まひまひのひつまぶし　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　～フラメンコも踊るIDDM～

コメントのレスを書きながら、1つこのスペイン旅行の小さなエピソードを
思い出したので、ふる～い記憶を呼び起こしながら書いてみよう。

トレドで迷ったくだりを前回書いたが、実は迷う前に1つ面倒な出来事があったのだ。

トレドの都に向かって、えっちらおっちら45度かよってくらいキッツイ坂を
登っていると、坂の上にニヤニヤ（ニコニコ？）笑ってる男が見えてきた。

なんか・・あの人、私の事見て笑ってる？なに？私どっか変？
まぁそりゃまともだとは言わないよ？アキバ系のバックパックに裏地がほつれた
オンボロコート着て、ダビンチ空港で締め出されて数時間後にはナプキン探しでさまよって
数年後にはIDDMなんておかしな病気を発症する予定だからね、まぁ笑われても仕方ないよね。

「へろー！」

男が気さくに声をかけてきた。
イラン系？の黒髪クリクリ天然パーマに、それ柄ですか？ってくらいペンキまみれの
変な作業着。ペンキ屋稼業の昼休憩中だろうか・・変なのが寄ってきたな。

「へろー」

怖い人だったら怖いので、とりあえず笑顔で返す。

どっから来たの？いつまでいるの？スペイン初めて？年いくつ？
などと、お世辞にもうまいとは言えない英語で色々話しかけてくる。めんどくせーなー

つかさ、こっちは今45度の坂道を登りきったところでゼーゼーなのよ・・
ちょっと静かにしててくれないかな。

「あなた、なに人？」

「僕、エジプト人！」


エジプトかよ！！スペインにまで来て最初に出来たお友達がエジプト人かよ！

名前は忘れた。
なんでエジプト人がスペインの世界遺産でペンキ塗ってんだろ？

「ホテル取ってあるかい？」
「NO」

そうそう、ホテルを予約してないんだよね。
普通の街ならホテルなんて山ほどあるけど、こんな街でホテルなんてそうそう
簡単に取れるのかちょっと心配だったんだわ。

「僕が、あなたホテル案内する」

えーそう？でもなー自分で探すのもちょっと楽しみにしてたんだよねー。
って言ってももし取れなかったらいきなり野宿だから、まー案内してもらってもいいかな。
でもこんな事で恩着せられてもめんどくせーなー

「OK！こっち！かもーん！」

トレドの都の中に入るなり、いきなりホテルに到着。

なんだよ！いきなりホテルあるじゃん！自分で探せばよかった。

ホテルに入ると、エジプト人が受付と何やらスペイン語で話してる。
ちょっとちょっと、何話してんのさ？もしかして、この娘を売り飛ばす予定だから
部屋番号教えといてよとか、日本人は金持ちだから部屋代多くもらって、その分俺に
回してくれよとかの打ち合わせじゃないでしょーねー！
言っとくけど私、ニッポン人だけど見ての通り金持ちじゃありませんからね！

部屋のキーを受け取る。

「あなた、夜僕と食事する、OK？」
気さく誘ってくるエジプト人。悪い人には見えないけど・・申し訳ないけど私夕飯は
一人で気さくに食べたいのよねー。

ひとまずエジプト人と別れ、部屋に入る。

うわーーっめっちゃ可愛い！！1泊約3000円にしては、なんて豪華な部屋なの！
一人なのになぜかツインベッド！窓の扉は床から天井まであってめっちゃ重っ！
風呂場とトイレは無駄に広っ！！テレビの設置は上過ぎて若干首が痛っ！

いや～すごいよスペイン。3000円なんつったら日本じゃふすまかよってくらい薄い壁に
ポロポロ落ちる砂壁に、1時間100円のテレビってとこだよね。

さらにテレビをつけてまたビックリ。

ド、ド、ドラえもんやってるー！！！ホンワカパッパホンワカパッパドラえもんー！
ドラえもんがスペイン語しゃべってるよ！
すっげーな、ドラえもんってスペイン語しゃべれるのかー！

ひとしきり興奮したところで、いざトレドの街へ散策に出かける。
この後の出来事は、昨日の日記にて。

無事ナプキンをゲットし、日もどっぷり暮れた頃ようやくホテルに戻ってこれた。
昔漫画で、「迷路を脱出するには、常に右だけに曲がっていればいつか出られる」
と読んだのを思い出し、曲がり角という曲がり角は全て右に曲がった。
ら、なぜか着いた。ガイドブックより漫画の方がよっぽど役に立つよ。

すると、なぜだか部屋の電話が鳴った。

ええええーっ！なんで電話が鳴るのさ！？
一体誰がこのホテルの部屋に電話をかけてるっていうのさ！？
出たら何語でしゃべればいいのさ！？っていうか、そもそも何語で出ればいいのさ！？




