356286 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

マックの文弊録

マックの文弊録

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
2005.12.13
XML
◇12月13日火曜日:旧暦十一月十二日 辛未; 晴れ
小春日和
い。ボールドフォントで「寒い」と書いて、ついでに飾り文字にしたいほど寒い。
東京の十二月というのは、十一月の延長であって、普通は未だ冬ではない。未だ秋の真っ盛りなのだ。普段の年はそうなのだ。
実際、御茶ノ水駅から幾つもの大学の間を抜けて、靖国通りに至る道の端の銀杏並木が金色に燃え立ったのは、未だつい一週間ほど前の事だ。それが数日前から、急に真冬になった。

寒いと感じるようになった二週間ほど前から、薄いコートを出して、通勤の往還には羽織るようにした。白っぽくて薄く、すこぶる軽いので、結構気に入っているのだけど、ここ二三日はそれでは頼りなくなって、ついに着脱式の背裏を付けた。要するにフリースのちゃんちゃんこのようなものを、半身十個、合計二十個のボタンで本体に取り付けるのだが、これが、順に釦を留めていくのが中々難しくて、必ず一度は釦と釦穴の不整合が起こる。今回もそうだった。大体僕は釦をちゃんと間違えずに留めたり、CDやカセットテープの「包装剥き」というような操作が苦手である。思うように行かなくても、力を入れれば良いというものでもなく、段々背中の肋骨の辺りがこそばゆくなって苛々してくるのだ。

うして苦労して背裏を付けたのだけれど、今朝はそれでも尚頼りないほど風が冷たかった。大陸から優勢な寒気団がわが国上空に入り込んで、北海道は無論のこと、日本列島の日本海側は押しなべて雪だそうだ。今日は鹿児島でも積雪を見たそうだ。日本海側で大雪が降る冬の季節は、関東付近の太平洋側は概ね晴天で空っ風が吹く。夕べ夜遅くに家に帰る道すがら、見上げた十二夜の月は、蒼白く中天に輝いてこれまた如何にも寒そうだった。
それでもこの冬は「長期予報」では暖冬なんだそうだ。

球温暖化というのが色々云われ、人間の活動で排出されるCO2の温室効果の所為で、亜熱帯の毒蜘蛛や色々な病気を媒介する蚊がどんどん北上してわが国にも姿を現し繁殖するようになったとか、南極や北極の氷が溶けていずれ海水面が上昇し・・・というのは、京都議定書以来最近の「常識」だが、僕は本当にそんな風になるんだろうかと、実は懐疑的である。

然はお椀の底のビー玉のような形で安定を取らない。むしろあぶみの背の上に置かれたビー玉のような、実に危ういバランスを取っているのだという気がする。何かのきっかけで、ビー玉が鐙のどちらか偏ると、あとは偏りはどんどん加速されてしまう。この時再び氷河期に向かう確率のほうが高いだろうと、どうしてもそんな気がする。暫く前に、マイクル・クライトンの「恐怖の存在」※1を読んで、いよいよそう思った。

の頭が痛むほどの寒気を突いて足早に歩いていると、何だか精神が昂揚して来て、脈絡もなく青春時代のことを思い出したりする。僕の青春時代というのは、冬枯れの林の中を吹きわたる木枯らしをコートに受けて、樹冠の高さまで舞い上がることができたり、まだ当たり前のように空を飛べた頃だ。但し、僕の場合は飛ぶといっても、足を一歩一歩空中に固定して高度を増し前進するやり方だから、スーパーマンのようにかっこよくはない。それに、いささか忘我の状態に意識して自分を置いておかないと直ぐに地上に落ちてしまうから厄介だ。「意識して忘我の境地に身を置く」というのが、それ自体自己撞着になるのだろうけれど、実際そういうことだからしょうがない。

ういう時に最近読んでフィーリングが合うのが、伊坂幸太郎君という作家である。彼は千葉県出身で東北大学法学部を卒業されそのまま仙台に居ついてしまった、未だ三十路半ばの新進ミステリー作家である。未だ充分に「意識して忘我の境地になれる」お歳なんだと思う。
僕は、殆ど偶然のように本屋で彼の「オーデュボンの祈り」※2に出会い、物言う案山子にはまった。その後彼の作品を漁って、単行本で出版されているものは全て読んでいる。彼の作品には、必ず非日常の光景があるのだけれど、それがごく当たり前のようにプロットに織り込まれている。とにかく登場人物が不思議を日常にしてしまっているのだから、読んでいる方もそういう世界に入っていってしまうのだ。

の本は、最近、「魔王」※3に「砂漠」※4と新作が立て続けに二冊出版された。「魔王」では、十分の一程度までの確率だったら確実に勝ちを当てられる人間が出てくるし、「砂漠」では遠隔操作でものを移動させる力を持つ人間が出てくる。
こういう本が寒い木枯らしの吹く日には似合うのである。
明日ももっと寒いのだそうだ。だから、コートにはマフラーを添えることにしよう。それでも、もう伊坂君の本は読んでしまったから、ギデオン・オリバー君が活躍する最新翻訳物、「骨の島」※5でも読むことにしよう。

※1 「恐怖の存在」(上・下) マイクル・クライトン著 早川書房2005年10月 ISBN: 4152086688
※2 「オ-デュボンの祈り」 伊坂幸太郎著 新潮文庫2003年11月 ISBN: 4101250219 ; (2003/11)
※3「魔王」 伊坂幸太郎著 講談社2005年10月 ISBN: 4062131463
※4「砂漠」 伊坂幸太郎著 実業之日本社2005年12月 ISBN: 4408534846
※5「骨の島」 アーロン・エルキンズ著 早川ミステリー文庫 早川書房2005年10月 ISBN: 4151751041

恐怖の存在オーデュボン











魔王砂漠
骨の島





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005.12.14 01:30:32
コメント(0) | コメントを書く
[乱読耽読閑読積ン読] カテゴリの最新記事


PR

プロフィール

求連帯而懼孤立!

求連帯而懼孤立!

ニューストピックス

カレンダー

バックナンバー

2024.06
2024.05
2024.04
2024.03
2024.02

カテゴリ


© Rakuten Group, Inc.