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[Stockholm syndrome]...be no-w-here

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2022.08.02
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カテゴリ:宝塚
これは本編とは何の関係も無い話だが、物語の序盤で鳳月杏が演じるトム・ブキャナンが「価値も解らずヨーロッパの美術品を買い漁っている」と歌うのを聞いて、宙組【神々の土地】で真風涼帆が演じるロシアの貴族フェリックス・ユスポフが「アメリカ人は芸術の価値も分からない連中だ」と馬鹿にしていたのを思い出した。
(ロシア革命後、アメリカに亡命したユスポフは、彼らを相手に偽物の美術品を売り付けていた)
『アメリカの貴族』は新曲らしいので、真風と鳳月が同じ92期という事で小池修一郎が遊び心でこの歌詞にしたのだろうか。
何れにしろ、素敵な巡り合わせだ。

そう言えば、花組【巡礼の年】の感想で「小柳奈穂子と生田大和は2人で何か話し合って、演出を考えたのだろうか?」と書いたが、先日の『カフェブレイク』で星組の天華えまが「稽古中に、たまたまそこにいた生田大和先生から役作りのアドバイスを貰った」と言うのを聞いて、もしかすると僕の妄想は正解だったのかも知れないと嬉しくなった。
舞台を長く観続けていると、こうしたマニアックな楽しみ方ができるようになるのも、宝塚の醍醐味の一つだろう。
(ぴーすけ、ありがとう!!)



ギャツビーが愛する女性デイジーを妻にし、ウィルソンが愛する女性マートルを愛人にするトムは、一見するとこの物語で最も裁かれるべき男のように映る。
しかし、冷静に見れば彼の罪らしい罪は「浮気」程度で、態度が横柄で女癖の悪い金持ちはどこにでもいる。
妻を誘惑するギャツビーに腹を立てる気持ちも、一般的な男性なら皆似たようなものだろう。

また、「自分が幸せになれないのは旦那のせい、国のせい」と言って、家庭の外に捌け口を求めようとするデイジーやマートルのような女性も、世間には大勢いる。
ニックも至って普通の青年だ。
誰もが皆、「俗物」ではあっても「悪人」ではない。

寧ろ、誰よりも純粋で一途なギャツビーの方が、社会的には最も裁かれるべき立場にいる、というのが本作の面白い所である。
また、どれだけ富や名声を手に入れようと求めるものはデイジーただ1人という、彼の一点の迷いの無さも、僕達一般人の感覚からすれば驚きだろう。
そして、物語が人間の「悪意」ではなく、人間の思惑を超えた「不運」の交差によって展開する事も、観る側には勿論、演じる側にも色々と考えさせる要素になっているのかなと感じた。
公演プログラムで、これだけ演者が役作りの難しさを口にしている作品も珍しいのではないか。

それだけに本作は、その時々の心の動きによって芝居が変わって来る作品であり、組子達には一公演でも多く舞台で演じさせてあげたいし、ファンには一公演でも多く観劇して色々と感じ取って欲しい作品である。
今日、再び公演中止の延期が発表されたが、一日も早い再開を祈りたい。

主要キャストの面々は、そんなシンプルだからこそ解釈が難しい物語のキャラクター達を、繊細なバランスで演じていた。
一見、悪人にも感じるトム・ブキャナンが、妻の秘密を一緒に抱えて生きて行こうとする場面は、果たして愛情からなのか自己保身からなのか…。
ここも解釈が分かれる所だと思うが、個人的には小池修一郎の言う「日本的なセンチメント」として捉えた。
公演プログラムを読む限り、鳳月杏もその解釈で演じているように映る。

例えば、僕達は花火大会に行って花火の絢爛豪華さに感動したり話題にする事はあっても、それを打ち上げる花火師に注目したり感謝する事はほとんど無い。
あのパーティに参加していた人達も、ただギャツビーが打ち上げる派手な花火を見に集まって来ただけで、誰もギャツビー自身の事など見てはいなかったのだろう。
そう考えると、あのラストシーンに集まった人達は、少なくとも虚構ではない真実のギャツビーを見てくれた、認めてくれた人達という事になり、たとえ僅かでもギャツビーにとっては救いとなったのではないかと思う。
(デイジーの態度が素っ気ないのは、そこにニック達が居たせいではないかと推察する)



キャストの感想を書こうと思ったのに、結局また解説のような内容になってしまった(笑)。
思った以上に長くなってしまったので、若手や娘役の感想はまた後日に。

ありがとう!!





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Last updated  2022.08.03 19:48:51
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