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マックス爺のエッセイ風日記

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2019.03.19
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カテゴリ:芸術論
~沖縄の離島を舞台に~

  

 この映画を勧めてくれたのは、滋賀のブロ友Yorosiku!さんだった。タイトルが示す通り、舞台は沖縄か奄美だなと直感した。粟国(あぐに)島だと彼女は教えてくれた。「洗骨」がどんな儀式かは知っているし、粟国島の場所も分かる。でもなあ。探して見ても東北の映画館で上映してるところはないんだよなあ。ブログにそう書いたら、丁寧にも県内の上映館を教えてくれたのだ。

          

 上映館は分かったが、上映時間が分からない。そこで映画館に問い合わせた。スケジュールが判明するのは次の水曜日とのこと。上映が金曜日なのに時間がまだ決まってないなんて、全く不思議な話だ。それにそんな映画館の名を、これまで私は聞いたことがなかったのだ。ただし場所は知っている。駅のすぐ傍だ。当日は最初に観るべく早めに出かけた。何かの記念日でいつもより700円安くて助かった。

  

 洗骨とは、一旦葬った人の遺体を数年後に墓から取り出し、文字通り水で洗う儀式だ。なぜ今でも粟国で洗骨を続けているのだろう。それは小さな島で火葬場がなく、風葬を行っているためだ。沖縄ではもうほとんどの地区でこの儀式は行われていない。数百年間続いて来た風俗が、戦後衛生上の理由で廃止されたのだ。だが幾つかの離島では例外的に現在でも残っていたのだ。

     

 古謝美佐子が島民役で出演していたのには驚いた。彼女の本職は琉球民謡の歌手。夏川りみが歌った「童神」をカバーし、それがこの映画のテーマ曲になっている。監督はガレッジセールのゴリだが、本名の照屋年之で脚本も書いた由。沖縄出身の彼がこの洗骨のことを知らなかったことに驚いた。粟国のこの行事を知って、最初はコミカルに描こうとしたようだ。

  

 父親役は奥田瑛二。彼は俳優であると同時に監督の経験もある。長女の安藤桃子は映画監督で、次女の安藤サクラは女優。その大先輩に、ゴリ監督はダメだしを続けた。もっとだらしない父親を演じろと。妻を失った男は毎日飲んだくれていた。そこに東京から息子(筒井道隆)、名古屋から娘(水崎綾女)が母の洗骨のために帰郷する。息子は離婚し、娘は身重だった。
                 

 この妊婦が超リアルで、お腹を油で拭く場面では「本物」であることを疑わなかった。出べそにもなっていたし。ところがそれはシリコンで、水崎は特に重い材料で腹部を覆い、妊婦を演じていた由。そのため島の人々は、奥田が彼女を妊娠させたのだろうと噂していたそうだ。監督以下スタッフと俳優の誰もが、迫真の演技を行っていたのだ。モスクワ映画祭ほか、複数の映画祭で高い評判を得た由。

  

 複雑な事情を抱えた離島の家族だが、母(妻)の洗骨をきっかけにして、絆が深まる。妊娠させた相手が島に駆け付け、娘は母の墓の前で破水、出産する。鋏で会陰を切開するのは、酒飲みでだらしなかった父。やがて聞こえる産声。ゴリは日大芸術学部映画学科中退で、これまでも10作以上の監督作品がある由。どれも初めて聞く話で、心から驚いた私だった。世界は広い。そして芸術の力は実に偉大だ。





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Last updated  2019.03.19 07:20:19
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