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カテゴリ:やっぱりトルコが好きな私
午前11時、キュタヒヤの絵付け職人ムラディエさんとエミニョニュのエジプシャン・バザールの緑陰チャイ・バフチェシで会う。 ある日本女性から結婚の引き出物にする絵入りタイルを頼まれて、彼女に注文を出したのである。 ムラディエさんの作風は女性ながら潔い性格を反映して味わい深い。仕事も丁寧だ。用事が済んだ後、買い物客でごった返すマフムット・パシャを抜けてグランド・バザールまで坂道を登っていった。 日本にある、さる機関に頼まれて先週に続き、今度はグランド・バザール内の飲食関係の店の写真を撮りに行ったのである。 約2時間半かけてカフェ、ドネル屋、ロカンタ(軽食堂)、レストランなど20軒近くの写真を撮らせて貰い、帰りがけにヌルオスマニエ門のそばにある公衆トイレに立ち寄った。 女性用の列に並んでいると、日本人ツーリスト、年恰好から私と同年代とおぼしき2人連れがすぐあとについた。 「いくらなの」と2人でそれぞれの財布の中をまさぐっている。少し離れたところで待っている彼女らのグループから、オヤジが1人「50だよ」と大声で言った。 「50だってさ、変な国よね、トイレに入るのにいちいちお金がいるんだから」 「あの~、トイレ料金、ここは65クルシュですよ。ほら、この額・・・」と私はにこやかに2人に言って、掌にあった50クルシュ、10クルシュ、5クルシュの3枚の硬貨を見せた。 「ええ? 何で?」といぶかしげな2人。 「ご覧になれます? 入り口の窓に65YKRって書いてあるでしょう」 「脇に50って書いてあるじゃないの」 窓には65YKRと50c(ユーロ)の2つの料金表示が出ていた。 「あれはユーロなら50セントという意味で、外人用に表示してあるんですよ」 「じゃ、あたしらも50でいいんじゃないの?」 「ユーロで払うなら、ですよ」 「ええ? なに、それ? あ、そう、もういいですよ、別に。もういいですから、はいはい、ほんとにけっこうですから」 私は日本語で丁寧に話しているんだけどねえ、どうも意味が分からないらしい。 言外にあんたに聞いてないでしょ、おせっかい、とでも言いたげな響きで2人のうちの1人が答えた。で、2人は顔を見合わせ、もう一度ちらりと私の顔を同時に見て、また顔を見合わせた。 「変なのにだまされないように、聞いてみたほうがいいわよ、入り口で」 「そうだわね、50で駄目だって言ったら出せばいいわよね」 そんな声が聞こえてきた。へ? 私だって親切のつもりで声をかけたのに、なんてひどい反応なんだ。これが日本人かい、ほんとうに。怒るべきはこのときだったんだけど・・・ 私が65クルシュ払って窓口を通過すると、次に女の1人が窓口で、 「ディスカウント」といいながら50クルシュ硬貨を出し、真剣な顔で値切っているではないか! うっそ~っ! いや~っ、やめて~、もう! ニッポンの恥だ~。 トイレの掃除と集金をしているおばさんは、ガイドさん並みにしょっちゅうグランド・バザールにやってくる私とは顔なじみである。 とても働き者でいつも暇を見てはまめに掃除しているが、口数の少ない、悪く言えば無愛想な人で、むっつりと一言「ノー」と言いディスカウントを承知しなかった。2人はしぶしぶ財布を開けて小銭を探し始めた。私は一足先に個室の空いたのに入った。 用を済ませ手を洗っていると、グランド・バザール協会の職員が、おばさんに文句をつけにきた。 「ツーリストに汚いと言われるようでどうする。座っていないでまめに掃除しろ。金を集めるのだけがお前の任務じゃないんだぞ」と大声でおばさんを怒鳴る。 私の怒りはここでやっと爆発した。 普段トルコ語はへたでも、不正に対して文句を言うとき、喧嘩するとき、自分でもびっくりするほど流暢になるのだった。声もでかいし。 「ベイエフェンディ!(男性に対する敬称) 誰が苦情を言うんですか。私はちょくちょくここを利用するけど十分清潔ですよ。バヤン(女性のこと)もちゃんと汚れないうちに掃除していますよ。私が証言してもいいですよ!」 職員が「あのグループだ」と言う。例の日本人グループである。女性ガイドが「トルコ汚いすいません、遅れてるすいません」と謝っている。 私は言った。「私、いつも利用するものですけど、ここのトイレ、別に汚くはありませんよ」 トイレ代値切るほうがよっぽど恥ずかしいよ、私から見れば・・・と続けてやればよかったよ、ケシケ。 なお、クルシュとは正式にはイェニ・クルシュ、かつてリラよりも下の単位として存在していましたが、十数年前、余りのインフレに自然消滅、去年1月1日からYTL(イェニ・テュルク・リラス=新トルコ・リラ)の下の単位として復活しました。100イェニ・クルシュで1YTL、言うなれば65クルシュは0.65YTLです。イェニは新という意味なので、日常会話のときは省略しても支障はありません) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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