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前のバンドの演奏が終わり、いよいよ我々の番が来た。
私は、先程運んでもらったギターのエフェクターの入ったバッグを受け取り、ステージに上がった。 当時私が使用していたのは、ギターを歪ませるオーバードライブ、ディスト―ションそれから6弦ギターの音を位相を変えて12弦ギターの様に変化させるMXRのコーラスそして山彦の様に音を繰り返すエコーマシンそれからギターの音を音色を変化させずに継続的に伸ばすことが出来るコンプレッションサスティナー、そしてそれらの音量をコントロールするヴォリュームペダル等々、前日に其々のエフェクターを繋いでその音量や効果のかかり具合を慎重に測り、つまみが動かないようにその上からセロテープをしっかりと貼り付けたエフェクターを並べ始めた。 その機材を見たステージエンジニアが「へ~!そんなに沢山のエフェクターを並べて全部使えるの?」と冷やかし気味に言いながらステージの私の前を横切って行った。 この各ギターエフェクトをステージ上の演奏で踏むときは、曲によって2つや時には3つのエフェクトを同時に踏まなくてはならない時があり、この動きがタップダンスに見えるのでPedalboard (tap) dance(エフェクト板上の踊り)とも呼ばれているらしい。 我々QUASARの曲は、以前にも書いたように曲によってギターの音色を頻繁に変えなくてはならないのが難点であり、長い曲であるMISSION14という曲などは数えてみると一曲で24か所も音色を変えなければならないという面倒な作業が含まれていた。 さてステージで作業をしている私に、先ほど私に嫌味を言って行ったステージエンジニア(舞台音響係)とは別の担当者が私のギターアンプの設置場所について話しかけてきた。 通常ギターアンプは演奏者の背後に置いてあり、前方に置いてあるバンド全体のミックスした音が流れてくるモニタースピーカーと自分の立ち位置によって全体の音を調整する。 簡単に言うとギターアンプが後ろにあれば、前方のモニタースピーカーから流れてくるバンド全体の音の中でギターの音が小さくて聞こえなければ、演奏している自分の立ち位置を少し後ろに下がればギターアンプからの音をより大きく聞けるようになると言った事なのだが、私はこの時初めての野外ステージで感覚が狂ってしまっていた。 何を思ったか、私はエンジニアの人に自分のギターアンプを前方にあるモニタースピーカーの横に置いてくれるように頼んでしまっていた。 今思うと多分この時私は初めての野外ステージで演奏する事と、その日はバンドのサウンドチェックやリハーサルが無くいきなり本番だった為、そのステージが予想外に広かった事と自分のギターアンプが100ワットの出力しかないので、私の後方にギターアンプを置くと音が小さ過すぎて聴こえなくなるのでは無いかと不安だったのだと思う。 とにかく、この位置では自分のギターアンプとバンド全体の音が流れてくるモニターアンプの音量のバランスを取ることができない事は後になって想像がついたが、エンジニアの人に既にこの様にセッティングを頼んでしまったからにはもう後戻りをすることは不可能だった。 バンドのセッティングも終わり、いよいよ演奏開始である。 ラジオ局の人のアナウンスで「さて本日の最後のゲストです。ここでクエーザーをお届けします。みなさん大きな拍手で迎えてください。いけ~!いけ~!」みたいな感じで最初の演奏ホワイト・フェザーと言う曲が始まった。 演奏は順調だった。 ギターの音が少々大きかったが、思ったよりは問題が無かったので少し落ち着いた頃演奏は中盤のギターリフから次のセクションに行くための高い音に変化するときだった。 そのフレーズを弾く為にまずエフェクターのスイッチを足で踏み、弾いたのだが「音が出ない!」私は一瞬何が起こったのか判らずに体が硬直した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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