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ココロのSound of Silence.

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2012.06.16
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カテゴリ:COTTON NOVEL


水辺にしゃがんで、小さなせせらぎの音を聴いた。

かすかに彼女の息遣いが混じる。


時折り、南東の風が世界をゆりかごの中に包み込むように吹いた。


美術館の中で息を殺してフェルメールを見る。

夕闇が宵のディープ・ブルーに染まっていくのをジッと見る。

水槽のメダカがゆっくり泳ぐのを飽きることなくながめる。


彼女といれば沈黙は退屈ではない。

沈黙が幸福の証とも思える時があるから。


彼女が、右手で僕の頭を突いた。

「ボーっとしちゃって」

「いいじゃないか」


もう一度突っつかれた。

「抜け殻」

「うん?」

「あなたは今、抜け殻のようになっています」


両手を上げて、伸びをするようにして立ち上がった。

土の感触を足の裏に感じながら、僕らは風に包まれた。





  • COTTON90.jpg









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最終更新日  2012.06.16 14:01:19
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