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マックの文弊録

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2005.12.18
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◇12月18日(日曜日)晴れ:旧暦霜月十七日 丙子;納めの観音

大文字草(紅)う暮れも一気呵成に押し詰まりつつあり、あらあらと云ってる間に今日は「納めの観音」である。
江戸時代には、年に三度の観音様の大市があった。浅草の観音様の縁日は毎月18日だが、特に12月のそれは年の納めの縁日というわけで、師走の17日と18日は「歳の市」といわれ大いに賑わったのである。この日、武家や大店では、家来や奉公人に用心籠や長持ちをかつがせては大挙して浅草にくり込み、贔屓の店で買い物をし、帰りに料理屋で威勢をつけるのが慣わしだったという。当時の人たちはこうして、新しい年を迎える気分を盛り上げていったのだ。

れにしても寒い。この何日かずぅーっと寒い。もう無闇と寒い。
このところ、日本列島の上には大陸からの寒気団が執拗に居座っていて、方々で雪が降っている。首都圏地方は、冬型の気圧配置の下では大抵は晴れるしくみになっていて、今回も例外ではない。北陸や東北地方での大雪のニュースを尻目に晴れっぱなしだ。
列島を日本海側から太平洋側に渡って来る間に、寒気団に含まれた水分は雪になって地上に還元されてしまうから、首都圏地方には湿気を濾し取られた乾いた空気がやってくる。しかし寒さは変らない。雪国の、あの骨の髄に沁みるような寒さではないが、その代わり肌がかさつく寒さである。鼻は乾き、涙は出る。お付き合いでアルコールを体内に入れても、お店を出れば冷や水を浴びせられたようで、すぐに吾に返ってしまう。勿体無いことおびただしい。
それでも、気象庁は「長期予報では暖冬です」などと、かつてそう発表してしまった手前頑張っているが、さてどうなることやら。最近の河豚と天気予報は当たらなくなった。

寒波の襲来だろうが、納めの観音だと周りが浮かれていようが、こちとらしがない創業社長としては、相変わらず事業資金の調達に奔走中である。資本主義の世の中、事業の成否は技術が優れているとか、識見豊かとか、社長の人柄が良いという理由などには一向に左右されるものではない。事業資金を途切れることなく還流させて、波頭に身を置き続けることのみが成功の鍵である。
特にITの世界は、歴史も浅く、変化も目まぐるしいだけ余計に、お金を持っている人は商売の中身など分からないし、新進の事業家は恒常的にお金がないというのが一般の図式である。だから、事業資金の調達を巡る彼我の攻防はいささか「コン・ゲーム」の様相を呈する。

ン・ゲームというのは、利害相対する者同士が、知力を尽くして策略を仕掛けあい、虚虚実実、勝敗が二転三転する駆け引きのことで、小説や映画のジャンルの一つになっている。元々はConfidence Manから来ている言葉だが、これは直訳すれば「自信家」ということになる。これが「自信家」→「如何にも自信ありげに振舞う人」→「ペテン師」→「詐欺師」となって、コン・ゲームはそういう連中がしのぎを削る「騙し合いゲーム」という意味になった。無論アメリカでの造語だ。
コン・ゲームの映画といえば、「スティング」というのが有名で、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードのコン・マン振りは胸のすくほど愉快だった記憶がある。

うずっと以前になるが、仕事で或る電機メーカーの工場を訪れた時のこと。設定してくれた工場の見学に際して、何重ものチェックを経なければラインの現場に入れない仕組みに驚いたことがある。今では個人情報保護法の施行の影響もあって、ちょっとした会社でもエスコートが居なければ、或いは然るべき手続きを踏まなければ、オフィス内に入れないのが常識になってしまった。しかし上記は、未だセキュリティなどという言葉すら余り一般には使われなかった頃のことだ。侵入社員
案内についてくれた人に、「随分厳重な機密保持対策がとられてますね。余程重要なノウ・ハウが内部にはあるんでしょうね。」と云ったら、件の紳士は「何、何の秘密もないことを隠すために、これだけのガードをしてるんですよ。」と苦笑交じりにおっしゃった。無論冗談ではあったろうが、「なるほど、秘密がないことも秘密になり得るんだ。」と感心したものだ。
これも、コン・ゲームの一端ではあろうが、実際のビジネスの世界ではこんなものが児戯に見えるほどの状況であろう事は、最近何となく背骨の両脇あたりの神経で感じるようになってきた。
最近手にした「侵入社員」※1という本も、IT分野でのコン・ゲームがテーマだったが、原題が「PARANOIA」というのは、まことに当を得て妙である。


も折、昔の友人から「やっと自分の作品を上梓しました」というご案内のメールを戴いた。
彼は半導体の分野でのエンジニアとしてキャリアを積んだ後、1997年に転じてミステリー作家を志された。そしてこの師走に最初の小説を出版されたのである。
僕とは、彼の子供時代に家が隣同士だった程度のお付き合いだが、当時から都会の匂いを漂わせた、白皙の美少年であった。
当事者ならずして、「敢えて糊口の途を捨て、小説家を志して苦節八年・・・」などと陳腐なことを言えるはずも無い。それに、彼のことだ、他人には苦難に思えるときでも、軽妙・スマートに処して来られたのであろうと拝察する。それでも、今年の春に或る小説大賞の優秀賞を授与され、作品の上梓が決定した時のメールには、「嬉しい、本当に!」と喜びの気持ちが文面で踊っていた。

覇者の標的今回の出版には、僕も心の底からお祝いを申し上げる。大ちゃんおめでとう!乾杯!
彼のペンネームは阿川大樹。出版されたばかりの本は「覇者の標的」※2という。受賞した作品のもともとの表題は「スピリット・オブ・サイエンス」といい、IT(半導体)分野での新技術の開発と起業にかけたエンジニアの心意気を描いた話だという。これから暫くは通勤電車での楽しみになってくれると思う。


※1: 「侵入社員」上・下 フィンダー・ジョゼフ著 石田善彦訳 新潮文庫 2005年11月ISBN:4102164138

※2: 「覇者の標的」 阿川大樹著 ダイヤモンド社 2005年12月 ISBN:4478930740
阿川大樹氏のホームページは、http://www.asahi-net.or.jp/~dr4t-ogw/






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最終更新日  2005.12.18 16:41:08
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