いよいよメキシコ戦まで一週間と迫る中、ドイツでキャンプを行っているチーム・メッリは地元クラブのFriederichschafenとテストマッチを行い5-0で勝利した。得点は前半にハティービの2得点、そしてカゼミアン、ボルハニ、ネクーナム。海外組のキア、ザンディ、キャリミが未だ万全の状態でないことは気がかりだが、この試合にも活躍した国内組が穴を埋めれば問題は無さそうだ。ブランコもボスニア戦後のインタビューで「マダンチ、ショジャイー、テイモリアンがこのままパフォーマンスを維持できればスタメンのチャンスもある」と認めている。また背中の痛みを訴えドイツ代表のチームドクターに治療を受けた後、やっとイラン代表に合流したキアはメキシコ戦に向け別メニューで調整を行ったようだ。尚チーム・メッリは10日にニュルンベルグ入りする予定。
ついに運命のメキシコ戦まで残り1週間、あとは選ばれし23名の選手たちに託すしかない。その23人それぞれの想いがあるはずだ。ダエイにとっては間違いなく最後の大会であり、自らの素晴らしい代表での最後を飾る花道としたいことだろう。また彼と共に数少ないW杯経験者であるキアにとっては何も知らずがむしゃらに世界に挑んだフランス大会から一転して、ドイツで積み上げた実績を証明する大会になる。キャリミにとっても初のW杯でポドルスキーやドス・サントスがバイエルンでのレギュラー奪取の障害になり得ない事を証明するようなプレーを披露し、バイエルンやブンデスそして世界中のファンに真のアリ・キャリミを見せてくれる事だろう。そしてザンディにとっては生まれ育った国で、父親のルーツである国のジャージをまとい戦う最初で最後の機会になるだろうし、他のベテランにとっては自らの集大成として、若手にとってはイラン代表の未来につながる貴重な糧になるに違いない。だが私が最もその想いを共有するのがハシェミアンである。テヘランの中流階級の家庭に育ち、5人兄弟の末っ子であった彼にサッカーの喜びを教えた兄は、彼が8歳の時イラン・イラク戦争に空軍のパイロットとして赴き命を落としている。(詳しく言えば兄の乗った戦闘機は撃ち落され行方不明に)ハシェミアンはその悲しみを忘れるためにフットボールに没頭したという。そして若くしてドイツへ渡り、ハンブルガーでの挫折、ボーフムでの降格そして昇格、再びバイエルンでの苦悩の日々、ハノーファーでのノイルーラーとの再会、そして4年ぶりのチームメッリ復帰と29歳にして決して平坦ではないフットーボールライフを過ごしてきた。彼がドイツの地でゴール後に天に召された兄に向かって指差す姿が拝めれば、天国の兄もきっと喜ぶ事だろう。
一方トルコでは先日
過去ログでお伝えしていた通りハメド・カヴィアンプールがトルコの強豪カイセリスポルとの2年契約にサインした。カイセリスポルは今季トルコリーグを5位で終え、インタートト杯の出場権を得ている。尚カヴィアンプールについて同チームのトルコ代表ストライカー、ギョクハン・ウナルは「彼はデコに似たタイプのプレーヤーで、彼のサポートがあれば俺は来季35ゴールは決めれるだろう」と絶賛した。確かにデコとカヴィアンプールは傑出したバランサーという点で類似している。これでトルコリーグでプレーしたイラン人はホセイン・サダギアニ(フェネルバフチェ)、レザ・シャハルディ(アルタイ)、ソーラブ・バフティアリザデ(エルズルム)、モハンマド・ハクプール(ワン・スポル)に続き5人目という事になる。ちなみにフェネルバフチェで1934-1935シーズンにプレーしたサダギアニは、両親と共にベルギーへ渡り1929-1930シーズンにCS Marchienne-Monceauというクラブでプレーした選手で、イラン人初の海外リーグでプレーした選手としても知られている。彼についての詳しい記事は
こちら。そういった素晴らしい先人もプレーしたトルコで、是非ともカヴィアンプールには素晴らしいプレーを披露し、W杯後にもチーム・メッリに復帰できるよう健闘を祈りたい。彼の立場は例えるなら日韓大会から外れレッジーナへ移籍した中村と通づるものがある。イラン屈指のボランチとして素晴らしい才能を有しながら、怪我で出遅れたことで最終選考から漏れてしまったからだ。ただドイツでは彼の不在を感じさせないプレーをネコーナムやテイモリアンといったボランチ陣には披露してもらわなければならない。また2007年のアジアカップを戦うU-23代表にもマジャール・ザレというモンスターが控えている。世代交代の必要性は否めないが、返り咲きを狙い海外に挑戦するべテランにもエールを送りたいところだ。