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2011年04月12日
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その部屋はフローレンの部屋が通りに面しているのに対し、裏向きの小さな部屋だった。小さな部屋と言っても天井が高いので小さく見えるだけで、大きさで言ったら12畳ぐらいはあったと思う。
部屋に入ってすぐ右には縦長の古い洋服ダンス、その奥には引きダンスそしてクッカー(電熱器使用の調理台)そしてその奥には縦1メートルぐらいの余り大きくない冷蔵庫があり、入って右側にはシングルベッド、その奥には今では使われていないのか板で塞がれている古い暖炉そして正面には上下にスライドする木枠の大きなガラス窓があった。
窓の外には、大きな木がびっしりと葉をつけていてその先にある視界を遮っていた。
私は、フローレンにお礼を言い早速自分の部屋に荷物を運んだ。
そこは、今までいたフローレンの部屋とは雰囲気も全く違いシーンと静まり返っていた。
私は、日本を飛び立ってから今まで雑踏の中で暮らしていたようなもので、久しぶりに味わう静寂にゆったりとした気持ちになっていた。
ドアをノックする音がして半開きになっていたドアからフローレンが顔を出した。
「カム・イン」と言うとフローレンは楽しそうに、「こんな近くに部屋が空いてて良かったわね。どう?部屋は気に入った?」と言いながら入って来た。
私にとっては、ロンドンでただ一人の知り合いであるフローレンの真向かいの部屋に住めることは本当にラッキーだったとしか言いようが無い。
私は言いたいことは山ほどあったが、現時点の私の英語力では「イエス・アイ・ライク・イット」と言うのが精一杯だった。
彼女は、「グッド」と言った後で「リッスン、私はこれから仕事に行くけれど、明日あなたの学校に行く行き方を教えてあげるけど、学校は何時から?」見たいな事を聞いた。
この学校は、当時フローレンの彼氏だったあの友達から、「イギリスは移民局がうるさいので帰りの飛行機の切符と語学学校に行くという証明書は必要だよ」と言う助言をもらい、一応一ヶ月の語学学校に行く手続きを日本でしていたのだった。
語学学校の証明書を見ると朝10時と書いてあったので、「イッツ・テン・オクロック」と答えた。
彼女は、「オーケー・アイ・ウィル・シー・ユー・アット・ナイン・ツゥモローモーニング」(じゃあ明日の朝9時に会いましょう)と言って部屋を出て行った。
私は、しばらく部屋でゆっくりした後、買い物ついでに外に出てこの辺りを探索してみようと思いブラブラしてみた。
すると私の家があるコモラロードと、大通り(確かノースエンドロードだったと思う)がぶつかったところに、古い電気製品を売っているところを見つけた。
テレビっ子の私は、とにかくテレビだ!テレビが必要だと心に決め、テレビを買うには英語を話さなくてはならないことなど忘れて、店の中に入っていった。
私は、いまだにあの時どうやってテレビが買えたのか思い出せないが、白黒の大きなテレビを買って自分で抱えて帰ったようである。
家に帰ってからテレビを引きダンスの上に乗せ、電源をつないでスイッチをわくわくしながらスイッチを入れた。
すると何から訳の分からないものが出てきた。
それは幾重もの丸い輪の中心に女の子の顔が写っている。
他のチャンネルに回しても同様の物が写っている。
更に別なチャンネルに回すと、THEMESと書いてありバックに大寺院(今思えばセント・ポールだったと思う)が写っていた。
どうやら、イギリスのテレビのチャンネル数は3チャンネルだけらしい。
音を大きくしてみると、ピーと言う信号音がなっている。
別なチャンネルは、バックにクラシックの音楽がなっているのでテレビが壊れているわけではないらしい。
そうしているうちにテレビ番組が始まった。
どうやらイギリスでは、テレビ番組とテレビ番組の間にこの音声信号を流して時間の調節を図っているらしい。
私は、日本ではこのタイプの画面は全てのテレビ番組が終了した後にしか見たことが無いのでこれは正直びっくりした。
考えてみればイギリスは、今でこそテレビのチャンネルが5チャンネルに増えたものの、私が行った頃は国営放送のBBC1とBBC2そして民放が1つしかなかったので、コマーシャルは1チャンネルしか無い為、こういった試験画面を見るのは珍しくなかったのである。






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最終更新日  2011年04月13日 01時06分24秒
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