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2005.12.20
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人間、何歳あたりからボケが始まるのか定かではないが、うちの夫婦の場合は既にそれが始まっている事は間違いない。
診療の時に、突然クスリの名前が思い出せなくなってあたふたするのはご愛敬だが、恐ろしいのは火の始末である。

介護保険申請の主治医意見書の痴呆の評にも、問題行動の一つとして、「火の不始末」と言う項目がある。

我が家では夫婦が共にやかんにお茶をかけたままど忘れすると言う行為がこの数年頻発している。大抵は家の中で気が付く程度だが、2年前のお盆の際には、やかんをかけたままで外出して、帰ってきて香ばしい匂いがしてるので初めて気づくという大ポカをやらかしてしまったのだ。あれにはちょいと堪えた。

このど忘れには単純に年齢的ボケの問題以外に、色々な状況的諸問題を含んでいる。

うちの上2人が通う小学校では、水道のお水を飲んではいけないとされている。ウオータークーラーなんて洒落た物もない。
だから夏の暑い季節には、でっかい水筒にお茶を満載していくのである。
低学年の子が重い水筒を下げているのも痛々しいけど、高学年になるともう電子ジャーみたいな水筒やキャンプの時のジャグみたいなのを下げている奴も居て笑える。

そんな訳で、毎日二人の子供、いやそれにカズも水筒にお茶を詰めて行くので、夏になると毎日何度も大きなやかんでお茶をわかさないといけない。
朝には冷えてないといけないので、お茶は夜に沸かすことが多い。
夕食を作りながら、もしくは夕食の後始末をしながらお茶を沸かすことが多い。僕のように短時間で幾つものメニューを夕食に作る場合、3つあるガスコンロは全て埋まって、それ以外に電子レンジにオーブントースター、そしてすり鉢が同時に作動したりしてるのだ。

そんな中でやかんにお茶を入れてかけておくと、ついつい忘れてしまうのもこれはもう人情と言うしかない・・・違う、これはもう不可抗力なのじゃないかと思うことがある。

何度か失敗の結果、僕は一つの結論に達した。
お茶を沸かしてるのを忘れるのは仕方ない。その代わりに被害を最小限にしようと言う方針に変えたのだ。
まず、火力を弱くする。一番小さな五徳にやかんをのせて、中火以下の火力にしておくのである。そうすれば、例え忘れていても中身が完全に蒸発してしまうまでにはかなりの時間がかかるから、被害は最小限になるのではないか?

もうひとつは、やかんをかけたときに、周りのひとに「今お茶をわかしてるからな気を付けておいて」と伝えて置くことである。自分一人で自信が無いときには周りの手を借りる。これは人生の鉄則である。

このおかげで最近の僕はやかんの吹きまかし、まして焦げ付きなどは全くと言って良いほどなくなった。
もっとも、寒い季節で小学生はお茶を持って行かなくなったので、やかんをかける機会自体が大きく減ってしまったのだが。

配偶者がとった対策は、まずあのピ~~と音がするやかんの導入である。
なるほど、沸騰したら笛のような音で教えてくれる。これはすごい、文明の利器だと思った(大げさ)。世の中には、我が夫婦以外にもやかん吹きまかす事で人生を棒に振った人がいて、その人たちの屍を越えてこのような便利な道具が発明されたのであろう。

その笛吹きキャトルの登場は画期的であった。
しかし・・短命だった。
義母・・すなわち配偶者のお母さんがまだ買って2週間もたたないうちにそのやかんをキッチンの床に落として、その笛吹部分を壊してしまったのだ。
折角の笛吹キャトルが、笛吹部分が壊れてなくなって、単なるつぎ口が太いやかんに堕落してしまったのだ。
つぎ口が太いだけに、一旦沸騰するとあっというまに消防車の放水のように吹きまけてしまうのである。

次に配偶者が考えたのは、値段の高いやかんを買うことである。
高いやかんを焦げ付かせるのはもったいないので抑止効果が働くのではないかと言う考えだ。
そんな「風が吹いたら桶屋が儲かる」みたいな考えで大丈夫か?と思うけど、彼女が買ってきたのは、こんなやかんだ。

僕はよく知らないけど、この柳宗理と言うのはキッチン用品のデザインではなかり有名な人のようで、このやかんもグッドデザイン賞かなんかを頂いているみたいである。デザインだけではなく、機能的にも色々と工夫して使いやすいとのこと。

カズのお友達のソラ君のママがこのブランドを愛用していて、先日ソラ君の家にお呼ばれに行って、色々と台所用品を見せて貰った配偶者が強い影響を受けたのは想像に難くない。
確かに、高い方のつや消しの鈍く光るそのやかんは、僕から見てもシンプルイズザベストを地でいくような洗練された美しさを持っていた。

で、その柳宗理のやかんであるが、あっけなく燃えたのである。
今夜の事だったが、僕が書斎でメールチェックをしてると、ミドリちゃんが血相を変えて入ってきた。
「父ちゃん。ポットが偉いことになっとる!」
「偉いことって?」
「とにかく来て!」
何で湯沸かしポットがどうなるんじゃ?と思いながら彼女を後を付いていくと、2年前のお盆休みの日、やかんをかけたまま外出して家に帰ってきたときに臭ったかぐわしい香ばしい匂いが懐かしく脳裏に蘇ってきた。

焦げていたのは柳宗理のやかんであった。
(うちの娘のボキャブラリーにはやかんと言う言葉がないのか!)
中に入れたウーロン茶の紙パックが炭化して底に化石のようにこびり付いている。僕の見立てでは、やかんから完全に水分が無くなって既に10分以上は経過しているように思えた。

知らせを聞きつけて、重傷のやかんを見た配偶者は呆然。
彼女はやかんをかけたことを忘れてお風呂に入っていたのだ。
自分の宝物のように可愛がっていたやかんの変わり果てた姿を見て
ヤナギソーリノヤカン・・と何度もつぶやいていた。

彼女の考えでは、やかんをかけているのを忘れないようにと言うか、台所仕事をしているうちに沸騰してしまえば見落とすことは無いだろうと言う考えで、一番大きなハイカロリーの五徳で、一番大きな炎でかけていたそうだ。
そりゃあかんやろ。そういう逆療法は怪我の元だぜ。もっと謙虚に行かねば。
ほら、説明書を見てみなよ。「底は広く安定性がって、熱効率も良い」って書いてるでしょ。ハイカロリーバーナーなんぞにかけたら一発だよ。

幸いなことにヤナギソーリのやかんは、底に穴が空くほどには至っていないようだ。お茶の蒸気がこびりついて表面が茶色っぽくなったのと、炭化したティーバックが底にこびりついてるだけだ。
これなら何とか取れるかな?ってかんじだな。
まあ、明日時間をとってしっかり擦ってみて。

これからの対策として
出来るだけ弱火でかける。
持ち場を離れない。
他の人に声かけをしておくなどが大事だが、
根本的に、水だしのお茶を使うなどの大きな改革も必要になることと思われる。


でも、良かった・・焦がしたのが僕じゃなくて。
もし僕だったらどんな仕打ちをうけたか・・考えただけでも怖いですわん。








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Last updated  2005.12.21 01:26:20
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