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放送大学の「情報社会のユニバーサルデザイン」という科目(テレビ)は相当エキサイティングな内容である。主任講師は広瀬洋子先生。広瀬先生は、放送大学の付属研究機関で永年、障害者の高等教育というテーマにこだわり研究を続けてこられた。本科目がはじめて放送大学の担当科目である。イギリスのオープン・エアー(放送を利用した大学)を徹底研究、これを参考に日本の放送大学を障害者に利用しやすいようにするというテーマの研究をされていた。 もう一人の講師が関根千佳さん。関根さんは日本IBMでコンピュータの障害者利用の推進、研究をしつこくやってきた。会社という枠におさまりきれず、横浜にユーディットという機関を自前で設立(現在は株式会社)、ICT利用のアドバイス、本の執筆等を行い、京都の同志社に引っ張られて教授職についた。広瀬先生と関根さんがタッグを組んで作ったのが、この科目である。放送大学の情報科にはいっているが、この枠組に収まりきれない内容である。2回、3回は東洋大学の川内美彦さん、4回の条約、法律関係は立命館大学の長瀬修さんが登場。画面に3人の碵学が並び、実に贅沢な授業である。 注目は2回目。「ユニバーサルデザインを支える概念」で福祉界に跋扈するカタカナの輸入概念について明解国語辞典なみに解説している所である。カタカナがそのまま通用しているのは、日本語に表す表現がないせいである。ここに海外と日本との福祉理念上のギャップが存在している象徴になっている。まずは、このカタカナ概念の中身を充分理解するところから始めなければならない。 まずは「ユニバーサルデザイン」とは何か。この概念を提唱したのは、ノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス(通称ロン・メイス)である。ロンは車イスユーザーであり、建築家、製品デザイナーの仕事をしていた。最初、障がいを持つ人にとっての障壁(バリア)を除去する(フリー)という概念で活動していたが、標準的な(Mr.Average)成年男子向けに作られた街やものに対し後付けでバリアを除去することに限界を感じていた。足の弱いシニア、妊産婦、外国からの旅行者に使えないもの、使いにくいものが世の中にあふれてしまう。それで、はじめから多様な人のためにデザインすればいい、と気付いた。言われてみれば当然のことだが、誰も気づかなかった。川内さんはロンに出会って、ロンは何でもポジティブにものを考えることのできる人と評する。ロンの妻のロック・ハートも女性運動家であり、ロンを理論の面で引っ張っていく人であるという。川内さんが、ユニバーサルデザインという概念を著書で紹介すると、障がい分野以外に広がり、製品づくり、街づくり、ホームページのデザインまで広がった。 「アクセシビリティ」という概念は、アメリカのデコーダー法につづき、1996年通信法255条で企業が作るICT機器やサービスにアクセシビリティを要求し、1998年改訂のリハビリテーション法508条で政府が調達するICT機器やwebサイトはアクセシブルであることを要求していることから出てきた。アメリカの政府のなかに、多くの障害者が雇われていたのである。企業はこれに応えなければならない。 「ノーマライゼイション」はデンマークのバンク・ミケルセンが提唱した概念で、 基本にあるのは多様な人を差別しないで、共に歩んでいこうという、そういう社会を作っていこうという「ソーシャルデザイン」、さらに社会変革を目指す「ソーシャルイノベーション」という言葉が使われることもある。この授業でホームページ製作で問題となる重要概念である「アクセシビリティ」と「ユーザビリティ」という概念が紹介されている。カタカナ用語で頭が混乱している人は、この授業で頭のなかの整理・整頓がすっきりさせることができる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2014.11.02 15:39:01
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