落語「は」の89:ハムレット(はむれっと)
【粗筋】 シェークスピアの作品、「ハムレット」。本を開くとAct1(アクトワン)て書いてある。これは本が「あくと1番目」ってことですな。ハムレットはデンマークの王子で、そのお城に夜になると亡霊が現れる。亡霊の台詞が、原作では「バックレストラン」……「うらめしや」ってんですが、お客様には難しいので日本語でやりますと、「わしはお前の父親、前の国王だ。お前の母と叔父によって殺されたのだ」と言う。「この恨み晴らしてくれよ。ハムレット、プリーズ・リメンバー・ミー、シェーン・カムバック。エクスキューズ・ミー、グッドバイバイ」「ジャストモーメント、オー・マイ・パパ……まさか立派な王と思った叔父が、父殺しの犯人とは……To be or not to be, that is the question」 日本でも悪家老を油断させるのにはばか殿様、ハムレットも恋でおかしくなったふりをする。相手の女に選ばれたオフェーリアが可哀そうに、小川で死んでしまう。「花の命は短くて、苦しきことのみ多かりき」、これは林芙美子の翻訳で…… 叔父の悪だくみで、親友と決闘をすることになります。友を傷つけたくないが、自分が死ぬのも嫌だ……「どうすればいい、To be or not to be, that is the question」 さあ、決闘になるが、迷いがあるからかすり傷を受けた。かすり傷なら安心と思ったら大間違いで、叔父のたくらみで毒が塗ってある。「まあ、ここらで一服、ビールでも飲め」と叔父はもう安心。グッと飲んでしまうと、「どうだもう一杯」と言われてハムレットが悩んだ。「2杯目を飲むか飲まないか……Two beer or not two beer, that is the question」【成立】 神津友好の作品を、三遊亭金馬(4:金翁)が演った。地噺だが、理屈っぽい英語と日本語の解説がくどい印象だった。【蘊蓄】 シェークスピアの四大悲劇は、「マクベス」「リア王」「オセロ」それに「ハムレット」。「ロミオとジュリエット」も人気だが、多くの人が同じ話を書いているので四大悲劇には入れない。他の作品と比べてシェークスピアの作品が異色なのは、二人が出会って死ぬまでがわずか数日というドラマチックな展開。愛を深めて心中まで数年を要する作品もある。 「オセロ」はゲームの名前になっていて、逆転逆転の先が読めない面白さがあるという。日本人が発明したそうだ。尚、シェークスピアの「ヘンリー六世」の中に「リバーシ」という遊びがあり、「8×8のマスで、コインの裏表、あるいは色違いの石を使って、はさんだら自分の色に変えるゲーム」と紹介されているが、オセロとどこが違うのか不明。 喜劇も、「じゃじゃ馬ならし」「ヴェニスの商人」「真夏の夜の夢」「お気に召すまま」など、お馴染みの作品が多い。「ウィンザーの陽気な女房たち」はクラシック音楽ファンならみんな知っている、ニコライの作品が、今でも世界一の人気歌劇。 シェークスピアの作品は1592年頃から20年ほどの間に作られ、40作ほどあるが、どれもが大作で、贋作説もある。 日本では坪内逍遥が、「ハムレット」のオフェーリアについて、日本的な女性の在り方で評論を書いたのを、英国人教師が不合格としたので、本格的に研究した。 逍遥の翻訳は歌舞伎調、「ジュリアス・シーザー」の名台詞「Brute you too」「Hand for me!」を、逍遥は「おおブルータス、お前も予を裏切るのか」「もうこの上は、この手に物を言わせてやるのだ」と訳している。最も権威があると私が思う福田恆存は「ブルータス、お前もか」「この手に聞け」と訳している。 逍遥が逸話で書いているのは、町でシェークスピールが人気になるが、おかしな翻訳もあり、落語にあったハムレットの名セリフを、「あります。ありません。あれは何ですか」と訳していて驚いたそうだ。