名作落語大全集

2021/02/23(火)20:24

15:近江八景(おうみはっけい)

落語(2322)

​【粗筋】  易者に遊女・紅梅との仲を占ってもらおうとする男に、友達が紅梅には男がいるからやめておけと言う。信じられない男が易者に見てもらうと、「女は年季があけたらお前の所へ来る」ときっぱり言う。どうだと友達にいばるが、易者は、「まだ続きがある」と言い出す。他に男がいるが事情があってすぐ一緒になれないから、腰かけとしてお前の所に来るのだ、と説明されてがっくり。女が惚れている証拠だと、手紙を見せる。易者が息もつかずに一気に読み上げたのは質屋証文。間違いだと改めて手紙を出すと、 ​「恋しき君を三井もせず、文も矢橋の通い路に、心堅田の雁ならで、われ唐崎の袖の雨、濡れて乾かす比良の雪、瀬端の夕べとうちとけて、堅き心も石山の、月も隠るる恋の闇、粟津に暮らすわが思い、また来る春に近江路や、八つの景色にたわむれて書き送る、あらあらかしこ」  とある。近江八景を読み込んだ見事なもの。易者が占い直して、 「比良の暮雪ほどおしろいを塗った姿を三井寺より、思う心は八橋にはやり、唐崎の雨と濡れても、先方の女が秋(飽き)の月、文の便りも堅田より(片便り)、気持ちはそわそわ浮御堂、根がどう落雁(道楽)の女だけに、しょせん瀬田いは持ちかねる。粟津に晴嵐としておけ」  と言われる。がっかりして帰ろうとするので、 「これ、見料を払って行きなさい」 「いいんです。八卦(八景)に銭(膳所)はなかった」 ​ 【成立】  上方は手紙が名文で、本文では少し端折った。東京では前半の友達との会話が長く、手紙はあっさり。私が聞いたのは、西は桂米朝、東は三遊亭円生(6)で、いずれも録音でした接していない。古くは禽語楼小さん(2)がちきり伊勢屋の枕に使っていたという。​

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