カテゴリ:仕事の話
バス停へ急ぐ途中、腰のポシェットに触って見ると何だか様子がおかしい。チャックを開くと、キーカードホルダーが無い。慌てて家に戻って探すが見つからない。これは困った。カードが無ければ勤務するビルに入ることが出来ない。いや、他にカードを持った人の後について入館は出来るのだろうが、自分のいる管理室への入室が出来ないのだ。
これでは警備員としての仕事に支障が出る。焦る気持ちを抱きながら、大雨の中を再びバス停へ向かう。いつもより3本遅い便。おまけに遠回りの路線だった。それにしても一体どこで落としたか。昨日は山越えで走って帰った。その時は確かにあった。家に着き、昼飯を済ませてから、行ったのは郵便局と整骨院と買い物した近所のスーパーのはず。 カードを失くしたらきっと「始末書」ものだろうな。警備員失格だ。先日書いて出したばかりの論文が「油断大敵」だった。今回はとても言い訳できない自分のミスなので、あの論文は取り下げてもらおう。ひょっとしたら辞めることになるかも。バスの座席で私はすっかり覚悟を決めていた。実は清掃担当者のカードが読み取りにくく、私の到着を首を長くして待ってるはずなのだ。そんなことより、自分の不始末にどう決着をつけるか。 当社の決まりでは、キーカードホルダーは必ずベルトに通すことになっている。それを雨を理由にトレパンを履いて来た。当然トレパンにはベルト通しは無い。だからポシェットをして来たのだが、そこに肝心のものが入ってなかった。まさに油断だ。今更悔やんでも仕方がない。管理会社の人が来るまで待つしかないか。 バスから降りて勤務先のビルに急ぐ。遅刻はしなかったが、今はそれどころの騒ぎじゃない。おや、誰か女の人が役員車の運転手さんと話をしているぞ~?良く良く顔を見ると、我が女房殿ではないか。「お父さん見つかったよ」。彼女はそう言って私にキーカードホルダーを手渡し、待たせていたタクシーに飛び乗った。 妻は今日、4軒のお宅へ行く仕事。その合間に明日からの展覧会に備えて、油絵を搬入する必要もあったようだ。大雨でしかも忙しい時に、飛んだ迷惑を掛けてしまった。でも、これで何とか警備員の面目は保つことが出来、清掃関係の人もようやくビル内に入れた。慌てて制服に着替え、何時もより3分遅れで巡回へ。 仕事を終えて第2現場のビルへ行くと、新たな使命が私を待ち受けていた。またしても論文提出の依頼だった。今度のテーマは「信頼される警備員を目指して」。数日前に書いたタイトルが「油断大敵」。で今度のテーマが「信頼」か。ふ~む。 皮肉なことになったがこれもまた運命の悪戯か。帰宅して妻に聞くと、キーカードホルダーは食卓の椅子の上に落ちていたそうだ。きっと昨日買い物から帰った後にテーブルから転げたのだろう。こうなったら前回に引き続き、今回も失敗談を書かせてもらおう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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