紀貫之 人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香ににほひける
紀貫之(きのつらゆき)人はいさ心も知らず ふるさとは花ぞ昔の香かににほひける古今和歌集 42 / 小倉百人一首 35人は、さあ、心も分からないがあなたが住んでいるこの里は梅の花が昔のままの香りで照り映えているのだなあ。註いさ:否定のニュアンスを持つ古語感動詞または副詞。さあ。さてどうだろうか。「いざさらば」「いざ鎌倉」などの「いざ」とは別語だが、混同されて「いざ知らず」という語になって残った。ふるさと:この場合は、現代語でいう「故郷(古里、郷里)」ではなく、昔なじみの(女性が住んでいる)里。「(花)ぞ・・・(にほひ)ける」は強調の係り結び。『古今和歌集』編者による名歌。この「花」が梅であることは、作者自らが古今集の詞(ことば)書きで明示している。 パブリック・ドメイン国宝 尾形光琳 紅白梅図屏風