2009/03/21(土)06:05
嵐の中の62km (八丈島一周完走記) その6
< 南の島で寒さに震える >
下り坂は降り続く雨でまるで小川みたい。私のシューズは底に穴が開いているタイプのため、水が浸入しないよう慎重にコースを選ぶ。工事中の荒れ道を下り切ると、やがて左手に高い擁護壁に護られた漁港が見えて来た。八重根漁港のようだ。30隻ほどの漁船が低気圧を避けるため、ロープでしっかりと固定されている。
さらに下るとと八重根港。突堤に白波が打ち付けている。コースはそこから海岸沿いに進む。いよいよ瓢箪形をした島の北部の一周が始まる。雨はますます強くなり、顔に当たると痛い。だが猛烈な風のため帽子を被ることが出来ない。飛ばされないよう手に持つか腰に挟むだけで何の役にも立たないのだ。
水溜りを避けながら大潟浦海水浴場に沿って西行すると、やがて45km地点の千畳敷ASが見えた。1台のライトバンの傍に立つ中年の女性がずぶ濡れ状態で私達を迎えてくれた。荒れ狂う自然の前では成す術も無い人間。大急ぎで食べ物を口にしていると「舘ひろし」氏が追い着き、ライトバンの陰で風を避けている。御礼を言って出発。沖縄出身のランナーYさんに後で聞いた話では、この女性も偶然沖縄出身だった由。
コースは八丈富士の裾野に沿って海岸を北上。だが次第に舗装状態が悪くなる。ひょっとして道を間違えたかと不安になった時、前方からやって来た巡回車にS木さんの笑顔を発見。やはりこの道で良かったようだ。そのまま坂道を登って行くと、46.8km地点でようやく島の一周道路とぶつかった。
そこから左折。道路の状態は良好で緩い登りが続き、時計回りに右へ右へと廻って行く感じ。追い着いた「舘ひろし」氏が突然左手を指した。雨に霞んだ海上遥かに、八丈小島の姿が初めて見えた。おお、あれがどうしても見たかった八丈小島か。
尖がった頂上部が雲に隠れている無人島を見ながらのランが続く。やがて行く手にビンロウジュの森が見え、さらに行くと小さな白い灯台。そこが島の最北端のようだ。思いがけず家屋の中にASがあった。51km地点の大越鼻灯台前ASだ。中へ入るとストーブが燃え、何人かのランナーが休んでいた。風雨を避けられるASは初めてのこと。ちょっぴり寛いだ気分になり、ゴマお握りを貪る。
さて、ゴールまでの残りは10kmちょっと。僅かの距離だがここからが案外辛いのだ。若い「舘ひろし」氏と追い着いた沖縄出身のYさんが先行し出す。前夜彼らは、まさかこの嵐でマラソンの開催はないだろうと、深夜まで飲み明かしたそうだ。それにしても寒い。ASで休んでいるうちに体が冷えてしまったのか。否、そうではない。きっと気温も下がり出したのだと思う。雨でTシャツや手袋がビショビショに濡れているせいもあるが、体感温度は5度程度。これが数日前まで最高気温が17度になると予報された同じ南の島だろうか。<続く>