮名）からの申し送りが信じられない程に衰弱の態を示されている。調子が良かったのに、突然、血圧低下を来たし、それ以来、昇圧剤の点滴常用、人工呼吸器離脱訓練の際に胸痛を訴えられるようになり、訓練がすっかり中断されてしまったとのこと。心電図の結果はいつも陰性。

それでも、術中、術後に心筋梗塞を起こされている既往もあって、心エコーなどの検査が実施された結果、左心房機能の低下が見られ、関連の循環器施設にまわされ、心臓カテーテル検査が行われたが、いたって正常。「心臓が離脱困難の原因とは考えられない」と言うコメント付きで帰院されている。

明らかな原因が不明のまま、とりあえず、自力で循環維持ができるように、昇圧剤の必要がなくなるように、と、強心系の点滴が追加されたのが昨日。本日のICU回診で、人工呼吸器離脱訓練を再開することになる。訓練再開の旨を伝えただけで、パニック様の表情を見せるルエストさん。抗不安剤を投薬して、訓練開始。まずはできるところまで。前回は10分でギブアップだったため、目標は30分間。ところが、抗不安剤が効いたのか、時々うとうとされながら45分が経過。呼吸数が上がっているため、大事をとって、ここで一旦休止。もともと血ガスの結果は芳しくなかったが、訓練中の血ガスもさほど変化なし。午後にさらに45分ほど訓練をするが、息子さんの面会中だからか、１度目に比べて、随分リラックスされている様子。

訓練以外は、疲労感100％で、ルエストさんがウトウトされていたため、静かな一日となるはずなのだが、お隣の相棒、ビル（仮名）が大忙し。朝一で重症腸炎の患者さんの入院受け入れの後は、文字通りノンストップ。もともと血液腫瘍科の免疫不全の患者さんで、クロストリジウム・ディフィシル（C－Diff）に感染し、大腸の壊死が疑われるため、病棟から付き添って来た医師が大腸カメラを施行してすぐに手術室に連れて行くようにがなり立てているのだが、週末で大腸カメラをする医師と機材がすぐには揃わない、云々で、また週末の弊害を体験するはめに。ICU医師が比較的捕まえやすい麻酔科と外科の医師を呼び出し、診察を依頼するとともに、各課に働きかけて消化器医師とカメラの準備ができたのが午後、結果、重度の腸炎だが、壊死は起こしていないため、緊急手術の適応ではないとの診断となる。

白血球も急上昇し、発熱、頻脈などが続いている、呼吸不全も著明であるが、敗血症ショックを起こされているにしては、十分な血圧を保たれている。心電図も洞性頻脈と心室細動を行ったり来たりで、心室細動研究薬が開始され、その他にも心拍数をコントロールする試みが続くが、劇的な効果は見られず、深刻な状況が続く。各種ラインの挿入や検査、心配されるご家族などで、常に満室御礼状態のまま一日が終了。お手伝いの私がホトホト疲れちゃったので、担当だったビルの疲労は言うまでもなし。「ロングウィークエンドって、休みの人にとったらあっという間だろうね。でも勤務してたらほんとに『ロング』だよね・・・」とビル。「そうだよね」と私。お互い３蓮ちゃん日勤の一日目が終了したばかりである。