正岡子規 「暑さかな」連作俳句 上
正岡子規 「暑さかな」連作俳句 上あら壁に西日のほてる暑さかな松陰はどこも銭出すあつさかな (茶店の木蔭のことか)暑さかな八百八町家ばかりぐるりからいとしがらるる暑さかな犬の子の草に寝いねたる暑さかな昼顔の花に皺しわ見るあつさかなやるせなき夕立前のあつさかな雨折々あつさをなぶる山家やまがかな我部屋は茶代も出さぬ暑さかな (旅先の宿のチップ)やせ馬の尻ならべたるあつさかな 岩代日本松にて幾曲りまがりてあつし二本松掛茶屋のほこりに坐るあつさかな熱き夜の寝られぬよその咄かな昼時に酒しひらるるあつさかな (強いられる)店先に車夫汗くさき熱さかな道々に瓜の皮ちるあつさかな馬車うまくるま店先ふさぐあつさかな博奕ばくち打つ間のほの暗き暑さかな夕まぐれ馬叱る町のあつさかな腹痛に寝られぬ夜半よわの暑さかなくたびれを養ひかぬる暑さかな明治26年夏( )内はくまんパパ註。