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カテゴリ:食べ物シリーズ
【10月8日・水曜日】 お客さんを部屋に招き入れてもテーブルの上にはまだ、食膳の支度が何一つ出来ていなかったが、千沙子さんは呆れた風もなく、ニコニコしながら持参した袋の中から、きれいな九谷焼の中位の鉢を取り出した。 それは、トルコ人が捨ててしまうカブの葉と、おととい私が縁(ゆかり)さんから受け取ったあとすぐに千沙子さんに手渡した貴重な豆腐を潰して炒めてくれたもので、その他にビールを2缶買ってきてくれたのだった。 私はキョイビベル(ししとう)を火にかけ、焼き上がって少し冷めたところで、千沙子さんにその皮をむいて貰う間に、あたふたと平茸、水で戻した昆布、ニンジン、ししとうなどを刻み、大きめなシーチキン(ツナ缶)を一缶全部投入しておからを炒め、やや甘めに煮たのだった。 そして、千沙子さんの剥いてくれたししとうを、甘めの三杯酢に浸しておかずが二品出来た。それに、私の方も昨日貰ったカブの葉を使って、夕べ重石を置いて塩や昆布だしをたっぷり振り、柚子の皮の干したものや、紫蘇の実などを入れて作った塩漬けが食べごろになっていたので食卓に出した。 お持たせのビールで乾杯しようとすると、タマオ検査官が例によってテーブルに飛び乗った。動物のいる暮らしはまあ、こんな風に油断はできないが、家族同様の存在で本当に癒される。 タマオの目が、青色発光ダイオードを使っていないのに青く光ってますね、ピカー! 左から千沙子さんの豆腐・カブの葉炒め、ししとう三杯酢、カブの葉の塩漬け、おからの煮物 ほっそりとした千沙子さんに、この錆朱のニットがとてもお似合い。 私の大昔の手書きの原稿を見せようとしたらオグリがやってきて・・・ や~ん、お母さんの原稿じゃなくて、やっぱり狙いはこれか! かつて私がビクターを朝晩散歩させていたように、千沙子さんとマモルさん夫妻にも、散歩の欠かせない、ゴールデンレトリバー種の犬、レオ君がいる。 この犬は幾年か前、夫妻の畑のある黒海沿岸の村に捨てられたらしく、車で来て置き去りにされたのか、空腹で人恋しげに畑の近辺にいたのを保護したもので、もしかすると飼い主も捨てたのではなく、はぐれてしまったのではないか、もしこの辺に探しに来たら、と長らく畑の家の方で飼育していたのだそうだ。 しかしながら飼い主が探しているらしい様子もなく、冬場になると畑には滅多に行かなくなるので自分達が飼うことにし、レオと名付けてジハンギルの家に連れ帰り、朝晩散歩をさせるのが日課になったのだそうだ。 トルコの野犬収容所には、雑種ばかりでなく、血統書つきだったのではないか、というような高級犬種がたくさん収容されている。子供の時はめちゃくちゃ可愛がっても、毎日の散歩、大型犬だったら人間よりもお金のかかること必定の餌代、バクム(ケア)、注射だ、検査だと、予定外のお金が出て行くので、面倒くさくなり捨ててしまう飼い主もたくさんいるそうだ。怪我をしたら治療代が惜しくて捨ててしまう人すら・・・ レオ君は千沙子さんとマモルさんに拾われて幸運だと思う。たまにジハンギルで散歩中にばったり出会うこともあるが、大事にされているレオ君は毛もふさふさと艶があり、とても従順なきれいな犬である。 7時半から始まる予定だった私達の一日遅れのバイラムは、5階のアイシェさんの家の不始末で、ゴミ袋の汚水が階段を伝って階下まで流れて来るという、そしてアパルトマン中が腐臭で充満してしまう騒ぎで、私の食事の支度にとりかかるのが小一時間も遅くなってしまったが、千沙子さんとは話も弾み楽しく過ごした。 食後のデザートは、千沙子さんの焼いて来てくれたバナナクリーム入りの甘いロールケーキを食べ、コーヒーを飲みながら11時半まで続いた。 今年のバイラムは3日続けてお客さんがあったので、我ながら張り切っていろいろな料理を拵えたし、楽しくて印象の深いバイラムとなった。 明日はまた、今度はゼイティン・ブルヌよりずっと手前のチャパという地区にあるという、ディスカウント・ショップの棚に、果たしてちょうどいい丼があるのかないのか、それを見に出かける。 おいおい、自分。 リフォームのあとは、すべてのボランティアとそれから派生する仕事は断って、連日、家を整理整頓して、一日も早く書き物や翻訳仕事の環境を整えることに専念するんじゃなかったんだっけ? そうだったわよねえ。どうして私はこういうことを簡単に引き受けてしまうんだろう。 もうやらない、家の片付けに専念する、とついこの間も決意したのに、鶏みたいに、3歩歩くともう忘れてしまうタチなのかな。笑うしかないわ~、もうぉ。 アントニーナ・アウグスタ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014年10月11日 22時13分23秒
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