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カテゴリ:これでいいのか、トルコ
【8月25日・月曜日】 わが家周辺の猫達には、日に一度夕方、キャットフードを所定の餌場で与えているが、地面にじかに撒くとあとが汚れるので、雑貨屋からプラスチック製の植木鉢の受け皿を買い、それを餌皿に使っている。しかも毎週土曜か日曜には周辺や裏庭を掃除し、皿も全部家に持ち帰って洗ってやっている。 ところが、この皿がしばしば足りなくなるのである。一度に最低15~6匹は食べに来るので、皿は7枚から8枚用意しているのだが、ひどいときにはいっぺんに全部なくなってしまったりする。 外猫達の餌場。お腹がいっぱいになった第一陣の猫達が引き揚げたあと。 このあとまた、遅れてやってきた猫達が食べていく。 清潔に保つにはなかなかたいへんである。水の容器も誰かがすぐ壊す。 6月に盗まれたときは、わが家に滞在中だったたまえさんが市場で3枚買って補給してくれたが、またほどなくそれも消えてなくなり、私はその後2回に分けて6枚を補給した。 本日朝、また3枚が忽然と消えていた。夕べ洗ったばかりのまだ新しい皿である。 午後から、わが家を訪ねてくれた友人のマミヤさんと、グランド・バザールに行くつもりで、トプハーネ駅に降りる途中、うちから100メートルくらい下の横道の角で、私の使っていたものと思しき茶色の皿を見つけた。 寄ってみると、紛れもなくうちのものだった。牛乳やパンくずが入っていた。 「ちょっと聞きたいんだけど、このお皿持って来た子はだあれ?」 その辺にたむろしていた子供達に聞くと、中の1人がアフメットだよ、と答え、中学生らしい男の子を呼んだ。 「アフメット、この皿はうちの猫達のものよ。どうして断りもなしに持ってきたの? それじゃあ、泥棒と同じでしょ?」 「泥棒なんかしていないや。おばさん、俺はこのソカクの猫を面倒見ているんだ。皿が必要なんだよ」 「わかった、猫の面倒を見るのはいいことだけど、それだったら自分のお金で皿を買ってやらなきゃいけないよ」 「どうして? あすこにいっぱい置いてあるから持ってきただけだよ」 「捨ててあるんじゃないのよ。毎晩あそこで猫達が餌を食べるの。そのための皿だし、あの場所はうちのアパルトマンの敷地なのだから、そこから黙って持ってくれば泥棒したことになるじゃないの」 通りの古道具屋の主人らしい男が騒ぎを聞いて顔を出した。 「いいじゃないか、皿ぐらい。この子達は猫の面倒を見てやっているんだ」 「そうじゃないでしょう、あなた。猫を可愛がるのはいいけど、他人のものを盗むな、と私は教育をしているのよ」 「教育? こんな皿の1枚や2枚でがたがたいうほうがおかしい。子供のしたことじゃないか、え? そうだろ、バヤン。けちなことを言うなよ。おい坊主、ほっとけ、こんなの泥棒のうちには入らない」 えええ、お前はイスラーム教徒だろう! 子供を育てるおとながそんなふうでどうするんだ! だからトルコは駄目だと言われるんだ! 私は皿に残っていた牛乳とパンくずを捨て、マミヤさんが出してくれたビニール袋に入れてそのままグランド・バザールに向かった。 いろいろ用事を済ませたのち、シルケジでマミヤさんと別れ、トラムワイで帰ってきたが、同じ場所にまた茶色の皿が置いてあったので見るとこれもうちのだった。 道端に座ってアイスを舐めていた10歳くらいの女の子に、「これはうちの猫達の皿だから持って帰るよ。あとでアフメット達が聞いたらそう言っておいてね」と頼んだ。 私が歩き出すと、向かい側の窓から「なんて言ったんだい?」と聞く女の声がした。 「自分ちのだから持って帰るって」と女の子。 「へえ、よくよくジムリ(けち)なんだな、あのヤバンジュ(外人)は」 あーあ、うちから100メートル下がったこの一帯はもう、こんな無知な人間達の住むところなのか、と私はとことん嘆かわしく思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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