名作落語大全集

2021/12/24(金)05:25

68:金閣寺(きんかくじ)

落語(2321)

​【粗筋】  悪戯な小僧どん、和尚の方でもしばらくは我慢をしていたが、調子に乗った小僧が実は自分が和尚さんの実の子供だと言い触らしたので、とうとう怒った和尚さんに折檻のためと本堂の柱に縛りつけられた。最初は泣いていた小僧どん、そのうちに芝居の『金閣寺』を思い出した。悪い奴らに捕まった雪姫が足で鼠の絵を描くと、その鼠が動き出して縛った綱を噛み切ってくれたので、無事逃げ出すという芝居である。小僧は絵心のないので、鼠の形に似た平仮名の「ぬ」の字を書くと、本物の鼠が現れて綱を噛み切ってくれた。逃げ出したという知らせを聞いた和尚さん、 ​「鼠が助けたから、あれは間違いなくダイコクに生ませた子だ」 ​【成立】  林家正蔵(6)が演じていたという。現在はほとんど演り手がないが、桂米朝が埋もれた噺を発掘したシリーズとして「ぬの字ねずみ」の題で演じた。「あかん堂」という題名があったとのこと。最近演じられないのはもちろん落ちが分からないからである。寺の言葉で僧の妻を「梵妻(だいこく)」という。僧は妻を持てないので、隠し妻をそう呼んだのが一般に用いられるようになった。また、鼠は大黒様の使いとして知られている。これだけのことをどこかで説明しておかなければならない。手数が掛かるばかりで、それほど受ける話でもない。要するに「もうかる噺」ではないのである。 ​​【一言】 ​  縛られて鼠を描くというと、雪舟(1420~1506)の逸話を思い出す。絵ばかり描いていて寺の修行をしない小僧時代の雪舟が、柱にしばられて涙で鼠を描いたところ、他の小僧や和尚が本物と思って驚き、絵の才能を認めて勉強を許したという例の話である。芝居の『金閣寺』は宝暦7(1757)年初演の文楽『祇園祭礼信仰記』の4段目で、歌舞伎に残っている。この『金閣寺』の主人公である雪姫というのが、実は雪舟の娘なのである。雪舟の逸話から作られた芝居なのであろう。  それでは、雪舟の話は実話なのだろうか……涙で絵を描いてどれだけ掛けるか。それほど集中していれば涙も止まるだろうし、涙で描いて分かるほどに床が汚れていたのだろうか。私は雪舟の逸話はどうも眉唾物だと思っている。ある席で言った「お漏らししたので描いた」というのについては、謹んでお詫びいたします。 ​【蘊蓄】  大黒様は大国主命で、七福神の中で唯一純粋の日本人。​人物紹介はいらないね。

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