「もしもし」






エジプト人　「僕だよ僕！食事でGO！」

またお前か・・フロントに部屋番号を聞きだしたんだろうな。
スペインのフロントって口軽いなー。

「ごめん、私とっても眠いから無理ー」

ごめん、歩き過ぎてほんとに眠いんだわ。

「オーノー！じゃ、明日の朝ご飯一緒に食べる、OK？」

えー、もー・・しっつこいなー。なんかもー断るのもめんどくせー

「OK。じゃ、明日広場の前で」

あーめんどくせっ。
んじゃ、風呂でも入ってくるかー。ひろーーいお風呂楽しみだな～～。
ルンルンで、8畳くらいある風呂場のシャワーカーテンをシャッと開けた。

ぎゃっ！！湯船せまっ！！

風呂場その物は8畳くらいあるのに、湯船がケツ1つ分しかないよ！！
おいおいおい、これじゃ湯船に浸かれないよーこの広い部屋はどうやって
使いこなせばいいのよーあああ、そーか・・ヨーロッパ人は湯船に浸かる習慣がないのか・・

仕方なくケツ1つ分の湯船にケツを1つ入れた。

さーて、ケツ風呂も入ったしテレビでも見てのんびりしよーかねー。

プチン。テレビをつける。

ぎゃああああああ！
外人のおっさんが頭切り取られて脳みそ食べられてるーー！！こわああああい！！
（ハンニバル放映中）

プチン。


テレビを消して寝る事にした。


-翌朝-

めんどくっせーけど、エジプト人と待ち合わせして立ち食いのカフェみたいなとこに入る。
なんかめっちゃ混んでる！！満員電車の中で肩すぼめてコーヒー飲んでる感じ。
しかも満員電車の乗客のほぼ全員がしゃべってるので、めっちゃうるせー

茶もそぞろに、支払いをして店を出る事にした。
ヨーロッパはスリやら置き引きが多いっていうから、私は財布をリュックに入れて
使う分だけバラ銭でコートのポケットに入れていた。

店員　「○○ユーロだよ」


えーっと、これが1ユーロ札で小銭は・・どれだ？
慣れない通貨に手間取っていると、

エジプト人　「この札が3枚と、小銭はこれとこれを出せばいい」

あーはいはい、これとこれね、どうもありがと。って、オイそこのエジプト人！
お前は払う気ないんかい！！

大体あんたから誘ってきたくせに払う素振りも見せないって一体どーゆー了見だよ。
私が日本じゃどれだけ貧乏で通ってるのか知らないのかよ。

ポケットから1ユーロ札を取り出す時、一緒に20ユーロ札がポロっと出てしまった。
幸い床には落ちず、そのまますぐポケットに20ユーロ札をしまった。

店を出る。あー酸素がうまいー。
じゃ、私そろそろ次の街へ行くわね。さよならエジプト人。
色々お世話（しました）になりましたー。

と、いきなりエジプト人の表情がガラッと変わった。

「僕、あなたホテル教えてあげた」

へ？知ってるよ？それがどうしたの？

「あなた一人でホテル取れなくて困ってた。僕、助けた」

・・・。

あの・・だから何が言いたいのかな・・？

「あなた、僕にお金お礼する」

キターーーーッこれ！これキター！！め、めんどくっせーー！！

「私ノーマネー。わかる？アイ　ハブ　ノーマネー！」

アイハブノーマーネーってのも変か？
私は無いお金を持っている。って、持ってるのか持ってないのかどっちよ？

エジプト人　「・・・。（表情が険しくなる）」

わっ、なんかこの人怖いかも。
よく見たら黒髪のクリクリ天然パーマだし、変な作業着着てるし、作業着ペンキだらけだし！

「あなた、私にお金渡す」
「ノーノー、だから私ノーマネーなの」

そんなやり取りを数分。
ここは広場だけど、まだ朝だから人通りはそんなに多くない。
殴りかかって来たら助けを呼べるだろうか・・でもノーマネーなのは事実だから
この変なエジプト人に新しい作業着代をくれてやる気はサラサラない。

「あなた、20ユーロ私に渡す！」

ひえ～段々声が荒くなってきたよ。え？20ユーロ？なんで20・・？ああああ！
さっきポケットからチョロっと顔出した20ユーロをちゃっかりコイツ見てたんかい！

はっはーん！読めたわよー。
こいつはいかにもこの街で働いてる素振りをする為に、こんな小汚い作業着を着て
登ってくる観光客を坂の上で毎日毎日待ってるんだーーっ
しかも絶対あのホテルからマージン受け取ってるんだーーっ

こうなりゃ絶対金なんてビタ一文渡すもんかっ。
よーし、こっちもいちかばちか強気な態度でバシッと言ってやるわよ！

「ノーノーノー！お金はあげない！ビコーズ私ノーマネー！
　そしてバスの時間だからサヨナラ！！」

するとエジプト人は諦めたらしく、プイッ！！と小学生みたいに
ふてくされて走り去って行った。

ふ～～助かったー。とんでもねー男に引っかかったよ。
しっかしよく考えるよねー色んな手口をさ。危うくエジプト詐欺にあうとこだったよ。

さーて私も客を待つか、あの坂の上で。
ナプキンいりませんかーーー？1つ20ユーロでーす。


お勧めの作業着（20ユーロ）



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